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橋本環奈が語る、朝ドラ「おむすび」9つのキーポイント

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
「おむすび」のヒロイン米田結を演じる橋本環奈さん 写真提供:NHK

「ほっこり温かくて、この現場の空間をキープできたらなあ」

朝ドラこと連続テレビ小説「おむすび」(NHK)は、平成元年生まれのギャル・米田結(橋本環奈)が栄養士を目指す青春グラフィティ。

幼少期は神戸で過ごし、阪神・淡路大震災で被災したのち自然豊かな糸島に移住した結は、それぞれの土地での経験を通して食と栄養に関心を持ち、栄養士を目指すことになる。

結役で主演する橋本環奈さんは1999年平成11年生まれで、ギャル文化も阪神・淡路大震災もリアルタイムで知らない。ひとつひとつ勉強しながら演じていると語る。現場は楽しく、食事がおいしいそうだ。未知の出来事を演じることに挑む橋本環奈さんに、ドラマの9つのキーポイントを聞いた。

「おむすび」より 写真提供:NHK
「おむすび」より 写真提供:NHK

1【福岡 地元】

結の第二の故郷になる福岡・糸島。福岡出身の橋本環奈さんには土地も言葉も馴染み深く、とてもやりやすいそうだ。

「福岡は高校卒業までずっと住んでいた大好きな町です。学生の時にいつも友人と遊んでいた天神がロケ地になっていてとても懐かしくて。今回の主な舞台は糸島でしたが、皆さんすごく温かくて盛り上げてくださりありがたかったです。エキストラで参加してくださった方々のお芝居がとても上手でした。博多弁でのお芝居が、私には地元の言葉なのでやはりやりやすいです。語尾やイントネーションを自分の話しやすいように自然に演じることが出来ました。逆に言えば地元以外のかたには聞き馴染みがなさすぎて違和感を覚え過ぎないように、標準語と交ぜようかという案もあったのですが今回はリアリティを追求することを選択しました」

「おむすび」より 写真提供:NHK
「おむすび」より 写真提供:NHK

2【ギャル】

福岡に引っ越し、高校でギャル文化に出会う結。見違えるようなギャルファッションになる場面もある。

「私の親世代、あるいはもうすこし下の、いま、30〜40歳ぐらいのかたが高校生の頃、ギャルが流行っていたので、私には馴染みがありませんでした。資料で、様々なファッションを見ました。皆さん明るい写真が多くて。まずはそういうビジュアルの印象から入りましたが、演じていて気付いたのは、ギャルとは心意気なんだなということです。好きなことを貫く。周りの目を気にしない。それがギャルの掟だと教えられました。いまの世の中では、周りの目を気にするなと言われてもSNSなどがあるため、どうしても気にしてしまうものですが、平成のギャル魂は、誰がなんと言おうと、自分が好きなものを貫く。それってとてもステキですよね。仲間をとにかく大事にするし、裏切らない気持ちもステキです。高校時代に仲間だったギャルたちが、物語が進んでいった先も出てくるのですが、みんないつまでも変わらないんです。当時の話で盛り上がる姿は青春そのもの。明るいギャルってステキだなと日に日に好きになっています」

「おむすび」より ギャルたち 写真提供:NHK
「おむすび」より ギャルたち 写真提供:NHK

「パラパラを練習して、フェスの衣装を着て、イベントで踊ったのはすごく楽しかったです。実際に糸島のエキストラの皆さんの前でパラパラを踊ったときは、最初少し戸惑いもありましたが、最後はノリノリで踊っていました。ギャルメイクはチョコレートのような茶色いファンデーションを塗って、つけまつ毛はバッサバサにボリュームのあるもので、油を塗っているんじゃないかと思うほどのテカテカの口紅を付けたり、ラメを唇に載せたりした顔は、自分じゃないみたいで楽しかったです。顔が変わり過ぎて、お父さんが『結はどこだ?』と誰かわからなくなるシーンがあるのですが、ちょうど、私の父が母と共に現場を見に来て、私がどこにいるかわからなかったんですよ。台本を読んだとき、さすがに自分の娘に気づかないことはないだろうとみんなで言っていたら、実際うちの父が気づかなかったのでメイクの力に驚きました(笑)」

「(自分のなかのギャル魂はあるかという質問に)仲間を大事にするみたいなところはあると思います。私自身も友達がすごく大事だし、喜んでもらえたらうれしい。サプライズもそうですけど、いつも友達に対して一番の味方でいたいなあと思っています。高校生のとき、すでにお仕事をしていたので、なかなか学校に通えていなかったのですが、友達が優しくて、授業のノートをとってくれたり、久々に行ったらお弁当を作ってくれたり、賞を受賞したときや誕生日に黒板に寄せ書きを書いてくれたり。大事にされていたからこそ、自分自身も大切にしたい。自分が心を開いたりとか大切にしていると相手からも返ってくる気がします。それはギャル魂かもしれないですね」

3【みりちゃむさん】

結の姉・歩がつくった博多ギャル連合の総代表「ルーリー」こと真島瑠梨役で、令和ギャルのみりちゃむさんが出演している。

「ギャルメイクの時間はとても長くかかりました(1時間以上)。特につけまつ毛をつけることに慣れなくて。でも、みりちゃむがいろいろアドバイスしてくれたので、本物がいると違うな!と思いました。博多ギャル連合のみんなはすごく仲良くて、福岡で泊まり込みの撮影だったので、みんなでご飯にいったり、わいわい過ごせて楽しかったです」

4【根本ノンジさんの脚本の魅力】

漫画原作だと「正直不動産」や「ハコヅメ〜たたかう!交番女子」「監察医 朝顔」など人気ドラマを多く手掛ける根本ノンジさんの脚本は、キャラクターが全員、愛くるしいと橋本環奈さんは演じることを楽しんでいる。

「最初に台本を読んだとき、テンポ感が良くて、読んでいて早く演じたいと思うほど面白かったです。とくに好きなのは米田家の家族のシーンですね。みんなキャラが濃くて、それぞれ個性があって、愛くるしくて。お母さん(麻生久美子)、お父さん(北村有起哉)、おじいちゃん(松平健)、おばあちゃん(宮崎美子)、みんな大好きですが、特に松平健さんが演じる永吉おじいちゃんがいいキャラなんです。ずっとにこにこしていて、ふたりの孫娘にいつでも戻ってくればいいと言う気前のよさ、あったかさがあって、こんなおじいちゃんがいたら最高だなと思います。一方、お父さんはまったく違って生真面目な人で、そこの差がおもしろい。家族の関係が密に描かれる第1週から第7週にかけての糸島編は、ものすごく好きです。女子高生としての生活と家族愛、それからおねえちゃん(歩〈仲里依紗〉)の思いが丁寧に描かれています。根本さんの台本は明確で、演じていて迷うことがないです。結ちゃんはこう思っているんだろうなって読んでスッと入ってきます」

5【家族の食卓 ピーマン味噌】

食がテーマの「おむすび」。米田家が農業をやっていることもあって、新鮮な食材を使った家庭料理がたくさん登場。食卓を囲むシーンも多い。

「4月ぐらいから撮影をしていますが、いつも家族でおしゃべりしています。他にも麻生久美子さんや北村有起哉さんとストレッチしたりして。今回、食をテーマにしているので、食卓のシーンがとにかく多くて、『今日、一日中食べてない?』みたいなときもあって。そういうときもご飯を食べながら和気藹々です。料理監修の広里貴子先生が作ってくださるおかずが本当に美味しくて。とくに、家族みんなが大好きなのがピーマン味噌。食卓のシーンに必ず出てくる定番メニューで、これだけでごはん何杯でもいけるというくらい美味しいんですよ。先日の撮影では、おばあちゃん役の宮崎美子さんが育てたキャベツを使用したメニューが出たりして。基本、全員、撮影が始まる前から食べていて、カットかかってもみんな、箸をおかず話し続けたりと楽しい現場です」

「おむすび」より 写真提供:NHK
「おむすび」より 写真提供:NHK

6【仲里依紗さん】

結の姉・歩は「伝説のギャル」と地元では有名な存在。結は最初、姉のスタイルに戸惑いを覚えていたが、姉のギャル仲間と出会い、次第にギャルの生き方に惹かれていく。

「結の姉・歩はみんなに好かれていて、そのわけは、ちゃんと真っ正面から物事にぶつかれる人だからだと思います。最初の撮影では、家族と歩の関係がギスギスしたシーンだったので、仲里依紗さんに声をかけていいものか迷いました。おそらく、仲さんもそう思っていたのではないかなと。でも、打ち解けたシーンの撮影後は、基本的にずっと一緒に居るようになりました。スタジオの前室でも、食卓のセットのなかでも、仲さんとお話ています。仲さんは本当に快活で、包み隠さず自分のままで存在している感じが、まさにギャルのようで本当にすてきで尊敬しています。もともと大好きなかたでしたが、今回お芝居でご一緒してからさらに好きになりました。性格ももちろん好きなのですが、お姉ちゃんとして結に寄り添ってくれるシーンがたくさんあって、とってもグッときています」

7【阪神・淡路大震災】

1995年1月17日に起こった出来事で多くの方々が被害に遭った。主人公・結は6歳のとき神戸に住んでいて震災を経験している。そのことが結にどういう影響を及ぼすのだろうか。

「私が生まれる前に起こった震災に関して、情報が全くない状況でしたので、スタッフの皆さんとたくさんお話をしたり、ロケ地の写真を見せていただいたりしました。米田結は、当時、6歳という幼さで記憶が定かではない設定で、セリフでは『覚えてないんだよね』と言いながら、ふとした時に、震災で焦げた臭いを思い出したりするような描写もあるのですが、おぼろげな感覚を表現することは難しかったです。結と同じく当時6歳くらいのかたにもお話を伺うと、うっすら覚えているくらいなのだそうで、避難所に集まった人たちと生活を共にすることを最初は楽しいと思ってしまったという体験も聞きました。6歳の女の子が震災というものをしっかり受け止めて考えていたかというとそれは個人差もあると思いますが難しいのかもしれません。その一方で、いまなお記憶が鮮明なかたもいらっしゃいます。放送を見て、当時経験したかたがフラッシュバックにならないようにしながら、でも嘘にならないように、丁寧に演じようと思っています。寄り添うという言葉がうわべだけにならないように、大事にしているのは、想像を絶するような体験をされた方々が、それでも前を向いて生きてこられたということです」

8【米田結と橋本環奈】

役と自身に共通するところはある?

「結は最初はギャルが大嫌い、ギャルのように自分の好きなことをやることに遠慮がちなんです。すごく家族思いで、家族のために我慢して、真面目を演じている子です。私自身は高校生のときもお仕事と学生を両立できていましたし好きなことをやれたほうなので結に共通するところはあまりないのですが、大切な人たちを傷つけたくないという気持ちはすごく理解できます」

9【とにかく楽しむ】

橋本環奈さんが仕事をするうえで大切にしていることは、現場を楽しくすること。「おむすび」の現場はとても楽しいそうです。

「気負わず、いつも楽しくが一番だと思っています。例えば撮影が押すと現場がピリピリしてきたりしますが、そういうとき、明るく盛り上げるようにはしています。ただし、気を使っているのではなく、自分が楽しくしたいからそうしているだけで。無理しているつもりは一切ないです。でも、NHK大阪のスタッフは皆さん、本当にほっこり温かくて、この現場の空間をキープできたらなあと思います」

「おむすび」より 写真提供:NHK
「おむすび」より 写真提供:NHK

Kanna Hashimoto

1999年2月3日福岡県生まれ。2016年、映画「セーラー服と機関銃 -卒業-」で初主演。第40回日本アカデミー賞「新人俳優賞」受賞。主な出演作に、映画「キングダム」シリーズ、「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」「今日から俺は!!劇場版」「カラダ探し」、舞台「千と千尋の神隠し」で千尋役を演じ、ロンドン公演でも好評を博す。

橋本環奈さん 写真提供:NHK
橋本環奈さん 写真提供:NHK

連続テレビ小説「おむすび」
毎週月~土曜 午前 8時00分(総合)※土曜は一週間を振り返ります

/ 毎週月~金曜 午前 7時30分(NHKBS・BSP4K)

【作】 根本ノンジ

【主題歌】 B’z 「イルミネーション」

【語り】 リリー・フランキー

【音楽】 堤博明

【出演】 橋本環奈 仲里依紗 佐野勇斗 麻生久美子 宮崎美子 北村有起哉 松平健 ほか

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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