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逃げた犬のお巡りさん「クレバ号」おかえり! 優秀なシェパードになにがあったの?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:アフロ)

兵庫県の警察犬が、行方不明の女性を探しているときに失踪したというニュースが流れてきてびっくりしました。

逃げたジャーマン・シェパードは、人間の100万倍の嗅覚があるといわれています。知性が高く推理力もあり優秀な遺伝子を持っているのです。記憶によると失踪した警察犬では、「クレバ号」が日本初だそうです。なぜ、そんな事態になってしまったのか? なぜ、いままでの警察犬にこのようなことがなかったのか?を考えてみましょう。

 兵庫県福崎町田口の山中で行方不明者の捜索中に失踪した県警の警察犬「クレバ号」(2歳、オス)が27日午前、同じ山中で見つかり、無事保護された。犬にけがはなく元気で、けが人もいないという。

出典:山中で逃走の警察犬みつかる リードが木に絡まり動けず…けがなし無事保護 兵庫・福崎

けが人もなく、クレバ号も元気で、本当によかったです。

発見当時、クレバ号は、興奮気味だったようで、ツナ入りのパンと魚肉ソーセージを与えて落ち着かせたそうです(本当は、ツナ入りパンなどの人が食べるものは塩分が多すぎて、犬にはよくないのですが、急なことで持っていたものを与えたのでしょう)。

警察犬はどんな犬がなるのか?

まずはどんな犬が、警察犬になり、そして、人のために働いてくれるのか見ていきましょう。

・警察犬の種類

ジャーマン・シェパードとラブラドール・レトリバーが、代表的な2犬種です。

・オスとメスはどちらが多い?

クレバ号もそうですが、オスの方が多いです。メスには、生理があるのでその時期は活動できないからです。

・どんな犬が向いているか?

血統などを調べ、いままで活躍した警察犬の遺伝子を持った子などを選びます。その上、警察犬の訓練担当者の目利きで、適正性があるかどうかを見極めます。

もうひとつ大切なことは、人間と一緒にする仕事が好きなのかどうかということです。警察犬になるまでに、厳しい訓練を受けます。実際に働くと、想定外のことも起こります。そのとき、与えられた仕事が好きな犬は、教えられた以上の仕事をこなして、偉業を成し遂げることもあります。以前に、「ISIS指導者を追い詰めたのは軍用犬 人間のために仕事をしてくれる犬の役割は」を書いていますのでご参照ください。

このような警察犬の訓練<物品持来訓練・臭気選別訓練>をしている動画があります。

動画を見ていただくとわかるのですが、どの警察犬もオッポを上げて、耳を立てて楽しそうに得意げに自信を持って仕事をしています。

ヤル気がなかったり怖いと、オッポは下がりますし、耳も傾けたりします。クレバ号も例外ではなく、4人の行方不明者を発見し、表彰もされた優秀な警察犬なのです。

なぜ、クレバ号は逃げたのでしょうか?

私の臨床経験をもとにした推測では、雄で2歳なので、運動不足かもっと遊びたかったのでしょう。

ジャーマン・シェパードは、大型犬でまして雄で2歳と若いので、十分な運動が必要ですね。好奇心旺盛で逃走してしまったのでしょう。もちろん、クレバ号には、何も罪もないし、悪いことはないですね。

兵庫県警鑑識課は、「逃走は初めてで原因はわかっていない。今後、検討会を開いて再発防止を図る」と話しています。

今後の処遇についてもまだ決まっていないとのことですが、クレバ号はまだ若く、優秀な警察犬なので、怒ったり、失格の烙印を押して処分したりせずにゆっくり成長させてあげてほしいです。

クレバ号は、発見されたとき、喜ばず興奮していたということなので、警察犬の関係者と信頼関係ができていなかったのかもしれません。一般的には、迷子になった犬は、飼い主を見ると急に態度を変えて喜びます(警察犬と一緒に仕事をする人は、動物が好きな人がいいな、と個人的には思っています。犬は人の気持ちを深く読み解く能力がありますから)。

そして、クレバ号に運動不足を解消してあげられるように日常的にケアをしてあげてほしいです。ストレスがかかると警察犬でもいい仕事ができないので、のびのびと活動させてあげたいですね。

まとめ

優秀な警察犬が逃げたというニュースは衝撃でした。このような失態を隠蔽しなかった兵庫県警は正しい判断ですね。秘密にして、クレバ号を捜索することもできました。でも人にけががあってはいけないと配慮してこのように公開したのでしょう。

人のために、働いてくれる使役犬(盲導犬、介助犬など)は、AIが発達したいまでも多くいます。犬の適正性を見極めてストレスがないようにしてもらいたいです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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