東日本大震災が教えた豊洲市場の危険性
豊洲の市場移転予定地が、2011年3月11日の東日本大震災で「液状化現象」を引き起こしたことを忘れてはいけない。
市場建物の土地に「盛り土」がされていなかったことが判明し、さらに、そこに水が溜まっていたことが発覚した。東京都は今月17日、その水についての水質調査結果を発表している。
地下の水について、ベンゼンやシアン化合物ばかりが注目されているようだ。それを意識してか東京都は、「ベンゼンやシアン化合物などは検出されなかった」と、ことさら強調して発表している。
しかし、「ヒ素や六価クロム」が検出されたとしている。そうしたものが「雨水」に含まれる可能性は低いわけで、そうなると土に含まれていたものが湧きだした、と解釈するほうが自然である。その「異常性」は都も当然ながら意識しているわけで、だからこそ「環境基準を下回る」ことを強調している。
大事なことは、「環境基準を下回る」ことではなく、雨水に含まれる可能性は極めて低いヒ素などが検出された、ということである。つまり豊洲市場の建物の地下に溜まっていた水は、雨水などではなく、土そのものに含まれていたものが湧き出たと考えるほうが自然なのだ。
だからこそ、東日本大震災で液状化を引き起こしていたという事実である。液状化は地下水を含んだ緩い砂の層が、地震による震動で液体状になる現象である。浦安などのマンションが被害を被ったのは、この現象によって地盤が弱体化したためである。豊洲の市場移転予定地でも同じことが起きる可能性が高い。
さらに問題は、この液状化によって豊洲では、地下水などが噴き出す現象が起きたことである。東日本大震災の後に現地を取材してみると、クレーターのようなものが、あちこちに見られた。地下の土や水が、表に溢れ出した跡である。
当時、東京都の担当者に取材しすると、「液状化」は認めず、「噴砂である」と主張した。噴砂とは地下の砂が地震で地表に噴出する現象のことで、液状化が起きなければ発生しない現象である。そのことを問い詰めると、都の担当者も渋々ながら認めた。
つまり、浦安のマンションなどで液状化が問題にされており、その言葉の印象が悪いことから、都の担当者は液状化を噴砂と主張したにすぎない。今回の水質検査の結果でも同じことで、印象の悪いベンゼン等については「検出されなかった」といいながら、弱冠を強調しながら「ヒ素などは検出された」と発表しているのは、「問題がある」ことを認めたくないにもかかわらず、結果からは「認めざるをえない」といっているにすぎないのだ。
受け取る側としては、「基準値以下」ではなく、「検出された」という事実を重視すべきである。そして、東日本大震災で有毒物質が地下から噴出したにもかかわらず、盛り土という最低限の対策さえとらなかった都の姿勢を問題にすべきである。
液状化や噴砂について、盛り土が完璧な対策だともいえない。問題は有害物質が含まれている可能性を除去できていない土地の上に、「都民の台所」である中央卸売市場をつくろうとしていることである。豊洲への市場移転を考えるとき、わたしたちは東日本大震災での経験を軽んじてはいけないはずだ。