ドン・キングが手掛けたWBAレギュラー・ヘビー級タイトルマッチ
90歳のドン・キングがプロモートしたWBAレギュラー王座ヘビー級タイトルマッチは、見ていて悲しくなる一戦だった。今日のヘビー級の低迷しか伝わってこなかったからだ。
32歳の王者、トレバー・ブライアンは、13センチ、9キログラムのアドバンテージを生かせず、終始ベタ足で手打ちを繰り返す。
180センチとヘビー級ではかなり小柄な13位のジョナサン・ギッドリーも特に決めてのないまま、ダラダラとラウンドが進む。両ファイターが動く度に、腹の贅肉がタプタプと揺れる。
ブライアンは21戦全勝15KO、ギッドリーも17勝(10KO)無敗2分けであったが、見せ場の無いまま最終ラウンドを迎えた。
挑戦者はガードを上げる力が残っておらず、チャンピオンの無数のパンチを浴びる。とはいえ、速いコンビネーションを出せないブライアンも仕留め切れない。
試合終了数秒前、ダメージを蓄積させた挑戦者がダウン。起き上がったところで、ゴングが鳴った。
118-109、116-111、112-115で、王者がベルトを守ったが、ファンを喜ばせる内容とはとても言えなかった。
試合後、ブライアンは語った。
「俺のスキルは向上している。今夜、最後までそれを見せられた。己の才能を、海外まで伝えられたと思う。ヘビー級のトップ3、タイソン・フューリー、アンソニー・ジョシュア、オレクサンドル・ウシクとの試合を希望する。ギッドリーはタフだったが、踏み台にできたな」
プロ生活における初黒星を喫したギッドリーも言った。
「接戦でしたよね。この試合が決まったのは4週間前。もう少し準備する時間があれば、もっといいファイトができた筈。体も作れただろうし…。ガスが満タンだったら、ヤツをKOできたと思います。
最終ラウンド、ブライアンは私の首を打ってきました。ヤツとの間にそんなに差は感じませんでした」
負け惜しみにも聞こえたが、「4週間前に急遽決まったファイトで、準備する時間が足りなかった」とは、本音であろう。今日も、ドン・キングに泣かされるファイターが存するのである。
久しぶりに興行を手掛けたキングは、独特の口調で捲し立てた。
「見事な試合だったねぇ。ジョナサン・ギッドリーは実に素晴らしい戦いを見せた。トレバー・ブライアンが、なぜ得意の右を使わなかったのか疑問は残るがな。素晴らしいファイトで、プロモーターとして鼻が高いよ」
悪徳プロモーターとして名を馳せた90歳は、次にどんな動きをするか。