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iPhoneの中国事業に新たな懸念、米中貿易摩擦の犠牲か?

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

 特許権を巡って、半導体大手の米クアルコムと米アップルが争っている裁判で、中国の裁判所は、クアルコムが訴える2件の特許侵害を認め、iPhoneの旧モデルの中国における販売を差し止める仮処分を下した。

 世界最大のスマートフォン市場である中国では近年、iPhoneの販売が減速している。米中の貿易摩擦で緊張が高まる中、アップルの中国事業には、新たな懸念が広がりそうだと指摘されている。

米中貿易摩擦の犠牲か?

 ウォールストリート・ジャーナルなどの米メディアによると、販売差し止め命令が発効する時期については、今のところ明らかになっていない。

 アップルは、声明を出し、「iPhoneは、今もすべてのモデルが中国で販売されている」とし、「裁判所の決定に対し、再検討を要求した」とも述べている。

 だが、これによりアップルは、「iPhone X」「同8」「同7」「同6」といった旧モデルを同国で販売できなくなるようだ。

 一方で昨年発売した最新モデル「同XS」「同XS Max」「同XR」は差し止め命令の対象になっていない。クアルコムが訴訟を提起した時点で、これら2018年モデルは発売されていなかったからだ。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、今回の命令は、福州市の知的財産を扱う裁判所が11月30日に下した。この日は、中国ファーウェイ(華為技術)の副会長で財務責任者の孟晩舟氏が、米国の要請により、カナダで逮捕された日の前日だ。

 これら、アップル製品の販売差し止めと、ファーウェイ幹部の逮捕には、米中貿易摩擦との関連を疑わざるを得ないものがあると、スイスの投資銀行UBSのアナリストは指摘している。いずれも、両国を代表するテクノロジー企業だからだ。

アップルにとって1.36兆円の損失?

 今回の決定は、アップルの中国事業に打撃を与えそうだ。同国はアップルの売上高のほぼ5分の1を占める市場だからだ。

 アップルはiPhoneの機種別販売台数を公表しておらず、旧モデルの占める比率がどの程度だかは分からない。

 しかし、カナダの投資銀行RBCキャピタルマーケッツのアナリストは、同国における旧モデルの販売比率は約4割に上ると見ている。これにより、アップルの損失額は、120億ドル(約1兆3600億円)に上る可能性があるという。

中国スマホ市場、上位4社はすべて中国企業

 前述したとおり、中国は世界最大のスマートフォン市場だ。しかし同国では近年、スマートフォンの販売が低迷している。

 香港の市場調査会社カウンターポイント・テクノロジー・マーケットリサーチによると、昨年(2018年)7〜9月期における同国のスマートフォン販売台数は1年前から8%減少し、前の四半期に続き、前年割れとなった。

 同国のスマートフォン普及率はすでに95%に達しており、初めて端末を購入する人の数が急減している。これに伴い、メーカー各社の開発競争が激化しているという。

 昨年7〜9月期の同国におけるメーカー別販売台数のランキングで、アップルは前年同期と同じ5位になっている。上位4社は、ファーウェイ、ビーボ(維沃移動通信)、オッポ(広東欧珀移動通信)、シャオミ(小米科技)と、いずれも中国企業が占めている。

  • (このコラムは「JBpress」2018年12月12日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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