ガソリン小売価格は13週連続で値下がり、不要不急の外出禁止で恩恵乏しいが
資源エネルギー庁が4月22日に発表した「石油製品価格調査」によると、4月20日時点のレギュラーガソリン価格の全国平均は、1リットル当たりで前週比1.0円値下がりの130.9円となった。1月20日時点の151.6円をピークに13週連続で下落し、過去3カ月の累計下げ幅は20.7円に達している。2017年7月18日以来の安値更新になる。
これは原油調達コストの急落を反映した動きである。新型コロナウイルスの影響で、世界各国で移動制限が行われる中、ガソリン消費は大きく落ち込んでいる。経済活動の停滞でガソリン消費が落ち込むことは過去にもあったが、移動制限は2001年の米同時テロ直後の航空業界で同様の事例がみられた程度であり、ガソリンに関しては近年では経験したことのない状況に陥っている。米国では、ガソリン消費量が前年同期比で4割以上落ち込んでいるが、国内でも4~6月期の消費量は2割程度落ち込む可能性が高いとみられている。
国内のガソリン価格指標である東京商品取引所(TOCOM)ガソリン先物価格の期近物は、米国とイランとの軍事衝突が警戒された1月8日の1kl=6万2,400円をピークに、4月22日安値は1万8,700円に達している。1リットル当たりだと62.4円から18.7円まで、最大43.7円下落しており、小売価格もその半分程度の値下がりを既に反映した状況になっている。
仮にこのまま原油相場の反発が見られず、現行価格水準での低迷状態が続けば、ガソリン価格は段階的に110円水準まで値下がりする可能性がある状況になっている。今週は、NY原油先物価格がマイナス価格化したことが話題になったが、日本が主に輸入する中東産原油は1リットル当たりで13円台を維持しており、直ちにガソリン価格が劇的に安くなる状況にはない。精製コストや各種税金も大きく変わる訳ではなく、原油価格動向はガソリン価格を構成する主要要因ではあるが、全てではない。ただ、このまま世界的な原油安傾向が続けば、100円の節目を試す可能性も想定できる状況になっている。
世界的にみると、過剰な原油安は世界経済や金融市場に大きな動揺をもたらす「リスク」と評価されており、実際に今週の株安の要因になっている。しかし、消費者にとっては好ましい状況と言える。昨年のゴールデン・ウィークのガソリン価格は150.4円だったが、今年は120円台でゴールデン・ウィークを迎える可能性が高い。ただ、緊急事態宣言の影響で、不要不急の外出自粛が求められる中、実際にガソリン安の恩恵を受けることは難しい状態が続く見通しになっている。