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「スローすぎた」ノルウェーのスローTV。ハプニング続出の結果は?

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
トナカイは海峡横断できたのか?過去の横断写真 Photo: NRK

「スロー」なことが売りのノルウェーのスローテレビ。しかし、今回はトナカイの移動のスピードがあまりにもスローすぎた。放送を一時中断するなど、予想外のハプニングが相次いだ。

スローテレビは、北極圏で牧草地を移動するトナカイと、放牧するサーミ人家族に密着した。編集なしの生放送で、24日より1週間も24時間ノンストップで放送が続いていた。

しかし、気まぐれな天候と「あまりにもスローすぎるトナカイの移動スピード」などが原因で、放送を一時中断。TV局スタッフが働きすぎて、労働環境法にふれそうになったためだ。

5月1日からは生放送は一時中断し、スタッフたちは休憩。3日に放送が再開した。今回のトナカイの移動で、最も注目が集まっていたのは、目的地である島へ渡るための「海の横断」=「トナカイの水泳」だった。

しかし、ここでもまた予想外の事態が起きる。今年は気温が低すぎて、海水や風の温度が冷たすぎ、トナカイに横断は無理という判断に至った。

結果、「トナカイの水泳」から「貨物を運ぶための船で移動」させることに。

島までの横断手段には人間が使用している「橋」もあるが、これは避けたい手段だった。トナカイが橋を利用すると救急車などの邪魔になる。なにより「橋で渡る」ことをトナカイが覚えてしまうと、島から勝手に離れてしまう可能性があるためだ。

流れがつかめない変更が続く中、国営放送局NRKはテレビでの放送は打ち切り、公式HPで放送を続ける。トナカイの群れから一時離れ、山場のシーンである海峡でスタッフは待ち続けた。スクリーンには、静かに漂う水面や周囲の山の風景シーンが続いた。

結果、残念ながら、船の手配に時間がかかることから、その日の横断は断念。NRKは目的のシーンを放送することはなく、番組を完全に打ち切った。

放送のために放牧するサーミ人やトナカイにストレスを与えることはなにより避けたかったため、テレビ側の事情や視聴者の思いよりも、飼い主と動物が優先された。無理に川を横断させてしまえば、寒さのために妊娠中のトナカイが流産する恐れもあった。

4日、生放送はされなかったが、トナカイの船での横断を見届けた写真が掲載された。

現在スタッフからのコメントや最終的な視聴者数に関する返事を待っているのだが、長期間の過酷な撮影期間を終えたばかりで、番組責任者は週末はしっかりと休憩中。コメントは来週の記事で掲載予定だ。

Text:Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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