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パナソニックのマット・トッド、スーパーラグビー制覇の背景は。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
広背筋は隆起。ジャッカルが得意な人の特徴か(著者撮影)。

 クルセイダーズの一員として国際リーグのスーパーラグビー2連覇を果たした元ニュージーランド代表オープンサイドフランカーのマット・トッドは、今季から日本最高峰のトップリーグでもプレー。開幕から4戦連続で、2015年度まで3連覇というパナソニックの背番号7をつけている。

 身長185センチ、体重105キロの30歳。要所でのジャッカル(接点で相手の持つ球に絡むプレー)が光る。

 9月22日に東京・秩父宮ラグビー場でおこなわれたヤマハとの全勝対決でも後半35分、自陣22メートル線付近で15フェーズも続いた防御局面でジャッカルを繰り出す。相手のノット・リリース・ザ・ボールを誘った。

 試合後、単独取材に応じ、地上戦を制する秘訣や強いクラブの肝、日本ラグビーへの感想などを語った。

 以下、一問一答(編集箇所あり)。

――ここまで4戦、いかがでしょうか。

「(パナソニックは)非常に素晴らしいチームです。お互いがお互いのために身体を張り合いながら戦うカルチャーを持ったチームの一員になれて、本当に嬉しく思っています。ここに来る前から、こういうチームであることは聞いていましたが。とにかく、彼らと一緒にやれていることを楽しんでいます」

――徐々にフィットしているようです。

「パナソニックのゲームへのフォーカス自体も、週を追うごとによくなっています。これから大切な試合が控えていますが、来週は試合がありません。もう1度自分たちを見つめ直し、成長し、後半戦を迎えたいです」

――クルセイダーズとパナソニック。似ている点はありますか。

「たくさん共通点があると思います。まず先ほど挙げたように、チームファーストであること、お互いがお互いのために戦いあうことです」

――「お互いがお互いのために」。すべてのラグビーのチームがそうであるようにも感じますが、クルセイダーズとパナソニックの「お互いがお互いのために」は他のそれとは濃度が違うのでしょうか。

「きょう観てもらった通り。トライが取られそうになっても仲間のために(ゲインラインより後ろへ)戻ってタックルをする。トライを取られそうになったところから一気に切り返してボールをつなぎ、トライを取る(先制点までのプロセス)。パナソニックは、そういう部分を本当に強く持っている。それはお互いがお互いを思い合いながらプレーしているからこそです」

――トッドさんも、後半35分に素晴らしいジャッカルを決めています。

「(笑みを浮かべ)ああいうところであれができたのも、チームの皆がその他の仕事をしてくれたから。そして最後にたまたま、幸運にもジャッカルをするチャンスがあったということです。私自身、先にペナルティーを犯した時もありました。ああいうところで役に立てたのは、よかったです」

――スーパーラグビーでも、「このブレイクダウンからきれいに球を出されたらピンチだな」という場面でのトッドさんのジャッカルが多く見られます。なぜ、できるのでしょうか。

「まずは(味方または自身の)いいタックルがあり、それで、ジャッカルに入れる。タックルが受け身であると、なかなかジャッカルには入れません。あとは、スマートにおこなう。毎回、毎回、ジャッカルに入ろうとするのではなく、しっかりとタイミングを見計らい、確実に仕留めるのが大事です。…ただ何より、タックルをしてくれる仲間がいることが大事です」

――最後に。実際にプレーした日本ラグビーへの印象、この国で気になった才能についてお話しください。

「非常にレベルが高く、タフなラグビーをやっている印象です。我々も毎週、勝つために相当な努力をしないといけないと実感しています。展開が速いラグビーをしてもいます。コンディション的には湿度が高く、ボールがスリッピーになりやすい。ニュージーランドとは違ったコンディションのなか速い展開ラグビーを志向する日本のラグビーは本当に素晴らしいと思います。才能については、少しお待ちください。考えます」

(トッドが考える最中、チームで国際・企画の役職に就く村上泰將さんが上記内容を通訳)

「…ヤマ(パナソニックのスタンドオフ、山沢拓也)は、ゲームの重要局面で大きなプレーをする選手です。チームを勝たせられるスタンドオフです。クルセイダーズで一緒にやっているリッチー・モウンガを思い出させます」

――あなたの国でプレーしても通用しますか。

「彼は必要なスキルをすべて持ち合わせています。ニュージーランドと日本ではゲームの様相が違うのですべてがそうとは言い切れないですが、間違いなく通用すると思います」

 自らが属する強い組織には、「チームファーストで、お互いがお互いのために戦いあう」という文化があるとトッドは指摘。その思いが、クルセイダーズとパナソニックの組織防御を成立させているのだろう。

 ちなみに最後の話題に挙がった山沢は最近好調を維持も日本代表候補から選外という24歳。トッドはこの山沢の勝負への感性を高く評価しているようだ。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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