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3冬連続のラニーニャも 寒さのジレンマ

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
東京都心で最も雪が降りやすいのは例年2月頃(写真:イメージマート)

 気象庁は9日、定例のエルニーニョ監視速報のなかで、11月のペルー沖の海面水温が基準値を下回ったことから、ラニーニャ現象が続いているとの見方を示しました。

 2020年秋以降、短期間の中断を経てもラニーニャ現象が続いているのは珍しく、3冬連続となるのは統計史上初です。

来年2月以降、平常に

 長く続いたラニーニャ現象ですが、徐々に弱まる兆しが見えてきました。今後は暖かい海水(暖水)が東に移動することで、ペルー沖の海面水温が上昇する見通しです。

 そのため、来年2月以降、ラニーニャ現象が終わり、平常の状態となる可能性がでてきました。

気象庁:エルニーニョ監視速報(No.363)2022年12月9日発表
気象庁:エルニーニョ監視速報(No.363)2022年12月9日発表

 米海洋大気庁(NOAA)も同様の見方を示し、来年2月から4月までにラニーニャ現象が終息し、平常の状態となる可能性が71%と非常に高いとしています。

東日本でより寒い傾向

 しかし、それまではラニーニャ現象が冬の天候に与える影響を考えなければなりません。

 12月を中心とした3か月(11月~1月)の平均気温は全国的に低く、特に東日本で寒くなる傾向が強いです。

【ラニーニャ現象発生時の平均気温の出現率】12月を中心とした3か月(11月~1月)気象庁ホームページより
【ラニーニャ現象発生時の平均気温の出現率】12月を中心とした3か月(11月~1月)気象庁ホームページより

寒さのジレンマ

 だとすれば、ラニーニャ現象が発生していると寒くなると思いますが、必ずしもそうとも言えないのです。前回と前々回の冬はどうだったのか、みてみましょう。

 一昨年の冬(2020年12月~2021年2月)は前半にかなり寒くなったものの、後半は冬型の気圧配置が弱く、暖かい日が多くなったため、結果的に東日本と西日本は暖冬となりました。

【2020年12月~2021年2月】地域ごとにみた平均気温の変化、気象庁ホームページより
【2020年12月~2021年2月】地域ごとにみた平均気温の変化、気象庁ホームページより

 次に、昨冬(2021年12月~2022年2月)です。12月後半から寒さが強まり、冬型の気圧配置が長く続きました。日本海側では積雪も多く、新潟県の津南では過去最大の4メートル19センチに達しました。結果的に東日本と西日本は寒冬となりました。

【2021年12月~2022年2月】地域ごとにみた平均気温の変化(気象庁ホームページより)
【2021年12月~2022年2月】地域ごとにみた平均気温の変化(気象庁ホームページより)

 ラニーニャ現象が発生した冬は総じて寒い冬となるものの、最近の2冬はそれぞれ真逆の冬になりました。3度目となるこの冬はどちらになるのか、寒冬とは言い切れないもどかしさを感じています。

【参考資料】

気象庁:エルニーニョ監視速報(No.363)、2022年12月9日

気象庁ホームページ:日本の天候の特徴と見通し

米海洋大気庁(NOAA):December 2022 La Niña update: the ENSO Blog investigates, part 1、DECEMBER 7, 2022

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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