飲食業界人材不足の本当に理由を解説
飲食店コンサルティング会社スリーウェルマネジメント代表コンサルタントの三ツ井創太郎です。
前回のコラムでは、年間MD計画表のつくり方についてお話をさせて頂きました。
今回のコラムでは、飲食業界人材不足の本当に理由についてお話をさせて頂きます。
なお、今回の内容はYouTubeチャンネルでも解説していますので、よろしければ下記よりご覧ください。
(筆者作成)
当社の無料経営相談窓口に1通のメールが届きました。
「地方都市で居酒屋を4件展開している経営者の鈴木(仮名)と申します。
2020年からのコロナ禍がようやく終息し、常連のお客様も戻ってきてくださっています。
一方で、コロナ禍が長引く中でで退職をしてしまったスタッフも多く、さまざまな求人媒体で人材募集をかけていますが、社員はもちろん、アルバイトスタッフの応募もほとんどありません。
人材不足で満足な営業もできず、常連のお客様にもご迷惑をかけてしまっている状態です。もっと人が採用できる求人広告等はありませんでしょうか?」
このような内容のご相談でした。その後、鈴木社長にオンラインで詳しい状況をお聞きしました。
三ツ井「御社では今、人材採用や離職防止に向けて、どんな取り組みをされていますか?」
鈴木社長「採用に関しては、以前はハローワークに求人を出すだけで採用できていたのですが、今はしっかりとお金を支払って採用媒体に広告を出しています。正直、他には何もしていません。離職防止については、社員と2カ月に1回くらいは視察をかねた飲み会を実施して、コミュニケーションを図っています。」
確かに、コロナ禍前だったら、求人媒体に広告を出すだけで人が採用できたかもしれません。社員との定期的な”飲みにケーション”で離職防止に効果があったかもしれません。しかし、今の時代は、こうした取り組みだけで人材不足を乗り切ることは難しいでしょう。
ここで、飲食業界の人材不足に関するデータを見てみましょう。
飲食業界の厳しすぎる現状
図1は、帝国データバンクが2023年10月 に実施した「人手不足に対する企業の動向調査」のうち、従業員(非正社員)の過不足状況について行ったアンケート調査結果をまとめたものです。
業種別の人材不足割合を見てみると、飲食店は旅館・ホテルを上回り1位という状況です。3位との差は20%近くあり、全業種の中でも飲食業界が圧倒的に人材不足に陥っていることがこちらのデータからも読み取れます。
なぜ、飲食店はこのような「超人材不足」の状況に陥っているのか?その理由は大きく2点です。
1.長引くコロナ禍で飲食業界を離れる人が増えた
当社の支援先でも、コロナ禍を機に飲食業界を去っていった従業員は少なくありません。実際、総務省「労働力調査」における飲食店の就業者総数を見てみると、2019年度は296万人であったのに対し、2022年度は269万人と実に27万人も減少しています。
2.負の連鎖で離職率が悪化
厚生労働省が発表した「令和4年雇用動向調査結果の概況」によると、2022年の宿泊業,飲食サービス業の離職率は26.8%と元来全業種の中で最も高い数値となっています。この高い離職率の要因となっているのが、以前から言われている飲食業界の労働環境です。
飲食業界の労働環境は、以前に比べるとだいぶ改善されてきてはいますが、まだまだ「長時間勤務」「不規則な休日」「慢性的な人手不足」「人材が定着しにくい」などの課題があり、結果として正社員の負担が増えて離職してしまうという「負の連鎖離職」が起きています。特に2023年はコロナが収束し、急にお店が忙しくなったことで、この連鎖離職が拡大しました。
コロナ禍により飲食業界で働く人が減り、さらに負の連鎖離職が重なることで、人材不足が深刻しているのです。こうした厳しい状況の中において、前述の鈴木社長の会社のようにコロナ禍前にやっていた手法だけでは、超人材不足時代を生き残ることは難しいでしょう。
これまで通りの感覚的なものではなく、人材採用や定着に関して正しいメソッドを学び、着実に実践していく取り組みが必要なのです。
最後までお読み頂きありがとうございました。
(筆者作成)
<筆者プロフィール>
飲食店コンサルティング会社スリーウェルマネジメント
代表取締役 三ツ井創太郎