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「新型コロナ、最悪のシナリオ」米大学研究機関が予測

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
ロサンゼルスの市民は、症状の有無に関わらずコロナの検査を受けられるようになった。(写真:ロイター/アフロ)

 新型コロナウイルスにより引き起こされているパンデミックは、いつまで続くのか? どんな感染の波が起きるのか? 誰もが、今後の行方を懸念していることだろう。

 そんな中、米国時間4月30日、米ミネソタ大学「感染症研究政策センター」が、新型コロナに関する見解を記した報告書「COVID-19パンデミックの今後:パンデミック・インフルエンザから学んだ教訓」を発表したので、紹介したい。

 この報告書は、これまで起きたインフルエンザによるパンデミックを観測した上で、新型コロナの今後を予測、考えられる3つのシナリオを紹介している。

パンデミックは24ヶ月続く

 まず、新型コロナのパンデミックは、集団免疫がじょじょに獲得されつつ、18〜24ヶ月間続くことが予測されている。

 集団免疫を獲得するまで時間がかかるのは、これまで発表された抗体検査の結果から、人口における陽性者の割合が低く、また、地域により陽性率が大きく異なるからだという。

 確かに、カリフォルニア大学バークレー校疫学教授のアーサー・レインゴールド氏は筆者の取材でこう話していた。

「新型コロナで集団免疫を獲得するのは難しいかもしれません。武漢のように、全人口における感染率が高い地域では、集団免疫が獲得できるかもしれません。しかし、アメリカの場合、入院患者数も死者数も多いものの、全人口における感染率はまだ比較的低いため、免疫を得ている人も少ないのです。集団免疫獲得の難しさは、感染者が多いニューヨークでも言えると思います」

 また、報告書が指摘している通り、抗体検査の陽性率も地域により大きく異なっている。先日発表された抗体検査結果によると、同じニューヨーク州でも、都市部のニューヨーク市は21.2%と高いが、ローカル地域では3.6%と大きな差がある。

 この報告書は、新型コロナの陽性率を考慮すると、集団免疫に達してパンデミックを終わらせるには、人口の60〜70%が免疫を獲得する必要があると予測している。

 また、報告書は、新型コロナでは免疫がどれだけ持続するかが不明であること、少なくとも2021年までにはワクチンが市場に出ない可能性があること、また、ワクチン開発の過程で問題が生じて、市場に出るのが遅延する可能性があることなども終息時期には影響を与えると指摘している。

新型コロナ、3つのシナリオ

 さらにこの報告書では、過去にインフルエンザが引き起こしたパンデミックの状況を踏まえつつ、新型コロナが今後どうなるか、3つのシナリオが紹介されている。

第1のシナリオ

 2020年春の第1波の後、夏に小さな波が繰り返し起き、1〜2年間、小さな波は継続し、2021年のある時点で、じょじょにその数が減少していく。波の発生状況は地域により異なり、また、その地域で行われている感染軽減対策やその対策がどう緩和されるか次第で変わってくる。このシナリオでは、波のピークの高さ次第で、1〜2年の間、周期的に感染軽減対策を実施したり、緩和したりする必要がある。

第2のシナリオ

 2020年春の第1波の後、2020年の秋か冬に大きな波が起き、2021年に1つ以上の小さな波が起きる。このパターンでは、感染拡大を抑えて病院を崩壊させないための対策を、この秋に実施する必要がある。1918-1919のスペイン風邪の時や1957-58のパンデミック、2009-2010のパンデミックの時にも類似したパターンが起きた。

第3のシナリオ

 2020年春の第1波の後、はっきりとした波が起きることなく、じわじわと感染が起きる状況が続く。このパターンは、地域や地域でどの程度の感染軽減対策が取られているかの影響を受ける。このパターンは、過去のインフルエンザでは見られなかったが、新型コロナでは起きる可能性がある。このシナリオでは、感染者も死者も出続けるものの、感染軽減対策を再実施する必要はないかもしれない。

 この中で、最悪のシナリオとされているのが、この秋か冬に大きな第2波が起き、2021年も小さな波が起きるという、スペイン風邪の道を辿る第2のシナリオだ。

 報告書はこう結論づけている。

「3つのうちのどのシナリオ(どのシナリオ下でも、ある程度の感染軽減対策が続けられると仮定)になるとしても、少なくとも18〜24ヶ月の間は、様々な地域で周期的にホット・スポットが出現して続く、有意な新型コロナの活動に対し、準備をする必要がある」

グラフ化された3つのシナリオ。出典:COVID-19: The CIDRAP Viewpoint by Center for Infectious Disease Research and Policy
グラフ化された3つのシナリオ。出典:COVID-19: The CIDRAP Viewpoint by Center for Infectious Disease Research and Policy

4つのレコメンデーション

 研究書は、政府に対して4つのレコメンデーションも行なっている。

1.ワクチンも集団免疫も獲得できない最悪のシナリオ=第2のシナリオに備えて、計画を立てること。

2.政府機関や医療機関は、感染者急増に備えて、医療従事者を保護する戦略を立てること。

3.疾病のピークに対処するため、感染軽減対策の実施を含めた具体的プランを立てること。

4.政府はリスク・コミュニケーションのメッセージに「パンデミックがすぐには終息せず、人々は今後2年間、疾病が周期的に再流行する可能性に備える必要がある」というコンセプトを組み込むこと。

 ところで、最終的に、新型コロナはどうなるのだろうか?

 それについて、この報告書は、

「パンデミックが衰えたとしても、新型コロナは人々の間を動き回り続け、じょじょにその重症度は低下し、季節的に起きるパターンになる」

と予測している。

 ちなみに、カリフォルニア大学アーヴァイン校公衆衛生学准教授のアンドリュー・ノイマー氏は筆者にこう話した。

「すべての疾病が、最終的には、集団免疫で沈静化されるといっていいでしょう。私は、新型コロナも最終的には、インフルエンザのようなものになると思います。しかし、そうなるまでには2〜3年はかかるでしょう。時間がかかるのは、50〜70%の人が抗体を得る必要があるからです。その2〜3年の間に、ワクチンもできると思います」

 結局、我々は新型コロナと共存していくことになるのかもしれない。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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