ラウタロ・マルティネスは180億円のダイヤ? 首位浮上インテルの「切り込み隊長」
ロメル・ルカクの絶妙なアシストで迎えたチャンスを物にできず、ハットトリックの好機を何度か逸したのも、「ご愛嬌」と笑い飛ばしてしまえるほどの活躍だ。
イタリア2年目の今季、ラウタロ・マルティネスが大きな飛躍を遂げている。12月1日のセリエA第14節スパル戦でドッピエッタ(2得点)をマーク。リーグで8得点、チャンピオンズリーグ(CL)で5得点の計13得点と、チームの得点王としてインテルをけん引している。
特に、10月2日のCLバルセロナ戦以降は、12試合で12得点と驚異的なペース。CLでは4試合連続得点中。エルナン・クレスポ、クリスティアン・ヴィエリ、サミュエル・エトーと、インテルの歴史に欠かせない名ストライカーたちに続く快挙だ。直近のスラビア・プラハ戦では、インテルではクレスポ以来となるCLアウェーゲームでのドッピエッタを成し遂げた。
◆昨季から大きくブレイク
スパル戦で今季3回目のドッピエッタを達成したラウタロだが、本拠地サン・シーロでのリーグ戦における得点&勝利は久しぶりのことだった。2018年12月のナポリ戦以来、約1年ぶりだ。
それだけの期間が空いたのは、移籍初年度だった昨季が満足できない結果(公式戦35試合で9得点)だったからだ。実際、エディン・ジェコの獲得が騒がれ、アレクシス・サンチェスが加入した夏の時点で、ラウタロの立場は確実ではなかった。
だが、今では誰もが認める不動のレギュラーだ。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』のヴァレーリオ・クラーリ記者は、ラウタロがブレイクした背景に、以下の6つの要因があると分析している。
- 継続的な出場機会(昨季開幕14試合で先発2試合)
- コンテの手腕(得点以外の重要性の理解)
- パートナーであるルカクの存在(他を生かす相棒)
- 環境への適応完了(南米でも2年目に飛躍)
- 規律正しさ(交際約1年の恋人と穏やかな生活)
- 契約更新へのモチベーション(現年俸はチーム下位の150万ユーロ/約1億8000万円)
『ガゼッタ』のインタビューで、インテルとアルゼンチン代表の先輩、フアン・セバスティアン・ベロンは「完成されたFWで、必要なクオリティーをすべて備えている」とラウタロを絶賛。セルヒオ・アグエロを彷彿させる動き、ガブリエル・バティストゥータ級のパワー、クレスポを思い出させるエリア内での狡猾さを合わせ持つとたたえている。
◆30分以内の先制点が9試合
得点のタイミングも、貢献度の高さを物語る。得点の大半が、試合の均衡を破る先制点なのだ。ネットを揺らした10試合のうち9試合が先制点。残る1試合も、ユヴェントス相手に一時同点に追いつく貴重なゴールだった。しかも、ラウタロはこれらの得点すべてを開始30分以内に記録している。
『コッリエレ・デッロ・スポルト』のピエトロ・グアダーニョ記者は、「試合ごとにますます輝くダイヤモンド。いや、カラットが増している。ますます貴重な存在となっているからだ」と記した。
OBのアントニオ・カッサーノは、ラウタロの市場価値が1億5000万ユーロ(約180億3000万円)以上と述べた。実際、バルセロナやレアル・マドリーの関心を伝える噂は後を絶たない。1億1000万ユーロ(約132億3000万円)の解除条項が設定される契約の更新が急務と言われている。
◆10年ぶりの優勝に導けるか
ラウタロの活躍で、インテルは1950-51シーズンを上回るクラブレコードのセリエA開幕14戦12勝をマーク。ユヴェントスが勝ち点を落としたことで、単独首位にも浮上した。14節終了時で単独首位だった過去19回のうち、11回でインテルはスクデットを手にしている。直近の4回(2007~10年)はいずれも優勝だ。
冒頭で記したスパル戦での決定機失敗も、さらなる成長への余地が残されていると言える。もちろん、これから停滞期も訪れるだろう。ラウタロがそれらの障害を乗り越えられれば、ルカクとのコンビはインテルに栄光をもたらすかもしれない。
8連覇中の絶対王者から覇権を奪うことができるのか。近年、シーズン半ばから崩れ落ちることの多いインテルの今後に注目だ。