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夏の甲子園4強決まる! いよいよ準決勝

森本栄浩毎日放送アナウンサー
波乱続きの夏の甲子園。4強が出揃って、いよいよ22日は準決勝だ

 今大会ほど先の見えない大会も珍しい。初戦で秀岳館(熊本)と横浜(神奈川)、広陵(広島)と中京大中京(愛知)の有力校がつぶし合い、ここを勝ち抜いた広陵が4強入りした。優勝候補筆頭で、春夏連覇を狙った大阪桐蔭は3回戦で9回2死から仙台育英(宮城)に逆転サヨナラ負け。広陵との準々決勝での対戦を前に姿を消した。打撃優位の前評判通り、準々決勝の段階で大会通算本塁打の記録が更新され、終盤での逆転劇が目立つ「投手受難」の大会で、最終盤までその流れは変わりそうにない。

天理(奈良)-広陵(広島)

 天理は、1986(昭和61)年同校初優勝時の主将で、元プロの中村良二監督(49)が初めての采配で、27年ぶりの選手権準決勝進出を決めた。1年夏から甲子園を経験している4番神野太樹(3年)が、大垣日大(岐阜)との初戦(2回戦)で2打席連続本塁打を放ってチームを勢いづかせた。

天理の碓井は横手からコーナーワークで勝負する。粘りの投球で27年ぶりの決勝なるか
天理の碓井は横手からコーナーワークで勝負する。粘りの投球で27年ぶりの決勝なるか

苦戦が予想された神戸国際大付(兵庫)との3回戦は投手戦となり、エース碓井涼太(3年)が11回を1失点で完投した。右横手からシュートやスライダーで揺さぶる粘りの投球が持ち味。この試合で決勝打を放った8番山口乃義(だいき=3年)が、準々決勝の明豊(大分)戦でも2本塁打の大暴れでラッキーボーイになっている。投手は大垣日大戦で先発した左腕の坂根佑真(2年)が完封勝ちするなど調子がいい。明豊戦では20安打を放つ猛攻を見せたが、「守りからリズムをつくるのが本来の天理野球」(中村監督)と、守備を重視した手堅い野球を身上とする。同校は、夏2度、春1度の優勝を誇り、甲子園出場も春夏計51回という高校球界屈指の伝統校だ。

 広陵は野球が盛んな広島で、広島商と並ぶ名門。「春の広陵」と呼ばれるように、センバツでは3度の優勝があるが、夏は準優勝(3回)が最高成績。10年前は野村祐輔(広島)-小林誠司(巨人)のバッテリーで決勝に進出し、佐賀北相手に優位な展開も、まさかの逆転満塁弾で準優勝に終わった。

広陵の中村は、準々決勝こそノーアーチに終わったが、2安打を放ち、存在感を見せた
広陵の中村は、準々決勝こそノーアーチに終わったが、2安打を放ち、存在感を見せた

それ以来の準決勝進出で、悲願の夏の頂点を狙う。左腕平元銀次郎(3年)-中村奨成(3年)のバッテリーの前評判は非常に高かったが、中村の打棒はすさまじく、ここまでで4本塁打。1985(昭和60)年のPL学園(大阪)清原和博が持つ大会個人最多本塁打「5」に王手をかけている。投手は平元を始め、左腕で制球のいい山本雅也(3年)、右腕本格派の森悠祐(2年)が登板している。初戦の中京大中京、続く秀岳館と難敵に快勝し、ムードも最高潮。準々決勝では大阪桐蔭を破って勢いに乗る仙台育英を圧倒した。準決勝の相手、天理とは中井哲之監督(55)の現役時代、1980(昭和55)年の準々決勝で当たって2-4で敗れている。中井監督は、「(相手投手が)2年生なんで楽勝かと思ったら楽勝でやられました」と振り返り、「(天理の)中村監督もよく知っているんで、正々堂々と戦いたい」と好勝負を誓った。

投手継投がカギ 天理は守り合い期待

 試合のポイントは投手の継投。ともに先発の完投は考えにくく、先発の起用、どこまで引っ張るか、どの順番で出すか、など見どころは多い。交代機は攻撃でも好機になるので、お互いビッグイニングには注意する必要がある。選手の力量そのものは広陵がやや上で、天理は守り合いの展開に持ち込みたい。5点以上の勝負になれば広陵が有利か。高校球界を代表する名門同士で熱戦が期待される。

花咲徳栄(埼玉)-東海大菅生(西東京)

 3年連続出場で、初めて準決勝進出の花咲徳栄は、強力打線が立ち上がりから相手投手を活発に攻め、右腕二枚で相手に主導権を渡さず勝ち上がった。苦戦が予想された関東の強豪、前橋育英(群馬)との3回戦では、相手先発の立ち上がりに上位打線が長打を連ね、4点を奪った。これで勢いづき、10得点で強力投手陣を粉砕した。4番野村佑希(2年)を挟んで左打者を3人ずつ並べる。投手陣は先発綱脇彗(3年)から清水達也(3年)へつなぐパターンが確立されている。ともに右腕の大型投手で、綱脇が試合を作り、最速150キロの速球が冴える清水で締める。打線の中心は3番の西川愛也(3年)。

徳栄の3番西川は鋭い振りで快打を連発。西川が打つと連打が出るのが徳栄の強みだ
徳栄の3番西川は鋭い振りで快打を連発。西川が打つと連打が出るのが徳栄の強みだ

シャープな振りで広角に打ち分け、前橋育英戦では3安打3打点の活躍を見せた。埼玉勢は意外にも夏の優勝がない。岩井隆監督(47)は、「(優勝は)大きな夢。コツコツ積み上げてベスト4まで来た。一瞬を大事に戦いたい」と力を込めた。

 西東京予選で、センバツ出場の日大三、早稲田実を破り、その実力を甲子園でも存分に発揮している東海大菅生。今大会2回戦の高岡商(富山)戦の勝利が甲子園2勝目とは思えない快進撃を見せている。2番から6番までが3試合で7本塁打の長打力は脅威で、青森山田、三本松(香川)戦とも序盤で大差をつけて試合の大勢を決した。準決勝進出校の中では、消耗度は格段に低く、余力十分だ。

菅生の松本は、武器のスプリットが冴え、ピンチにも動じない。打線の援護で決勝なるか
菅生の松本は、武器のスプリットが冴え、ピンチにも動じない。打線の援護で決勝なるか

エース松本健吾(3年)は、速球とスプリットのコンビネーションが光る。「走者を出しても要所を締めるのが本来の投球」(松本)と打たれ強く、遊撃手田中幹也(2年)らがしっかり守る。特に高岡商戦は中盤まで相手投手との息詰まる投手戦で、ピンチも多かったが粘って打線の援護を待った。控えの戸田懐生(なつき=2年)も本格派で完投能力がある。打線爆発で大差試合が続いているが、元プロの若林弘泰監督(51)は、「もともと打撃戦は想定していない。ウチは誰かが失敗してもカバーできる」と全員野球を強調し、初の決勝進出を見据える。

打線好調で打ち合いになるか

 ここまでの勝ち上がり方は似通っている。ともに立ち上がりの速攻で主導権を握り、投手を楽にしている。徳栄の投手起用は変わらないだろう。清水が余力十分で、ロングリリーフも可能なのは大きい。菅生は戸田が先発する可能性もあるが、松本の踏ん張りが大きなポイント。打線の勢いは菅生だが、つながりのいい徳栄も爆発力があり、5点以上の勝負になりそうだ。徳栄はリードした状況で綱脇から清水につなぎたい。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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