ローマン・ゴンサレス、カルロス・クアドラスはリマッチへ動き出すのか 6 days in MSG #3
3月18日 ニューヨーク マディソン・スクウェア・ガーデン
WBA、WBC、IBF世界ミドル級タイトル戦
WBAスーパー、WBC、IBF王者
ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン/34歳/36勝(33KO)無敗)
対
WBA正規王者
ダニエル・ジェイコブス(アメリカ/30歳/32勝(29KO)1敗)
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3月15日 マディソン・スクウェア・ガーデン・シアター
11:15 AM
今日はまず17日にプロデヴュー戦を開催するマイケル・コンラン(アイルランド)の最終会見。その後に18日の興行のアンダーカード会見も行われるため、異例の午前中スタートとなった。リオ五輪で微妙な判定で敗れた後、ジャッジに向かって中指を立てるパフォーマンスで有名になったコンラン。この日もボブ・アラムの隣に座ると、カメラを向けるカメラマンに向かって中指を立てる気の利いたサービスで周囲を笑わせた。
11:25 AM
前座に登場するロブソン・コンセイソン(ブラジル/リオ五輪ライト級金メダリスト、プロでも2戦2勝(1KO))が紹介されるが、その苗字をアラムが発音できないという不運なアクシデント(?)。ただ、百戦錬磨のアラムは「“ロブソン”とだけ呼ぶことにしよう」と潔い方向転換で事なきを得る。状況を把握していないのか、気にしていないのか、コンセイソンは満面の笑みでアラムとハグを交わす。
11:33 AM
17日のセミファイナルに登場するウェルター級プロスペクト、アレックス・サウセド(メキシコ/23戦全勝(14KO))がスピーチ。礼儀正しい青年で、枯れ木のように細い。ボクサーは着痩せすることもあり、ヘビー級の選手以外は実際に会うと驚くほど痩せて見えることが多い。
11:35 AM
17日にコンランの相手を務めるティム・イバラ(アメリカ)が壇上へ。「ここに来たのは倒されるためでも、期待されている選手に勝ち星を与えるためでもない。タフな試合になるだろう」と短く意気込みを語る。
11:40 AM
コンランのデヴュー戦がセント・パトリック・デイ(アイリッシュの祝祭日)に用意された経緯を、アラム、トレーナーのマシュー・マックリンが説明する。もともと昨年11月のマニー・パッキャオ(フィリピン)の試合の前座でデヴューのプランもあったが、コンラン側がこの日を選択したという。6月のプエルトリカン・パレードの週にはプエルトリカン(フェリックス・トリニダード、ミゲール・コット、フェリックス・ヴェルデホなど)をメインに据えた興行がニューヨークで催されるのが恒例。同じように3月はアイリッシュを起用した興行が打たれることが多く、過去にはジョン・ダディ、アンディ・リーなどが主役を務めてきた。今後、コンランは3月の常連になっていくのだろうか。
11:47 AM
コンランがスピーチの壇上へ。すでに伝えられてきた通り、コンランと親交の深いUFCファイナターのコナー・マクレガーがデヴュー戦のリングウォークに付き添うという。マクレガーはフロイド・メイウェザー(アメリカ)戦が取りざたされているだけに、当日はコンラン以上にメディアに囲まれることになりそうだ。なお、トップランク関係者によると、売れ残っている17日のチケットはあと約50枚のみという。アイルランドから2000人のファンが来る予定で、当日はソールドアウトが予想されるとのこと。もっとも、昨日にニューヨークを襲った大吹雪の影響でアイルランドからのフライトに支障が出ているようだ。
11:50 AM
最後にアラムが締めくくりのコメント。「外は寒いが、この会場を温めてくれるトップランクのノックアウツ(ラウンドガールたち)たちに感謝したい」と若々しいジョーク(?)で笑いを取る。85歳のプロモーターは「この年齢の私でも彼女たちがホットだと感じられるのだから、若い奴らはなおさらだろう」と続け、今日の第1部は終了となった。
12:50 PM
サンドイッチとフルーツの昼食を挟み、第2部開始。18日のアンダーカードに登場するボクサーたちの最終会見が始まる。一昨日に続き、司会はクールなトム・ローフラー。互いに再戦希望を語っているローマン・ゴンサレス(ニカラグア)とカルロス・クアドラス(メキシコ)の間には、ゴンサレスのマネージャーであるカルロス・ブランドンが挟まるだけで、2人はかなり近くに座っている。
1:00 PM
“ゲンナディとの対戦を拒まなかった数少ないミドル級ファイター”として、元WBO世界ミドル級王者アンディ・リー(アイルランド)が紹介される。リーは実際に3年前の4月にゴロフキンに挑むことが一度は決定しながら、ゴロフキンの父親の逝去でキャンセルになった経緯がある。今回はPPV枠外で無名選手と対戦。ここで勝ってトップ戦線再浮上を目指す。
1:05 PM
クアドラスと対戦するデビッド・カルモナ(メキシコ)が登場し、通訳を通じて丁寧にスピーチ。カルモナにとっては昨年5月の井上尚弥戦以来のリングとなる。
1:10 PM
いつも陽気なクアドラスが壇上に立ち、「ニューヨークは初めてだけど凄い街。エキサイトしているよ」と笑顔で話し始める。帝拳プロモーションズ、K2プロモーションズ、メキシコのプロモーターに次々と感謝の言葉。そして、「再戦が待ちきれないから、ローマンに勝ってほしい」と、すぐ隣にいるゴンサレスになぜかバービー人形をプレゼント。この意図は不明だが、前戦の際どい判定負けに納得がいかないクアドラスは早急なリマッチを望んでおり、その機運を煽るための挑発とみられる。壇上で通訳を通じてスペイン語で話し続けた後、最後に英語で「僕は速く、強く、とてもとてもハンサムです」と語って締めくくる。とにかく明るい選手だ。
この会見に入る前にクアドラスと少し言葉を交わす機会があったが、ゴンサレスとのリマッチへの思いは強い様子だった。カルモナ戦に勝てばクアドラスは指名挑戦者となる。ゴンサレス側も再戦には好意的のようで、だとすれば今年後半にも実現の可能性はあるのだろうか。そうなるとゴンサレス対井上のドリームマッチは先送り、あるいは実現が難しくなるだけに、意識し合う2人のリマッチの行方はなおさら気になるところだ。
1:15 PM
18日にゴンサレスに挑む元WBC王者シーサケット・ソー・ルンヴィサイ(タイ)が壇上に登場。英語の苦手なシーサケットに変わり、通訳が「タイ人がHBO PPVでタイトル戦を行うのはこれが初めてのこと。タイにとって大きな意味があるファイトです。ゴンサレスはこれまでで最もやる気に満ちたハードパンチャーと戦うことになるのです」と雄々しいスピーチを披露する。
1:25 PM
ここでローフラー、ゴンサレスのマネージャーのカルロス・ブランドンが帝拳プロモーションズ、本田明彦会長に感謝の言葉を述べる。多くのプロモーター、マネージャーと良好な関係を保つ帝拳は実際にアメリカ国内でも深くリスペクトされており、業界内にいると、その影響力を感じる瞬間は頻繁にある。HBOの重役に「ミスター・ホンダからファイトをオファーされたら、私が話を聴かないことはあり得ない」と言われたのを思い出す。
1:30 PM
最後にゴンサレスが静かにスピーチし、その後にフェイスオフ。ゴンサレスは下を向くシーンも多く、元気がないように見えるのが少々気にかかる。かつてクアドラスを苦しめたシーサケットは実力者。もう長くスーパーフライ級で戦っていることもあり、ゴンサレスもかなり苦しむのではないかと見る関係者も少なからず存在する。もっとも、王者に覇気がないように見えたのは、とにかく明るく意気揚々としているクアドラスの隣にいたからかもしれないが。