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栄枯盛衰、米国の老舗ビデオレンタル店が閉鎖 「ホームエンターテインメントの一時代」の終焉

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー

米国の衛星テレビ大手ディッシュ・ネットワークは6日、子会社のビデオレンタルチェーン「ブロックバスター」が来年1月の前半までに、すべての直営店を閉鎖すると発表した。

かつては9000店以上、米ビデオレンタル市場を独占

ブロックバスターは、郵送でDVDをレンタルする業務も12月半ばに停止し、これに伴って配送センターも閉鎖する。この発表を受け、米ウォールストリート・ジャーナルなどの米メディアは、ホームエンターテインメントの一時代が終わったと報じている。

ブロックバスターの創業は1985年。当時はまだ家庭で好きな時に映画を見ることができるのは目新しく、消費者の旺盛な需要を背景に同社は急成長した。

米ブルームバーグによると、2004年に米メディア大手のバイアコムから分離独立した当時、同社は9000店舗以上を構えており、米国のビデオレンタル市場をほぼ独占していた。

だがその後、郵送でDVDを貸し出すネットフリックスや、自動貸し出し機で店舗展開するレッドボックスなどのライバルが台頭し、ブロックバスターの業績は悪化していった。

経営破綻のブロックバスター、ディッシュが買収

同社は、2010年9月に米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請し、2011年2月に会社売却に向けた手続きを開始。同年4月に破産裁判所の競売でディッシュ・ネットワークが約3億2000万ドルで落札した。

この当時、米国内には1700の店舗があったが、ブロックバスターはその後不採算店舗を順次閉鎖し、インターネットを介したオンデマンド配信型のストリーミングサービスに力を入れた。

しかしウォールストリート・ジャーナルはこうした施策について、規模があまりにも小さく、時機も遅すぎたと報じている。ブロックバスターがネットフリックスと同様のDVD宅配レンタルを開始したのは数年後。そうした中、ライバル各社はストリーミングサービスを拡大していった。

「新技術が現れるたびに、影が薄くなり、実店舗に執着するあまりに、新技術に乗り遅れた」。かつてワーナー・ブラザースのホームビデオ事業の社長を務めていたウォーレン・リーバーファーブ氏はブロックバスターの歴史について、こう述べたとウォールストリート・ジャーナルは伝えている。

なおブロックバスターには現在約300の店舗が残っている。これらの店はここ最近、ディッシュの有料テレビサービスや、その受信機(セットトップボックス)を販売する場所として使われていた。

だが前述の通り店舗は来年1月半ばまでに閉鎖される。今後も存続するのはフランチャイズ契約やライセンス契約を結んでいる直営店以外の店舗。これらは米国に約50店、国外に約400店あるという。

一方でディッシュは、ブロックバスターブランドで展開しているストリーミングサービスを続ける計画だ。しかしこの市場にはネットフリックスやレッドボックスのほか、アマゾン、アップル、グーグルなども参入しており、競争が激化している。

ディッシュが今後、ブロックバスターをどう生かしていくのか、今のところ分かない。だが、いずれにしてもかつてビデオレンタルの代名詞だったブロックバスターは、その歴史の幕を閉じることになる。

JBpress:2013年11月8日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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