「ポケモン剣盾」騒動で思うこと 「ドラクエ」「FF」「モンハン」も… トラブルとゲーマーの長き戦い
「ポケモン剣盾」の略称で知られる人気ソフト「ポケットモンスター ソード・シールド」の発売後から、突然ゲームが終わるなどという書き込みがあり、ネットで騒動になりました。私も気になって知人らにも尋ねてみましたが「そんなトラブルがあるの? 遊んでるけれど特に……」という声しかありません。結局現状のところ、騒動の原因は判然としませんし、発売から約1カ月になっても、メーカーからも発表はありません。(企業の)ポケモンにも問い合わせましたが、特に現段階で言えることはなく、ゲームの修理割合も他のゲームとは変わらないという回答でした。
ただこの騒動で改めて思ったことがあります。ゲームが正常に進行できなくなるトラブル自体は、ゲーマーにとって、長年にわたる“宿敵”です。そこでゲームとトラブルの歴史を振り返ってみましょう。
◇「ドラクエ3」はネタに 「FF8」は会見も
ゲームのトラブルと言えば、プログラムのバグなどでゲームが正常に進められない……もありますが、気になるのはセーブデータ関連になりますね。ファミコンの初期には、そもそもセーブという概念がなく、ゲームの電源を切ったらそこで終わりでした。続きのプレーをするケースでも、前のプレー終了時に表示されるパスワードを打ち込む仕様でしたから、できなくなっても「パスワードを写し損じた」で終わっていたのです。
ですがファミコンでも、PCゲームのようにセーブのシステムが導入されました。当時、スマホのカメラという便利なものはありませんでしたから、ゲーマーはパスワードの写し損じの恐怖から解放されたことに大喜びでした。ところが皮肉なことに、それは“真の戦い”の始まりでした。
セーブデータのトラブルで、ファミコン時代の古参ゲーマーが真っ先に思い出すのは「ドラゴンクエスト(ドラクエ)3」でしょう。シリーズでおなじみの「復活の呪文(パスワード)」がなくなり、セーブ機能の搭載にゲーマーは最初喜びましたが、その後「あれ?」となります。ゲームを終えるとき、ゲーム機本体のリセットボタンを押しながらパワーボタン(電源)を切る……という変わった操作が必要だったためです。
この操作を怠ると、ゲームの再開時に独特のBGMと共に「お気の毒ですが冒険の書(セーブデータ)は消えてしまいました」などという恐怖の文字が表示され、本当にデータが消失したのです。ですから電源を切る瞬間は、ちょっとした緊張感がありました。
もう少し言えば、その当時に「言われた手順で電源を切ったのにデータが消えた」という声は、私の周囲でもありました。ただ、その証拠は何もありませんから「操作のミスでしょう」で終わっていました。ともあれ、当時のゲーマーがドキドキだったのはその通りで、だから今でもネットでネタにされているのです。
そして、新聞記事にもなったセーブデータに関するトラブルといえば、1999年の「ファイナルファンタジー(FF)8」です。当時スクウェア(現スクウェア・エニックス)は会見を開き、特殊なルートで進めるとゲーム中に画面が止まり、それ以上続けられなくなる現象があると認めました。そのときは、トラブルが起きたユーザーからセーブデータを保存するカードを一時的に預かり、無料で修理して対応しました。また会見で武市智行社長(当時)は「過去のゲームでも同様の不具合はある」とコメントしていましたから、メーカー側もゲームの不具合は起こりえることと認識していたことになります。
FF8と似たような話は、最近では「モンスターハンター(モンハン)ワールド:アイスボーン」でもありました。同じく特殊なルートで発生し、セーブデータの一部がクリアされる不具合です。現在はアップデートで対応して修正済みですから、ありがたい時代になったものです。
◇トラブルはゲーマーの“宿命”
そもそも人気ゲームは遊んだゲーマーの数が多く、現在は個人が情報を発信できるSNS全盛の時代ですから、何かトラブルがあればネットでつぶやき、その手のネタはあっと言う間に拡散します。レアケースであっても、拡散すれば多発しているように見える可能性もあります。そしてゲームが精密機械である以上、どれだけ技術が進歩してもトラブルはゼロにならないでしょう。
セーブするタイミングによってクリアが厳しくなったり、不可能になるケースが可能性として「ありえる」と悟ったゲーマーは、自衛のために複数のセーブデータ枠を順番にセーブすることで少しでもリスク回避をする努力をしています。ささやかな抵抗という感じでしょうか。
しかし、それを吹き飛ばすようなトラブルもあるのも、またゲームです。私の場合、PS4(初期版)にトラブルが発生して正常に起動できなくなり、泣く泣く再インストールしたことがあります。これは正しい方法で電源を切らなかったことが原因と思われるので、自業自得ではあります。一応、セーブデータをクラウドサービスにアップロードしていたので最低限の損害ですみましたが、「ウイニングイレブン」など一部ゲームのセーブデータは元に戻りませんでした。
ゲームが正常に進められないなどのトラブルも困りますが、最大のトラブルはセーブデータ関連でしょう。セーブデータを失えば、同じものはいくら金を出しても手に入りません。ですから、ゲーマーにとって最も重要なデータと言えます。ゲームをしない人からは「たかがゲーム。やり直せばいい」と言われ、理解を得られないのが悩みの種ではありますが……。
人の命に直結し、厳しい制約が課される自動車や食品とは違い、ゲームやIT系などソフトウェア関連サービスは、プログラムのバグなどをゼロにできないためか、結果的に多少の問題も許容されている形になっています。それでも致命的な不具合があれば製造者として責任を負うべきなのは言うまでもありませんが、どこまでが許容されるのかを線引きをするのは難しいところです。そして、その問題とは別にゲームが遊べなくなるトラブルと戦うことは、ゲーマーであり続ける限り避けられない“宿命”なのです。