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上海ディズニーの閉鎖だけじゃない 中国「出張も納品もままならない!」厳しくなる一方の移動制限

中島恵ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

10月31日、上海ディズニーランドが突然閉鎖を発表した。新型コロナウイルスの影響で、同日午前11時頃に園内アナウンスで発表があり、昼12時頃に閉鎖。2万人以上の人が園内に閉じ込められた。

その数日前、10月26日には、北京にあるユニバーサル・スタジオ北京でも、新型コロナの影響で開園時間の30分前に突然閉鎖が発表された。

厳しくなる一方のゼロコロナ政策

上海ディズニーは2021年10月31日にも1人の感染者が発見されて突然閉鎖されたことがあり、そのときは約3万人以上の来園者がPCR検査を実施。最後の人が園の外に出られたのは翌朝だったと報道されたが、1年経っても、その状況は変わっていない。

それどころか、中国のゼロコロナ政策は、このところなお一層、厳しさを増している。

10月の党大会で習近平国家主席の3期目が決定し、一時は「これで一段落したので、ゼロコロナは少し緩まるのではないか」と淡い期待を寄せた人もいたが、実際はその逆だった。

問題は観光やショッピングなど、自分の余暇を使って出かけた先で突然封鎖が起こるといったことだけではない。

突然飛び出す、恐怖のポップアップ通知

むろん、それも恐ろしいことだが、日常生活を送る上において、コロナのリスクがある場所にたまたま出かけたり、濃厚接触の疑いがあったりする場合、スマホに「弾窓(ダンチュワン)」と呼ばれるポップアップ通知が突然飛び出てくる。そのため、「いつポップアップが出るかと思うと、怖くて、どこにも出かけられない。マンションにいても不安だ」という人が増えている。

しかし、それ以上に困るのは、ビジネス上どうしても必要な出張や、部品・物資などの配達・納品などに対しても「コロナ対策」と称して厳しい対応措置が取られており、あちこちで業務に著しい影響が出てしまっていることだ。

上海や北京だけに限らないが、省や大きな市を跨ぐ移動は、現在、非常に厳しく制限されており、出張先のホテルを予約することができなかったり、たとえ予約できても、市外からの客は受け入れないという通知が来たりして、ホテル難民になってしまう。

高速鉄道など長距離移動のための公共交通機関でも、もしポップアップが出れば、車内で数日間足止めを食らう可能性もある。つまり、事実上、出張ができない状況となっている。

人の移動だけではなく、物資を運ぶことさえも困難だ。

車のドアを外から封鎖するという強硬手段

上海市に隣接する浙江省にある企業に勤務する知人から、とんでもない話を聞いた。浙江省のある都市から上海までは車で約2時間の距離だが、上海まで製品を運ぶ場合、トラックのドライバーは現地に着いても運転席から出ることを許されないという。

信じられないことだが、「感染対策」として、到着先の担当者が製品を下ろしている間、車のドアを外側から封鎖して、ドライバーを閉じ込めてしまう(上海の空気には一切触れさせない。窓も開けさせない)そうだ。

それだけではなく、上海まで製品を運んだドライバーは、浙江省に戻ったあと、市内からかなり離れた農村に強制的に移動させられ、10日間、隔離する決まりだという。

知人によると、そうしたシステムを遂行するため、通常よりも数倍多くのドライバーを確保し、ローテーションを組まなければ日々の納品が間に合わず、死活問題となっているという。

このような事例は大きな都市間で数えきれないほどあり、各業界でビジネスに大きな支障が出ている。

多くの人々が「このままでは、中国経済は持たなくなるのではないか……。いや、もう精神的に持たない」といった不安や不満を抱えている。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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