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横綱不在の11月場所はどんな展開になるのか。関取復帰の宇良など注目力士の初日は?

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
写真:日刊スポーツ/アフロ

2020年最後となる本場所が始まった。開催地は例年の福岡ではなく、今回も東京・両国国技館。場所前には、先場所に続いて白鵬・鶴竜両横綱の休場という、なんとも残念なニュースが流れたが、観客数の上限は2500人から5000人へ引き上げられ、多くの人が国技館へ足を運んだ。その証拠に、テレビに映る客席は、先場所までよりも賑わったように見受けられ、聞こえてくる拍手も大きかった。少しずつ活気を取り戻す館内に、見ているこちらもワクワクする。

横綱の不在で、先場所同様どの力士にもチャンスがあるといえる今回の11月場所。前回初優勝を果たした新大関の正代への期待が高まるのはもちろん、その姿を見ていた同じく大関の朝乃山と貴景勝も、次こそは自分がと意気込んでいるに違いない。ここでは、8日に行われた初日の取組内容を振り返り、注目力士をまとめてみる。

十両の土俵華やぐ宇良のカムバック

まず言及しておきたいのは、膝の大ケガを乗り越え、3年ぶりに関取復帰を果たした宇良である。彼が館内に登場した瞬間、艶めくピンク色の締め込み姿を久しぶりに見たファンから、大きな拍手が沸き起こった。

立ち合い。低く潜りこんで、対する錦富士の下に入り込んだ宇良。相手の後ろを抱え込むと、そのまま後ろから投げた。決まり手は「送り投げ」。実に宇良らしい、スピードを生かしたいい相撲だった。

取組前に流れた場所前のインタビューで「今度は土俵にしっかり足を着けて、技だけでなく力強さを見てもらいたい」と語っていた宇良。その言葉通り、リハビリと体づくりにストイックに取り組み、ケガを乗り越えてきたのだろう。土俵を飛び回る宇良も面白いが、彼の正攻法な攻めもまた楽しみである。関取へのカムバックとなる今場所からも、全国から大きな期待が寄せられる。

安泰の3大関と注目の力士たち

幕内の土俵は、番付最上位の大関3人が安泰の結果に。特に、朝乃山・貴景勝は、自分の相撲で相手に何もさせない、盤石の強さを見せた。また、三役に返り咲いた照ノ富士も、立ち合いからまったく下がらず、相手の腕(かいな)を思い切り返して、一気に寄り切り。思わず笑ってしまうほどの強さを見せつけた。

この日はほかに、北勝富士、明生、豊昇龍、千代の国が、勢いのある素晴らしい相撲で白星を挙げている。

関脇・御嶽海や、先場所注目を浴びた翔猿らと同世代の北勝富士は、次は自分がと言わんばかりに気迫をにじませ、圧力の強い妙義龍に押し出しで勝利。明生は、立ち合いから強く踏み込み、前へ前へと攻め続けて白星を勝ち取った。足腰の強い豊昇龍は、鋭い立ち合いで体幹の強さも見せながら、大きな体の魁聖を下手投げで破った。二度目の大ケガから復帰し、返り入幕を果たした千代の国は、肩に大きなサポーターをしながらも、千代の国らしい元気な相撲で勝利した。

またしても展開読めぬ11月場所

場所前に注目していた新関脇の隆の勝や、先場所大活躍の翔猿、人気力士の炎鵬らは黒星スタート。また、勝った新大関の正代も、いま勢いのある若隆景に土俵際で攻め込まれ、物言いまでつくギリギリの相撲で拾った白星であった。しかし、誰でも初日は緊張するもの。どの力士も、気持ちを切り替えて臨んでほしい。

観客数が増え、先場所ともまた違った雰囲気でスタートを切った11月場所。今場所はどんな展開になるのだろうか。今回も、一日一日大切に追っていきたい。

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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