外国人観光客を呼び込もう!新潟県は「包丁」で勝負
昨年、日本を訪れた外国人観光客は2403万人、今年は2800万人に上ると予想されています。このため、各自治体や観光協会は魅力のPRに力を入れています。そのうち新潟県は包丁やフライパンなどの地場製品を、外国人向け料理教室で使ってもらうユニークな取り組みをはじめました。
「Like a sandwich」(サンドウィッチのように)
10月中旬、外国人観光客向けに日本料理教室を展開する京都市下京区の「クッキング・サン」。ドイツやオーストラリアなどから来た観光客約10人が作務衣姿になり、講師のアドバイスを受けながら、「レンコンのはさみ揚げ」を作っていました。
輪切りにしたレンコンの上に、ひき肉で作ったたねを慎重に載せていきます。その上に「サンドウィッチのように」レンコンを載せてたねを挟み、フライパンで焼いていきます。長い菜ばしを使うのが少し難しそうです。
「料理が好きなので、日本でクッキングをしたいと思っていました。今日の料理はイージーですが、調理や盛り付けの方法がドイツと違います。ドイツではメーンディッシュやポテトなどの野菜をすべてワンプレートに載せますが、日本はいろいろなお皿を使っていますね」
ドイツ人の女性が笑顔で話しました。この日は、レンコンのはさみ揚げのほか、「鮭の焼き漬」や「豆腐と食用菊のサラダ」など、新潟県の郷土料理を取り入れた献立に挑戦しました。
この教室は、新潟県が2017年、地場製品の認知向上を目的に始めたプロジェクト「NIIGATA in 10(ニイガタ・イン・テン)」の取り組みの一つです。
観光庁のデータでは、16年に新潟県内に宿泊した外国人は26.7万人。5年前の3倍近くに上りました。このプロジェクトでは、訪日外国人に料理や遊びといった体験の中で新潟県製品を使ってもらい、「使いやすく、美しい」県製品の購買意欲促進を目指します。
新潟県はクッキング・サンの協力を得て、2017年10月から東京と京都の料理教室で、包丁やフライパン、おろし金など県産の調理器具を使ってもらっています。
エプロンやアルミ製のぐいのみ、はしなどもそろえた約30品目の県製品の販売もしています。新潟県の担当者は「実際に使ってもらうことで、燕三条地域で作った包丁の切れ味などを感じてもらいたい」と意気込みます。これまで参加者の反応は上々で、「包丁が『すごく切れる』と高い評価をいただいている。気に入って、購入した(料理教室の)参加者もいた」と話します。
この取り組みは12月末まで行う予定です。県によると、11月上旬までに、13品目48点を販売したそうです。特にヨシカワのキッチン用品ブランド「EAトCO(イイトコ)」シリーズのスリムなかき混ぜ棒「Mazelu whisk(マゼル・ウィスク)」やおろし金「Oros grater(オロス・グレーター)」が人気で、それぞれ約10点が売れました。包丁はもちろん、エプロンを購入した参加者もいました。県は、3カ月間で約700人の参加を見込み、参加者のSNSでの拡散にも期待しています。
日本料理教室での”コト消費”が外国人に人気
クッキング・サンの運営会社、Necusto(ネクスト)の山本昇平社長はこう話します。「日本の家庭料理に興味がある外国人は多く、ここ数年、外国人観光客を対象にした教室が増えています」
同社は2014年、京都にある築90年の町屋を改装して、日本料理の教室を始めました。外国語ができる講師が家庭料理を中心に教える教室は人気となり、16年10月からは、東京でも教室を運営しています。
山本社長は「アメリカとイギリス、オーストラリアからの観光客で参加者の半分を占めています。アジアからの観光客は全体の1割ぐらいですね。これからはアジアからも、“コト消費”(所有では得られない体験などにお金を使うこと)を目的に来日する観光客が増えると思います」と話します。
観光庁は、今年の訪日外国人数は、過去最多となる2800万人に達すると予測しています。浴衣でのまち歩きや自転車での散策といった外国人向けの“コト消費”サービスも増える中、料理教室での県製品PRは面白い取り組みだと思います。新潟の郷土料理と共に、外国人に印象を残せるかどうか、今後に注目です。
撮影=筆者(一部提供)