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仮想通貨ビットコインが100万円突破

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

仮想通貨の代表格である「ビットコイン」の価格が11月26日、初めて1ビットコイン(BTC)=100万円の節目を一時突破した。年初の段階では11万円を若干上回る水準だったのが、8月末から9月初めにかけて50万円の節目を突破し、それから僅か3ヵ月程度の短い期間でその二倍となる100万円の節目に到達した格好になる。

こうした値動きの底流にあるのは、仮想通貨の利用が広がるとの期待感である。スマートフォンなどで送金や決済をやり取りする簡易さ、送金手数料の低さなどを背景に、政府や中央銀行が管理する法定通貨の担ってきた役割の一部を仮想通貨が代替し、更には主役の座を奪い取るのではないかとの期待感がある。

ただ、ここ最近の値動きに関しては専ら投機目的の資金流入が活発化している影響が大きく、各所で「バブル」が指摘されながらも、価格が上昇している事実そのものが、新たな投機マネーの流入を呼び込む状態になっている。一種の「持たざるリスク」が警戒されていることが、パニック的ともいえる急激な価格変動をもたらしている。

■機関投資家の参入と分裂への期待

世界最大のデリバティブ取引所であるCMEグループは、ビットコインの先物取引を年内にも開始すると発表している。これまでは法規制の不透明感などからビットコインの上場には慎重な姿勢を見せていたが、投資家のビットコイン取引に対する関心が高まる中、本格的な売買の場が提供されることになる。こうした動きを背景に、機関投資家などの巨額資金が流入することを期待した思惑的な買いが膨らんでいる。機関投資家は寧ろビットコインに対して売り向かう可能性も指摘されているが、現在のビットコイン市場では専ら投機資金流入への期待感が優勢になっている。

また、取引システムの変更を巡って分裂の動きが相次いでいることも、思惑的な買いを呼び込んでいる。8月にはビットコインからビットコインキャッシュ、10月にはビットコインゴールドが誕生したが、24日には更にビットコインダイヤモンドも誕生している。ビットコイン保有者には新たに誕生した仮想通貨も割り振られる可能性があり、今後も簡単に利益が得られるとの期待感が広がっている。理論上はビットコインが二つに分裂しても、両者を合計した価値は分裂前と一緒になる。しかし、現実には分裂を繰り返す度にビットコイン価格は上昇している。しかも、今後もビットコインシルバー、ビットコインアンリミテッド、スーパービットコインなどの分裂が計画されている。もはやどれだけの種類のビットコインが誕生するのか分からない状況になりつつあり、新たな仮想通貨を得る権利獲得を狙った思惑的な投機マネーの流入が活発化している。

この種の新しいビットコインが実際の決済や送金で使用されるのかは不透明であり、各取引所の対応も割れている。そもそも、このような短期間で分裂を繰り返している通貨を、実際の決済や送金の場で利用できるのかは不透明感が強い。仮想通貨は中央管理者がいないことがメリットの一つである一方、この種の混乱状態に陥ると収束がつかなくなるデメリットもここ最近は顕在化している。現状では分裂が価格を押し上げているが、寧ろ押し下げ要因に転換する時期が訪れる可能性も警戒される。

ただ、ビットコインには明確な投資尺度が存在しないだけに、一方向の相場展開になり易い。例えば、株価であれば企業業績や資産の状況・見通しから幾つかの投資尺度が存在し、割安・割高の議論ができる。しかし、ビットコインに関してはこの種の投資尺度が存在せず、そもそも本源的価値が存在するのかさえも議論が割れている。

機関投資家の本格的な参入が始まれば流動性の向上が徐々に価格環境の安定化をもたらす可能性を高めるが、当面は投機目的の資金の流入・流出が繰り返されるハイリスク・ハイリターンの値動きが繰り返される可能性が高い。決済や送金といった本来の仮想通貨の役割とは関係のない所で、急激な値上がりが実現している。

マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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