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リコーで22名新型コロナウイルス陽性。サントリーとの準々決勝中止までのプロセス。【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
黒がチームカラー(写真:アフロスポーツ)

 トップリーグの今季4強を決める準々決勝のうち1試合が、開催1週間前に中止となった。

 5月9日に昭和電工ドーム大分でサントリーに挑む予定だったリコーで、22名の新型コロナウイルス陽性者が確認された。

28日に陽性者の発表

 チームは4月28日、9名の陽性判定が出たと発表していた。

 さかのぼって26日朝の検温と健康チェックの段階で、数名の選手が違和感を上申。同日にあったリーグ主催の一斉検査で、当該選手を含む9名の陽性判定がわかった。この9名のうち4名は検査結果の数値を踏まえ、残り5名は2度目の検査を経て、総じて27日までに陽性が確定した。

 9名の陽性者がいたと公式発表された翌日の4月29日時点では、保健所が陽性判定の出ていなかった選手が濃厚接触者(感染者との接触があり、一定期間の自宅待機が求められる)かどうかの判定をしている最中だった。クラブ関係者は「SNSのコメント欄もラムズファン(筆者注・リコーのチーム名はブラックラムズ)をはじめ、他チームのファンの方たちからもあたたかいメッセージが多数寄せられており、選手達も大変心強いと思います」と書面で回答していた。

 しかしこのほど、22名の陽性判定が出たのを踏まえ、クラブがキックオフ予定時間の48時間前までに試合登録に必要な選手(23名)を集められないと確定した。「ジャパンラグビー トップリーグ規約」第57条に基づき、開催中止が決まった。日本協会が5月1日、発表した。

今後は

 前出の規約第57条では、「新型コロナウイルス感染症を含むパンデミックが発生した場合、チェアマン、TL (筆者注・トップリーグ)専門家/アドバイザー、マッチコミッショナー、チーム代表者、チームメディカルにて協議し、チェアマンが最終判断を下す」とある。

 さらに日本協会によると、準決勝進出チームは同規約第39条に基づきキックオフ予定時間の48時間前(5月7日14時)を目安に決まるとのこと。

 第39条は「試合登録可能な選手が 23 名(フロントロー6 名含む)以上であること」を「次の試合に進出するチーム」の最低条件となっており、それを「キックオフ48時間前」に満たしているチームが次戦へ進む権利を得る。翌週以降の情勢次第で、サントリーが4強入りに近づく。

 今季のトップリーグは、本来の開幕直前にあたる1月中旬に複数のチームでクラスターが発生していた。初戦が2月20日に延期となり、シーズンは縮小化。その結果、本来ならレギュラーシーズンの試合をおこなう予定だった会場などでプレーオフトーナメントの2回戦を実施することとなり、五郎丸歩を擁するヤマハが敗退した一戦は、臨時を含め18席だったという東京・江戸川陸上競技場で開かれ、公式入場者数は2033名だった。

 かたや、ラグビー王国のニュージーランドでは2020年春のロックダウンが奏功してか、同年夏のうちに有観客での試合を開催。今季のスーパーラグビーアオテアロアの会場も歓声に包まれる。

8強入りリコーは指揮官退任へ

 過去最高位が2016年度の6位のリコーは、2021年度日本代表候補となったフランカーの松橋周平主将、ワールドカップイングランド大会日本代表でフランカーのマイケル・ブロード―ハーストらを擁し、タフな防御で存在感を示してきた。

 今季レギュラーシーズンで3勝4敗も敗れた4戦のうち3戦は5点差以内の敗戦。3月14日には、2022年からの新リーグでの本拠地化が期待される東京・駒沢陸上競技場で2018年度王者の神戸製鋼に19-20と接近した。

 2013年度就任で今季限りでの退任を部内で通達済みの神鳥裕之監督は、「見ている人に何かを伝えられるゲームをできてきている」と勤勉さを貴ぶチームに手ごたえを感じていた。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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