マッスル美女も土下座スイマーも…スポーツ界も「謎のおばさん」に牛耳られていたのか
韓国に衝撃を走らせた “崔順実(チェ・スンシル)ゲート”。朴槿恵(パク・クネ)大統領が、宗教やシャーマニズムも絡む一般女性・崔順実から何かと指南を受けていたり、機密文書を流失していたり、崔順実とその一派たちが富と権力をむさぼり続けたりしていたことが白日の下にさられ、韓国は連日、この一大スキャンダルの情報であふれている。
その詳細は日本でも詳しく報じられているのでおわかりだと思うが、“崔順実ゲート”は韓国スポーツ界にも波紋を呼んでいる。
例えば、韓国で昨今人気の“マッスル美女”ブームを牽引してきたチョン・アルムだ。ミス・コリア出身のマッスル美女として人気の彼女だったが、崔順実も関与していたとされる国民体操『ヌルプン(発展という意味)体操』の発案者だったということで、崔順実やその一派との関係が疑われて誹謗中傷を浴びた。本人は完全否定しているが、スキャンダルのとばっちりを受けて、イメージダウンは免れない状況だ。
逆に、リオジャネイロ五輪ですっかり汚名先行になってしまったパク・テファンは“崔順実ゲート”の犠牲者だったと言われている。
(参考記事:“土下座スイマー”パク・テファンの落日と韓国水泳界の驚愕すべき実態)
パク・テファンが土下座会見したのは、国際水泳連盟から受けた1年6か月の資格停止処分が終わったあとも、「処分を受けた者は3年間代表になれない」という規則を曲げようとしなかった大韓体育会に許しを請うためだったが、そもそもその規則は大韓体育会を管轄する政府機関である文化観光部(日本の文部省に相当)主導で作られ、文化観光部は崔順実とその一派の影響力が絶大だったというもの。つまり、根源を探っていけば、“崔順実ゲート”の犠牲者だったというのだ。
しかも、崔順実とその一派は2018年平昌(ピョンチャン)冬季五輪にも関与していたらしい。メインスタジアムの着工が遅れているのは、文化観光部が崔順実とその一派が推していたスイスの事業者を食い込ませようとしたためだったとされており、広報大使のキム・ヨナが言及に困った様子を見せた平昌五輪マスコット発表の遅れも、崔順実とその一派の息がかかった文化観光部の関係者たちが何かと介入してきたためだったという。
もっともショッキングだったのは、朴槿恵大統領と文化観光部が掲げた「スポーツ界4大悪撲滅キャンペーン」の裏側だ。
文化観光部は朴槿恵大統領の指示を受けて、韓国スポーツ界にはびこる八百長、暴力、非理、連盟組織などの私物化を一掃するキャンペーンを実施しているが、そこにも崔順実一派の利益が隠れていたというのだ。
韓国は文化観光部つまり政府の指示で、エリートスポーツを統括する大韓体育会と社会スポーツの統括団体である国民生活体育会を統合させているが、そこでも影で暗躍していたのは崔順実一派だったというのだから、もはやこうなってくると“陰の実力者”というどころではなくなってくる。政界や財界だけではなく、スポーツ界も仕切りっていた支配者だったと言われてもおかしくはないだろう。
韓国スポーツ界は過去にも政治の介入や影響を受けてきた。軍事政権が韓国プロ野球やKリーグの設立を後押したのは軍事政権だったと言われているし、歴代大統領を見ると、スポーツ好きも多い。
(参考記事:なぜかゴルフを毛嫌いする朴槿恵大統領。韓国の歴代大統領とスポーツの浅からぬ関係とは?)
だが、政治スキャンダルがここまでスポーツ界に影響を及ぼしていた例は、過去にない。ましてそれを牛耳っていたのが、スポーツとは縁もゆかりもない江南(カンナム)の“アジュンマ(おばさん)”とその一派だったという事実に、韓国のスポーツ関係者たちはショックを隠せない。
韓国では最近、“崔順実ゲート”を風刺して嘲笑するパロディが流行だというが、韓国スポーツ界はまったく笑えないというのが正直なところだ。
(参考記事:怒りをギャグに昇華!! “崔順実ゲート”がらみのギャグが面白すぎる)
国中を衝撃と落胆の底に突き落とし、スポーツ界でも波紋を呼ぶ“崔順実ゲート”。母が凶弾に倒れ、父も暗殺され、弟や妹とも仲たがいし自らも暴漢に襲われた孤独な人間・朴槿恵には同情する。ただ、利権を貪っていた崔順実とその一派もさることながら、その一派の横暴を見過ごしてきた大統領・朴槿恵の罪と責任は重い。