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元AKB48篠田麻里子さんスキャンダル騒動の新たな展開に週刊誌について改めて考えた

篠田博之月刊『創』編集長
『週刊女性』1月31日号(筆者撮影)

 元AKB48篠田麻里子さんについての昨年12月の不倫スキャンダル騒動については一度記事を書いた。プライバシー報道を巡る週刊誌のあり方として、これで本当に良いのだろうかという趣旨で書いたのだが、この騒動がその後新たな展開になっているので、続報を書いておこう。ちなみに前の記事は下記だ。

https://news.yahoo.co.jp/byline/shinodahiroyuki/20230109-00332110

元AKB篠田麻里子さんめぐる不倫スキャンダル報道は、どう見ても行き過ぎではないのだろうか

12月のスキャンダル報道に『週刊女性』が対抗

 いささか驚いたのは、今年に入って『週刊女性』が2週にわたってこの問題を報じ始めたことだ。第1弾は同誌1月31日号で表紙に大きく「激白スクープ!篠田麻里子不倫騒動全内幕」とうたっている。第2弾は2月7日号「独走スクープ!『もはや結婚詐欺』金欠モラハラ夫の“本性”」だ。

 取材に応じて情報提供したのは「篠田麻里子の親族のひとり」とされている。親族や親しい友人の話、とされながら実は話していたのは本人だったり代理人弁護士だったりというのも週刊誌報道ではよくあることだが、この場合はわからない。しかし、直接話しているのが誰であっても、話の内容は篠田麻里子さんが訴えたいことだろう。

背景に高額の金銭要求があったという暴露

 記事によると、一連の週刊誌報道が出た12月、実は篠田さんの夫が離婚の条件として慰謝料8000万円を求めてきたという。記事中で「篠田の親族」がこう語っている。

「昨年12月、離婚の条件としてT氏が麻里子に求めてきた慰謝料は8000万円。第三者を通じてメールが転送されてきたのです。そのメールには《麻里子の芸能活動やママ事業を守るわけですから》《この件が公になった際麻里子が与える(原文ママ※受けるという意味)影響や将来得られる収入、周りからの信頼を考えても打倒(原文ママ※妥当)な金額》など、脅しともとれるような文言が複数書かれていた。麻里子は完全に“暴露されたくなければ金を払え”という脅迫だと感じた。そして、T氏のこうした要求を突っぱねるたびに、麻里子に対するプライバシー侵害、つまり暴露が行われていきました」

 離婚交渉で夫が高額な慰謝料を要求し、要求を突っぱねるたびにプライバシー暴露が行われていったというのだ。要するに12月に『女性セブン』『週刊新潮』、文春オンラインなどで次々と暴かれたプライバシー報道は、夫による金銭要求の脅迫の道具だった、という主張だ。スキャンダル暴露がそんなふうに使われていたことを当の週刊誌側は知らされていない可能性が高いのだが、麻里子さんにとってみれば、夫が金を要求しながらスキャンダル情報を小出しに週刊誌に流していったと見えるというわけだ。

『週刊女性』の第2弾では、夫が「金欠」「モラハラ」だったことが、結婚後判明したとして、親族が「もはや”結婚詐欺”です」と語っている。夫妻は既に離婚協議を続けており、その過程で双方の言い分が週刊誌で明らかにされていったというのが、この間の実情だろう。12月に暴露された不倫疑惑についても『週刊女性』の記事では、麻里子さんが否定していることを伝え、証拠として暴露された音声データは編集されている可能性があると指摘している。

週刊誌による「代理戦争」

『週刊女性』の記事がほぼ全面的に麻里子さん側の情報に依拠していることは明らかだが、週刊誌が騒動の渦中にある双方の言い分をライバル誌同士それぞれの主張を展開することはこれまでにも何度もあった。週刊誌を使っての「代理戦争」である。麻里子さん側にとってみれば、相手が攻勢をかけてきたので防衛上、同じような手を使わざるをえないということなのだろう。確かに一方的に相手の言い分だけが様々な週刊誌で報じられているという状況よりは、1誌だけでもその裏事情を暴露してくれる週刊誌があったほうがよいということになろう。

 前回の記事にも書いたが、これまでの不倫スキャンダル報道にしても、私怨に基づく情報提供に週刊誌がのっかってなされていることが多い。そういう形でプライバシーを暴露し合うことは、最終的に傷つくのは当事者双方だったり、今回の場合は何も罪のない子どもだろう。ここまで泥沼化すると関係修復はありえないし、双方が修復の道はないと判断したから暴露合戦に打って出たのだろう。

公と私の区別がつかなくなってしまう風潮

 だから改めてここで指摘したいのは、読者の側はメディアリテラシーを発揮して、どういう背景でその報道がなされているか認識しながら読んでほしいということ、そして当事者や関係者、さらに報道する側は、その暴露が持つ意味についてできるだけ冷静に考えてほしいということだ。12月のスキャンダル報道で私が、行き過ぎではないかと危惧したのは、これがそのまま突き進むと当事者双方にとって何のプラスにもならないような結果になるのではないかということだった。

 この何年か、不倫スキャンダルが週刊誌で定番のようになってしまい、公と私の区別が曖昧になってしまった。個人のLINEがこんなふうに公開されてしまうことも、かつて不倫スキャンダル報道のひとつの端緒となった『週刊文春』のベッキーさん報道の時はもう少し驚きをもって受け止められたと思うが、これだけ続くと週刊誌では見慣れた光景になってしまった。このことがこの社会に何をもたらすのか、もう一度考えてみる必要があるのではないだろうか。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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