韓国水かけフェス日本定着への課題と期待 びしょ濡れパフォーマンスに求められるもの
今年初めて日本進出した韓国発の水かけフェス「WATERBOMB JAPAN 2023」の日本最終公演が7月29日、30日の2日間、埼玉・ベルーナドームにて開催された。真夏日の炎天下のなか、多くの観客たちは水鉄砲を手に水着で参加。アーティストとの水の掛け合いを楽しみながら、日本からのちゃんみなのほか、MAMAMOO+、SEHUN&CHANYEOL(EXO-SC)、NICHKHUN & JUN. K(2PM)、TAEMIN(SHINee)など人気K-POPアーティストや韓国DJの音楽に体を揺らせ、夏の1日を楽しんだ。
【写真】白のシースルー衣装で圧巻パフォーマンスを披露した水かけフェス名古屋公演のちゃんみな
「WATERBOMB」は、韓国で2015年から続くHIP HOPやEDMなどダンスミュージックがメインになる夏の大型野外フェス。公演中はステージ各所に設置されたウォーターガンから水が発射されるほか、アーティストやDJ、ダンサーが客席に向けて放水し、観客も持参の水鉄砲で応戦する。会場には更衣室が設けられ、水着で水を浴びながら音楽を楽しむことで若い世代から人気を得ている。
今年初上陸となった日本公演だが、名古屋公演に続く東京公演でもびしょ濡れになる女性たちの歓声が会場内のあちこちで沸き上がり、交互にステージに立つアーティストとDJのライブパフォーマンスで、休む間もなく音楽に体を揺らせていた。
水かけフェスにすっかりなじんで楽しんでいた観客たち
名古屋に続いて東京のステージに立ったMAMAMOOのソラとムンビョルによるユニット・MAMAMOO+は、ユニットデビュー曲「GGBB」からMAMAMOOのヒット曲メドレーで会場を盛り上げる。オリエンタルな雰囲気の「悪い奴(Chico malo)」では力強く歌い上げ、かわいらしくセクシーなユニット特有の魅惑的なボーカルとダンスで観客を魅了した。
Z世代の歌姫・ちゃんみなは、自身のヒット曲のほか、東京公演のサプライズゲストとして韓国のラッパー・ASH ISLANDを迎え、「Don't go (feat.ASH ISLAND)」を披露。日韓アーティストの共演ステージで夏の暑さを吹き飛ばすパワフルなエネルギーを爆発させ、会場中を圧倒した。
元IZ*ONEのクォン・ウンビは、鮮やかな水色の水着に透け感のあるトップスを羽織って登場。ステージに姿を現すや、女性ファンからの「かわいい!」という歓声があちこちから上がる。日本語のMCやあいみょんの「愛を伝えたいだとか」のカバー曲など日本のステージならではのパフォーマンスで、ファンの心をしっかりと掴んだ。
東京ステージから参戦したEXOのSEHUN&CHANYEOLのユニット・EXO-SCは、ステージ周辺を取り囲む大勢のファンの大歓声を受けながら、あっという間に会場を2人の世界観に包み込む。それぞれのソロでは「Nothin'」と「On Me」を熱唱。日本初披露となるステージを、観客と水を掛け合いながら存分に楽しんでいた様子。明るくポジティブな2人のエネルギーが会場中に伝播していった。
そんな東京公演を見て感じたのは、若い世代の音楽感度の高さ。音楽ライブとクラブDJが、水を掛け合う遊びと交わる初めてのK-POPイベントを、まるで毎年楽しんでいたかのように自然になじんで歌って踊り、はしゃぎながら笑顔を振り撒いていた。
初めて見る韓国アーティストのコールアンドレスポンスに大声で応え、DJの煽りにあわせてノリノリで踊る。新しいエンターテインメントを積極的に受け入れ、それらを存分に楽しもうとする貪欲な姿勢は、音楽好きの若い世代の特徴だが、日本人はとくにオープンであり、その気質が強いように感じる。
日本公演は成功だっただろう。タイ公演よりも観客の誰もがイベントを心から楽しんでいる様子が体感できた。来年以降のさらなる拡大開催を期待したい。
日本での“K-POP夏フェス”定着への第一歩
韓国の水かけフェス「WATERBOMB」は、今年初めてアジアツアーを敢行し、タイのバンコク、韓国はソウル・釜山・チェジュなど8都市、日本は大阪が事故で中止になったが名古屋と東京の2都市で開催。この先、中国・マカオでの実施も予定されている。
開催地ごとに出演者が異なるが、今回の「WATERBOMB JAPAN 2023」はほぼ韓国からのアーティストとDJとなった。人気K-POPグループからのユニットやソロの出演者も多かったことから、日本の若い世代のK-POPファンの集客に成功し、名古屋、東京ともに大盛況となった。
一方、バンコク公演では、地元タイのアイドル、シンガー、DJが多く出演していた。韓国アーティストとの共演もあり、タイと韓国の音楽が融合するコラボステージは、会場を大いに盛り上げた。日本公演では一部を除いて見られなかった光景だ。
今回の日本公演の成功は、“夏フェス”カテゴリにおけるK-POPイベントの日本定着の第一歩になっただろう。さらに、EDM系イベントなどで行われていた“水かけ”スタイルのK-POPフェスとして、同ファンに新たな夏のイベントの楽しみ方を提示し、受け入れられた。
この先に期待されるのは、日本からの出演アーティストを増やし、日韓コラボなどの共演や、似ているようで異なるそれぞれの音楽性をぶつけあい、お互いがしのぎを削るようなステージではないだろうか。
そんなステージから、もともと親和性の高い日韓アーティストのつながりの進化および深化、新たな音楽の創造などが生まれるかもしれない。そこから、K-POPとJ-POPの垣根を超えるファンが生まれていくことも期待できる。
たとえば、日本のHIPHOPアーティスト・Awitchは、韓国バンド・SE SO NEONとの共演ステージを日韓で踏んでいるが、お互いをリスペクトする2組は、両国でジャンルを超えたそれぞれのファンを増やしている。とくにロックやHIPHOPなどのインディペンデントシーンでは、個々のアーティストごとの対バンや共演といった交流が見られるものの、なかなか大規模イベントでは実現しないのが現状だ。
そんな事例のひとつとなり、その交流をメジャーシーンで拡張していく役割が、日韓の音楽界を結ぶ架け橋のひとつとなる「WATERBOMB」に期待される。両国の音楽の発展につながるポテンシャルのある同フェスのこれからに注目したい。
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