なぜメッシの”再契約”でグリーズマンのトレード話が浮上するのか?バルサに生じる新たな問題。
エースの残留は決定的となった。
バルセロナはリオネル・メッシとの”再契約”で基本合意に達したようだ。年俸50%減という厳しい提示額の一方で、契約期間は5年になるとされ、34歳のメッシと新型コロナウィルスの影響で財政が圧迫されているクラブが歩み寄りを見せているところだ。
■バルサの新たな問題
だがバルセロナに新たな問題が出てきている。喫緊の課題はサラリーキャップにある。
ラ・リーガでは、選手・コーチングスタッフの総年俸額と移籍金の減価償却費を予算の70%以下にしなければならない。バルセロナの場合、今年5月の段階でジョアン・ラポルタ会長が「それは110%に達している」と明かしていた。
この課題を克服しない限り、再契約を結ぶメッシ、新加入のエリック・ガルシア、メンフィス・デパイ、セルヒオ・アグエロ、エメルソン・ロヤルを選手登録することは不可能だ。つまり、メッシが正式に残留したとしても、バルセロナでプレーできないという状況が起こり得るのである。
「バルセロナをVIP扱いはしない。それは不可能だ。ラ・リーガのクラブの権利であり、我々はその完全性を守る必要がある」
「バルセロナは2億ユーロ(約260億円)くらい減らさなければいけないだろう」
これはラ・リーガのハビエル・テバス会長の言葉だ。メッシがいかに優れた選手で、ラ・リーガのアイコン的存在であっても、特例は認められない。そのスタンスは明確に示されている。
■次々に選手を売却
そこでバルセロナは”放出オペレーション”に取り組む必要性に駆られている。
すでに、物事は進んでいる。バルセロナはすでにジュニオール・フィリポを移籍金1500万ユーロ(約19億円)でリーズに、カルレス・アレニャを移籍金500万ユーロ(約6億円)でヘタフェに、ジャン=クレール・トディボを移籍金850万ユーロ(約11億円)でニースに売却した。フランシスコ・トリンカオをウルヴァーハンプトンにレンタル放出して、マテウス・フェルナンデスとフアン・ミランダをフリーで放出した。
だが、これでも足りていないのが現状だ。そこで、持ち上がってきたのがアントワーヌ・グリーズマンの放出の可能性であり、トレード話である。
グリーズマンは2019年夏に、アトレティコ・マドリーからバルセロナに加入した。当時アトレティコで設定されていた契約解除金1億2000万ユーロ(約146億円)をバルセロナが支払うことで、取引が成立した。
だが、そのうち、7200万ユーロ(約93億円)の支払いが、まだ残っているとされる。そこで、グリーズマンをサウール・ニゲスとのトレードでアトレティコに移籍させ、その支払いを帳消しにするというのがバルセロナの算段だ。
それだけではない。あわよくば、よりメリットを得ようとする考えが、バルセロナにはある。「サウール+金銭」あるいは「サウール+レナン・ロディ+マリオ・エルモソ」で、グリーズマンとのトレードを成立させようという動きがある。
■グリーズマン放出のメリット
また、高給取りのグリーズマンの放出は、サラリーキャップの観点からもバルセロ
ナに利をもたらす。
グリーズマンのバルセロナでの年俸は2100万ユーロ(約27億円)だ。この負担がなくなれば、バルセロナはサラリーキャップの問題解決に大きく近づく。加えて、サミュエル・ウンティティ、ミラレム・ピアニッチを放出できれば、目標達成が見えてくる。
だがそれは簡単ではない。とりわけ、トレードに関しては、ラ・リーガ側に厳しくチェックされる可能性大だ。「きちんと調査をしなければいけない。財政の問題で複数の選手が退団する一方で、メッシや他の選手を登録したいというのなら...。そのプランニングはしっかりと見る必要があるだろう」とはテバスの弁である。
「トレードに関しては、インフレーションの状態になっていないかを見極める必要がある。選手の売却に関しても同様だ。昔のように、友人がいるから、そのクラブに選手を売るというような真似はできない」
「選手や代理人のなかには、このルールを理解していない者がいる。クラブを信じられない、クラブに騙されていると感じる人たちがいる。そういう人たちとは、我々が直接話さなければいけなかった」
グリーズマンとサウールのトレードが成立すれば、スペインで今夏最大の移籍になるだろう。
バルセロナは、ラポルタ会長が「我々は良い働きをしている。だが、この夏のマーケットの状況は特殊だ。時には、曲芸をしなければいけない」という不気味なコメントを残している。
特殊な夏ーー。そこを乗り切るため、バルセロナにはすべての手を尽くす覚悟があるのかもしれない。