日本一、プロ輩出多数、金メダリスト...名コーチたちが垣根を越えて集結しで“感覚を磨く”野球教室
2024年12月7日、埼玉県の越谷市民球場で「野球の街越谷」実行委員会主催の少年少女野球教室が行われた。講師となったのはアマチュア球界の各カテゴリーの実績・経験豊富なコーチたちだ。
指導陣を取りまとめるのは『コーチ会』と呼ばれる会の発起人である平原美亜さんだ。上武大が創部史上初の大学選手権優勝を果たし際にもコーチを務めていた平原さんを中心にアマチュア球界のコーチ数名で始めた会だが、今は50人近い規模にまで広がり、野球談義や情報交換、選手と監督の間に立つ「中間管理職」としての悩み相談など、有意義な場となっている。
そんなコーチ会が発足から10周年を迎えたタイミングで、コーチ会副会長で亜細亜大コーチの徳田紀之さんが「野球界に恩返しをしよう」と発案したのが今回の野球教室だ。
集まったのは越谷市の学童野球チームに所属する少年少女約150人。越谷市が開催地となったのは、コーチ会の中で幹事役を務める共栄大・川岸直将コーチが「野球の街越谷」実行委員会のイベントに参加したことがある縁があり実現した。
同委員会の発起人で会長の長瀬翼さん(越谷市立大相模中野球部顧問)によると、市内の小・中・高・大のそれぞれのチームの連携が深まっていることもあり、グループLINEで参加者を募集。「強制的にとか“やらされて”という形はしたくないので“協力してください”とは言っていないのですが、これだけの子供たちがLINEの応募ひとつで集まりました」と話す。
野球教室の前半で目立ったのは、山口県桜ヶ丘高・佐藤秀太郎部長の仕切りによるウォーミングアップだ。上武大や桐生第一高でコーチ・部長を務めた経験もあり、平原さんから「アップをさせたら日本一」と称される佐藤部長の丁寧かつ熱心な声かけに、選手たちも大きな返事で応えた。
通常の野球教室に比べると長い時間が割かれたが、この理由について平原さんは「まずは楽しくというのが1番ですが、感覚を磨く練習を多くやって欲しくてアップを長めにしました」と明かす。自身の経験も踏まえ「プロに行った選手はみんなそれが良いですからね。またそれが気づきや気遣い、目配りなどにも繋がっていきます」と、野球選手としてだけでなく人間的な成長ともリンクしていくと語った。
その後のキャッチボールや守備練習、打撃練習では、たくさんのプロ野球選手を輩出してきた国学院大の上月健太コーチや中央大の美馬健太コーチ、ソフトボールの北京オリンピック金メダリストである三科真澄さん(過去記事)らのデモンストレーションや技術指導が行われ、選手たちはトップレベルのコーチの技術や考えを間近で笑顔を絶やすことなく吸収した。
こうした充実の時間はあっという間に終わり、選手たちは最後まで元気いっぱいで帰路に着いた。
指導したコーチ陣からも「みんな元気で楽しかったですね」「教えているようで、野球を好きで始めた頃の教えてもらったような気がしますね」と笑顔があふれた。
様々なことが共有されてきたコーチ会。その10年の節目に、「野球が楽しい」という思いで繋がった越谷市の子供たちへ、その知見や感性がたっぷりと注がれる時間となった。