梅雨と秋雨はなぜ違う?
秋霖(秋雨)は東日本を代表する秋の長雨で、梅雨は西日本で著しい。この違いはどうして起こるのか?梅雨は東南アジアから流れ込む高温多湿な風が作り出す一方で、秋雨にはそれがない。しかし、秋雨も台風が重なると大雨に。
季節を分ける長雨
秋に降る長雨を秋霖(しゅうりん)といいます。「霖」は雨が木立のように並んで続いているさまを表し、雨がしとしと降ることを霖霖(りんりん)といいます。
季節が移り変わるとき、天気はぐずつきやすい。代表的なのが「梅雨」で、そのほかにも菜種(なたね)梅雨、山茶花(さざんか)梅雨などがあります。
梅雨と秋雨 どちらが雨多い?
秋雨は盛夏を挟んで、梅雨と対をなすものと思われがちですが、実は地域によって大きな違いがあります。こちらは梅雨(6月~7月)と秋雨(9月~10月)の雨量を、平年値を使って比べた図です。
梅雨の方が雨が多いのは沖縄や西日本などです。熊本や鹿児島など九州地方は梅雨と秋雨では2倍から3倍の開きがあります。
一方、秋雨の方が雨が多いのは関東や北海道です。北海道に梅雨はないけれど、本州と同じように比較してみると、札幌は梅雨と秋雨では1.7倍の差があります。また、東京も秋雨が多い代表格で、梅雨324.0ミリに対して、秋雨は459.7ミリです。
なぜ、梅雨と秋雨で違いがあるのでしょう
天気図からイメージすると、梅雨前線は南から北へ北上し、梅雨明けを迎えます。夏の間は高気圧に覆われているけれど、高気圧が徐々に弱まり始めると、再び前線が姿を現し、秋雨前線と名を変えて、北から南に南下します。
こうしてみると、梅雨と秋雨に大きな違いはないように感じられます。でも、梅雨には東南アジアから流れ込む高温多湿な風があるのに対して、秋雨にはそれがないのです。
そのため、梅雨は中国南部から西日本が中心で、秋雨は東日本が主になります。ただ、秋雨はしとしと雨ばかりというわけではなく、台風と重なると、ときに猛烈な風雨となることがあります。
最近は日本近海の海面水温の上昇や太平洋高気圧の後退が遅れることにより、台風シーズンが長引いたり、勢力の強い台風が接近したりするケースが目立つようになりました。秋霖という言葉には風情が感じられて好きなのですが、温暖化を前に、そうもいっていられないようです。
【参考資料】
倉嶋厚、2002:梅雨と秋雨の違い、大学テキスト日本の気候、古今書院、102-104