なぜ一流の人は「体調管理」を大切にするのか? ……「脳のワーキングメモリ」で考える
仕事ができるビジネスパーソン(一流の人)は、健康や体調管理に余念がない、それはなぜか? ……という内容の書籍が、近年立て続けにヒットしています。代表的なベストセラーを挙げてみると、以下の3冊。
●『一流の人はなぜそこまで、コンディションにこだわるのか?』(上野啓樹、俣野成敏著、クロスメディア・パブリッシング)
●『なぜ、一流の人は「疲れ」を翌日に持ち越さないのか?』(裴英洙著、ダイヤモンド社)
●『なぜ一流の男の腹は出ていないのか?』(小林一行著、かんき出版)
すべてのタイトルに「なぜ」と「一流」というフレーズが入り、最後は疑問形で終わっています。健康&ビジネスの本ではありませんが、『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』(久世浩司著、SBクリエイティブ)も似たようなニュアンスのタイトルで、こちらもヒットしました。
2008年にベストセラーとなった、『仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか』(山本ケイイチ著、幻冬舎)が源流でしょうか。いずれにしても「健康」と「ビジネス」は切っても切れない不変のテーマであることは間違いないようです。
本コラムでは、脳の「ワーキングメモリ」を使って、『なぜ一流の人は「体調管理」を大切にするのか?』について解説したいと思います。(時流に乗り、「なぜ」「一流」を含み、最後が疑問形で終わるタイトルを私も使ってみました)
さて「脳のワーキングメモリ」の話をする前に、人間の脳が処理するデータの記憶装置について、簡単に解説しましょう。ここでいう記憶装置とは、「短期記憶」「長期記憶」「外部記憶」の3つです。「短期記憶」とは、いわゆる「ワーキングメモリ」のこと。情報を処理するために常に格納しておく作業記憶装置です。「長期記憶」は、長い歳月をかけて蓄積してきた知識の図書館のようなもの。「外部記憶」とは、何らかのヒントを言われても思い出せず、人間の脳の外にある記憶装置。資料やシステムのデータベース上に存在します。
仕事ができる人・一流の人は、脳の処理スピードが速いと言えます。いわゆる「頭の回転が速い」のです。処理スピードを決定づけるのは、「ワーキングメモリ」の空き領域でしょう。ここに余裕がないと「ワーキングメモリ」と「長期記憶」もしくは「外部記憶」とを何度もアクセスして、適切な処理をすることができません。
「ワーキングメモリ」の空きを埋めてしまうのはノイズです。日常生活や仕事において「不平」「不満」「不安」があると、思考ノイズが発生します。これらの思考ノイズがワーキングメモリの空き領域をなくし、脳の処理スピードを遅くします。パソコンもスマートフォンも、定期的に不要なメモリを解放しないと動作が極端に重くなります。これと同じことです。……いわゆる「いっぱいいっぱい」の状態では、仕事のパフォーマンスは上がりません。
「仕事をやりたくない」「面倒くさい」「モチベーションが上がらない」……等と、グダグダ考えれば考えるほど、脳の処理スピードが遅くなり、よけいに解決方法が見つからなくなります。ネガティブな思考は性格にもよりますが、体調を悪くすることは誰にでも起こることです。ポジティブな性格の人であっても、「頭が痛い」「お腹が痛い」「寝不足で疲れがたまっている」……などといった思考ノイズがあると、脳の処理スピードは急激に落ちていきます。
脳の処理ができなくなると、さらに「不平」「不満」が貯まっていきます。思考ノイズが新たな思考ノイズを生み出し、まさに「負のスパイラル」を引き起こすのです。
体調管理で重要なことは「食事」「運動」「睡眠」の3つ。いずれも個人差があります。自分にとってどのような状態が最適であるかを見極め、体調を万全にさせておくことは、軽やかに創意工夫し、プラス指向で意思決定し、楽天的に行動するために不可欠です。「できる人・一流の人」になるためでなくとも、体調管理には気を配りたいですね。