ロシアの国防相が訪朝し、軍事支援を要請!? 北朝鮮軍NO.1の不可解な動静
ウクライナのニュース放送「TSN」がイスラエルに亡命中のロシア最大石油企業ユコスの元最高経営責任者(CEO)レオニード・ネブズリン氏の情報としてロシアのショイグ国防相が3月11日から2週間以上も公の場に姿を見せなかったのは「中国と北朝鮮を訪問し、消耗した弾薬・ミサイルなどの支援を要請したからだ」と伝えていたことには正直驚いた。「まさか」と「やっぱり」の思いが交錯したからだ。
「TSN」の報道によると、ネブズリン氏は「信頼できる情報筋」の話としてショイグ国防相の極秘訪問は「消耗した弾薬やミサイルの支援を求めることに目的があった」として「中国には断られたが、北朝鮮は(武器支援)要請に同意した」と明かしていた。
いつ、どのような方法で、どのようなルートで入ったのか何一つ不明で、裏の取りようもない。正直、この情報には疑問符が付くが、仮にネブズリン氏が言うように本当にショイグ国防相が「北朝鮮に長く滞在し、北朝鮮に軍事支援を要請した」のが事実ならば、北朝鮮のカウンターパートナーは昨年6月に就任した新任の李永吉(リ・ヨンギル)国防相ではなく、おそらく軍事部門を統括している次帥の朴正天(パク・ジョンチョン)党書記兼党軍事委員会副委員長の可能性が高い。
今月4日に韓国の国防長官の先制打撃発言を非難する談話が朴書記の名前で出されていたが、朴書記は公の場には全く姿を現していない。昨日の日曜日、平壌の文化会館で金正恩(キム・ジョンウン)総書記の執権10周年を記念した慶祝報告大会が開かれたので早速、主席壇をチェックしてみたが、金総書記を除く崔龍海(チェ・リョンヘ)、趙甬元(チョ・ヨンウォン)、金徳訓(キム・ドククン)3人の政治局常務委員が揃って着席していたにもかかわらず、同じ政治局常務委員である朴氏の姿はなかった。
気になって、直近の動静を調べてみると、朴書記は金総書記が出席した2月16日の金正日(キム・ジョンイル)前総書記生誕80周年中央報告大会も、2月26日の党第2回初級党書記大会にも欠席していた。また、3月24日の新型大陸間弾道ミサイル「火星17型」の発射にも同行しておらず、27日の発射試験の成功を祝う記念写真にも納まっていなかった。
朴書記は昨年6月に失脚した党序列3位の同じ軍人出身の李炳哲(リ・ビョンチョル)書記の後任として政治局常務委員、党軍事委員会副委員長、党書記の3つのポストを継承したが、前任者の李前書記は2017年に試験された「火星12型」「火星14型」「火星15型」の発射にはすべて立ち会っていた。
体を壊し、療養中のため行事に出席できないことも考えられる。しかし、仮に職務に忙殺され、欠席せざるを得なかったならば、「ウクライナ事態」との関連ではないかと勘ぐってしまう。ましてショイグ国防相が訪朝されたとされる3月中旬と言えば、党中央軍事委員会が陸海空軍部隊に対して戦略物資の点検を指示していた時と重なる。また、3月22日にはイゴリ・モルゴルフ外務次官がシン・ホンチョル駐露北朝鮮大使と会っているし、その18日前にはロシアのマツェゴラ駐朝大使がキム・ジョンギュ欧州1局長にも会っている。
折しも、ウクライナ軍の抵抗にあい、苦戦を強いられているロシアはウクライナ戦争全体を指揮する司令官にロシア軍南部軍管区のトップ、アレクサンドル・ドボルニコフ将軍を任命したようだが、ドボルニコフ将軍はアサド政権のため2015年にシリアの内戦にロシア支援軍を率いた功労者として知られている。
生粋の野戦軍人出身の朴書記はシリア内戦中の2012年に砲兵司令官、2014年には総参謀部副参謀長兼火力指揮局長、そして2016年には総参謀部砲兵局長になっていた。とんとん拍子に出世し、2019年9月には軍総参謀長になり、今では金総書記の最側近である。
朴書記とシリアとの直接な繋がりは確認できていないが、朝鮮人民軍がシリア内戦中にアサド政権に「援軍」を出していたことは公然たる事実である。ロシアの報道では当時、シリアは北朝鮮の兵士に1人につき月5000ドル支給していたとされる。
シリアと北朝鮮は同盟関係にある。北朝鮮が1973年のイスラエルとの第4次中東戦争でエジプト・シリア連合軍に空軍兵士を中心に義勇軍を派遣し、加勢したことが縁となっている。シリア北部に建設中の核施設が2007年にイスラエルの奇襲攻撃で破壊されたが、この施設が北朝鮮の支援によって建設されていたことは米国やイスラエル情報機関によって確認されている。
シリア内戦当時、ロシアの「タス通信」は北朝鮮の「鉄馬―1」と「鉄馬―7」部隊がシリアの政府軍側に立って戦っていると報道し、北朝鮮専門サイト「ノース38」もまた、「北朝鮮が兵器をシリアに供与し、軍事顧問団がシリア政府軍に派遣された」と伝えていた。また、2013年4月には北朝鮮の港を出港し、シリアに向かっていた貨物船をトルコ政府が検閲した結果、小銃など1400丁と弾薬3万発が発見されたこともあった。2015年4月にシリア反乱軍の「アムド・ホラン」がユーチューブを通じて4人の捕虜を公開したが、このうち1人が20代中盤の北朝鮮傭兵であった。
ドボルニコフ将軍と朴正天次帥との間に接点はないのだろうか?
北朝鮮の国営通信「朝鮮中央通信」は一昨日、ロシアのウクライナ侵攻との関連で「最後の敗者は米国」と題する論評を配信していたが、論評は「制裁は万能の武器ではないし、米国と西欧が世界の全部でもない。米国と西欧でなくても、世界には平等で友好的な関係を結び、真に豊富な協調を行うことのできる国はいくらでもいる」と指摘していた。北朝鮮流のロシアへの連帯表明なのかもしれない。