「羽生善治竜王のタイトル通算100期」に黄信号?――名人戦、棋聖戦で苦境
棋界のスーパースター、羽生善治竜王(47)は前人未到のタイトル獲得通算100期にあと一つと迫っている。だがここにきて佐藤天彦名人(30)に挑戦中の第76期名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催)では2勝3敗とカド番に追い込まれ、豊島将之八段(28)の挑戦を受けている第89期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負(産経新聞社主催)は開幕戦を落とし0勝1敗と、どちらも苦しい戦いを強いられている。
<羽生竜王の最近10局>(放送前のTV棋戦をのぞく)
※▲=先手、△=後手
4月11、12日名人戦第1局
羽生竜王(先)〇-●佐藤名人
横歩取り▲5八玉急戦
4月19、20日
名人戦第2局
佐藤名人(先)○-●羽生竜王
角換わり△早繰り銀
5月3日
王位戦リーグ
木村一基九段(先)○-●羽生竜王
横歩取り▲青野流
5月8、9日
名人戦第3局
羽生竜王(先)○-●佐藤名人
角換わり▲4八金△6二金
5月17日
王位戦リーグ
羽生竜王(先)○-●松尾歩八段
横歩取り▲青野流
5月19、20日
名人戦第4局
佐藤名人(先)○-●羽生竜王
横歩取り▲青野流
5月24日
王座戦本戦
羽生竜王(先)●-○深浦康市九段
△雁木
5月29、30日
名人戦第5局
羽生竜王(先)●-○佐藤名人
横歩取り△3三角
6月4日
王位戦挑戦者決定戦
羽生竜王(先)●-○豊島将之八段
角換わり腰掛け銀
6月6日
棋聖戦第1局
豊島八段(先)○-●羽生棋聖
角換わり腰掛け銀
重要対局5連敗は過密スケジュールが原因か
最近10局の成績が示すとおり5月下旬から羽生竜王は名人戦第4、5局、リターンマッチを目指す王座戦本戦トーナメント、王位戦挑戦者決定戦、そして棋聖戦第1局とタイトルにからむ5局を全敗、上り調子だった春先からは信じられないような状況で今夏のタイトル獲得通算100期達成に黄信号が灯った。
仮にこの機会を逸すると次は10月に始まる竜王戦七番勝負(防衛戦)まで偉業達成はお預けとなる。
筆者が思うに今回の不調は過密スケジュールによる疲労の蓄積が大きく影響していると考える。重要対局の合間であっても羽生竜王はイベントや講演で全国各地を移動、精力的に「棋界の顔」としての役目を果たそうとしており、6月8日に行われた年1回の日本将棋連盟棋士総会では老朽化した東西の将棋会館の立て直しを検討する会館建設準備委員会の委員長に就任することも発表され、今後ますます公務が増えることが予想される。
古くは会長職を長く務めた(1977年~1988年)故・大山康晴十五世名人、現在でもA級棋士で会長の佐藤康光九段(48)などトッププレイヤーが運営の要職に就くというのが将棋界の慣習になっているのだ。
連敗の後、必ず復活してきた実績
2年前の2016年4月22日から6月3日まで、名人戦、竜王戦、棋聖戦と重要対局の連戦で羽生は自身初となる6連敗を喫した。このうち名人は失ったが棋聖は防衛、その後復調し夏場にかけて王位、王座と連続で防衛を果たしている。
昨年も夏場に王位(1勝4敗)、王座(1勝3敗)と連続失冠し、今度こそだめかと思われたところから立て直し、竜王を4勝1敗で奪取して史上初となる「永世七冠」の偉業を達成した。
棋聖戦第1局から第2局まで10日、この貴重なインターバルを生かして百戦錬磨の羽生がどのようにコンディションを整えてくるか、主導権を取りやすい先手番ということもあり復調なるかに注目したい。
<今後のタイトル戦日程>※6月末まで
6月16日
棋聖戦第2局
羽生棋聖(先)-豊島八段
6月19、20日
名人戦第6局
佐藤名人(先)-羽生竜王
6月26、27日
名人戦第7局
佐藤名人-羽生竜王
(振り駒で先後決定)※第6局羽生勝ちの場合
6月30日
棋聖戦第3局
豊島八段(先)-羽生棋聖