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子どもの食物アレルギー、実は社会的な要因が深く関係していた!?

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:アフロ)

【家庭の事情が食物アレルギーに影響することが明らかに】

世界中で食物アレルギーの子どもが増えていることが問題になっています。しかし、調査してみると、その増え方は一律ではありませんでした。人種、民族、家の収入、両親の学歴、性別などの社会的な要因によって、食物アレルギーの発症率に違いがあることが、多くの研究で指摘されているのです。特に、都市部に住む特定の人種・民族的マイノリティで、社会経済的地位が低い家庭の子どもに、食物アレルギーが多いことがわかってきました。

【出生コホート研究って何?食物アレルギーとの関係は?】

食物アレルギーのリスク要因を探るため、赤ちゃんがお母さんのお腹にいる時から子どもの成長を追いかける「出生コホート研究」が各国で行われています。アメリカのWHEALS研究では、アフリカ系アメリカ人の子どもで食物アレルギーのリスクが高いことがわかりました。一方、イギリスのIOW研究では、家庭の経済状況と食物アレルギーの関連は見られませんでした。

ヨーロッパの大規模なEuroPrevall研究では、両親の教育歴が高いほど追跡期間中の脱落率が低いことが分かりました。追跡調査から脱落しやすい社会経済的地位の低い家庭の実態が十分に反映されていない可能性があり、結果の解釈には注意が必要です。

【食物アレルギー予防のために大切なこと】

社会経済的な要因と食物アレルギーの関連を明らかにするには、いろいろな人種・民族の集団を対象とした大規模な研究が欠かせません。今、アメリカでは全国12か所、2500人以上のお母さんと赤ちゃんを対象とした「SUNBEAM」研究が進められています。家庭の事情に関する詳しい情報を集め、アレルギー発症の経過を丁寧に追跡することで、新しい発見が得られると期待されています。

また、食物アレルギーの発症には、皮膚のバリア機能の低下や湿疹などの皮膚の病気が深く関係していることが知られています。有名な医学雑誌でも、湿疹のある赤ちゃんでは食物アレルギーのリスクが高いことが報告されています。これからの出生コホート研究では、皮膚の健康状態についても詳しくデータを取ることが大切だと考えられます。

食物アレルギーの発症には遺伝的な要因だけでなく、生まれ育った環境が大きく影響することが明らかになってきました。社会経済的な課題にも目を向けながら、予防と治療の研究を進めていくことが求められています。

参考文献:

- Warren CM et al. Sociodemographic inequities in food allergy: Insights on food allergy from birth cohorts. Pediatr Allergy Immunol. 2024;35:e14125. https://doi.org/10.1111/pai.14125

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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