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チャイルドシートの装着率は現在63%、正しい締め方や固定方法は啓蒙不足状態

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ チャイルドシートはリスクを考慮すれば装着は欠かせないはずなのだが(写真:アフロ)

直近では62.7%、年々状況は改善

自動車に子供を同乗させる際に欠かせないのがチャイルドシート。装着は義務付けられているのだが、利用状況はまだ6割程度に留まっている。その現状を日本自動車連盟(JAF)が2015年7月に発表した、警察庁と共同で行ったチャイルドシートに関する調査結果から確認していく。

今調査は使用状況調査・取り付け状況調査・着座状況調査の3通り行われており、使用状況調査は2015年5月26日から6月4日にかけて、自動車に乗車している6歳未満の子供を対象に全国99か所で行われたもので、有効回答車両数は1万0794台・対象人数は1万3084人。なお本調査では乳児用シート、幼児用シート、学童用シートを総称してチャイルドシートと呼んでいる。

また道路交通法では6歳未満の子供の乗車に際しては、原則としてチャイルドシートの使用が義務付けられている。

まずはチャイルドシートの利用率。2008年以降は大よそ改善される方向にある。

↑ チャイルドシート使用率推移
↑ チャイルドシート使用率推移

チャイルドシートの装着は発生時における子供のリスク軽減の前提条件となるため、数字の増加は好ましい状況。2013年には初めて6割を超え、直近の2015年まで上昇が続いている。とはいえ、まだ4割近くが未装着な状況にあるのも事実。

過去5年間における子供の年齢別の使用率を見たのが次のグラフ。

 ↑ 子供の年齢階層別チャイルドシート使用率
↑ 子供の年齢階層別チャイルドシート使用率

概してどの年齢区分でも年々上昇していることが確認できる。一方、子供の年齢が上になるほど装着率が落ちる傾向に変わりは無い。子供が窮屈がることや、シートの買い替えが面倒なことなどの事由もあるが、リスクを考えればあまり好ましいとはいえない。特に5歳において直近では装着率が4割足らずでしかないのが目に留まる。

「チャイルドシートはつけてません」はどのような状況なのか

チャイルドシートを付けていない場合、子供はどのような状況だったのか。それが分かるのが次のグラフ。

↑ チャイルドシート使用状況(2015年)
↑ チャイルドシート使用状況(2015年)

一番装着率の低い5歳児では、大人用のシートベルトを着用している事例が2割強。子供によっては5歳児でもかなり大きくなり、大人のベルトでも問題ないと判断したのだろう。また、車両のシートに座らせてベルトをさせていない事例も1/3強ほどおり、「子供が嫌がる」「シート買い替えをしていない」の推測が正しいことが確認できる(道交法第71条の3第2項によれば「『適切に座席ベルトを装着させるに足りる座高を有する幼児』はチャイルドシート使用の義務を免除される」(当然その場合、大人用のシートベルトの着用が義務付けられる)とあるため、今件のうち「大人用ベルト着用」は適切である可能性も多分にある)。

一方で1歳未満では「保護者の抱っこ」が1割強ほど居るのが目に留まる。これもまた子供がぐずる場合を考えると「仕方ないかも」と思うかもしれない。しかし事故時のリスクはシートベルト未着用と変わらないことから、お勧めはできない(。法令上、原則的には認められない。但し特例もいくつかあり、例えば授乳やおむつの交換の時は道路交通法施行令第26条の3の2第3項第5号により、チャイルドシートの使用は免除される)。

装着していればOK、でも無く

チャイルドシートは単につけていればリスクを確実に減らす、といったものでもない。当然正しい装着方法によるものでなければ、効力は半減してしまう。そこで「シートそのものの固定が正しく行われているか」「シートの座り方は間違っていないか」について確認した結果が次のグラフ。

↑ チャイルドシートそのものの取りつけと、シートでの着座状況(2015年)
↑ チャイルドシートそのものの取りつけと、シートでの着座状況(2015年)

チャイルドシートそのものの取り付け状況は、過半数が「問題あり」判定となっている。リリースにはその詳細があるが、「問題あり」の8割前後が「腰ベルトの締め付け不足」との結果が出ている。次いで多いのは「座席ベルトの通し方」。いずれも業者に確認、調整をしてもらえば容易に改善は可能。

シートでの着座状況は種類によって違いが見える。乳・幼児用では「ハーネスの高さ調整」「ハーネスの締め付け不適正」が多いのに対し、学童用では「体格不適格」「肩・腰ベルトの通し方間違い」などが上位に連なっている。体格不適格の場合は大人用のものを使うなりすれば良い。ベルトの通し方のミスなら正しい通し方を学んで実践してもらうことで、リスクを減らせる。

いずれにせよ、シートベルト同様にチャイルドシートもまた、法律上装着が義務付けられているのと同時に、「万が一」の際のリスクを確実に減らす安全策の一つ。「事故が起きるはずが無い」との確信が事実である保証などどこにもない。「後で悔やむ」の言葉通り後悔する場面に遭遇しないよう、正しい設置と装着を心がけて欲しいものだ。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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