Yahoo!ニュース

心理学者が解説する「こころの緊張」4つタイプを知ったら緊張を克服できるようになった

赤田太郎の仕事に役立つ心理学常葉大学(静岡県)准教授 博士(教育学)公認心理師臨床心理士

皆さんこんにちは。仕事に役立つ心理学の赤田太郎です。

私事ですが、2024年4月より常葉大学(静岡)に変わりました。大学が変わり、公認心理師・臨床心理士を養成する立場になりました。引き続きよろしくお願いします。

今回の記事では、心の緊張には4タイプがあり、それぞれの緊張を知ってもらうと「緊張を克服できますよ」というお話です。ある程度緊張感を持って臨むことは大切なことですが、あまりにも緊張しすぎると、何もかもうまくいかなくなってしまいます。

自分が何に緊張しているのかを知っていただくと、それに対処できるようになりますよ。

緊張の4タイプ

早速なのですが、緊張には以下の4種類があります(成瀬,2001)。

  • 準備緊張
  • 恒常緊張
  • 場面緊張
  • イメージ緊張

この4タイプを知ることによって、自分はどの緊張のタイプなのかが分かります。どれに当てはまるか考えてみましょう。

準備緊張とは?

まず、準備緊張とは、「これから何かをしなければいけない」と自分の意識の中で考えている状況でも、脳波のレベルの変化が見られ、準備緊張というべき筋肉の緊張が生じる状況のことです。準備のために必要なので、身体を緊張させるわけですが、「意識をしていない」というところがポイントです。

この「意識をしていない」ところで起こった緊張は、とうぜん自分自身が気づくことはできません。ただ一方で、この感覚がやる気につながっていく原動力にもなります。日常生活でも何かしら運動する時には、「必要な能力を必要なだけ出せばよい」というほどほどのやる気と、体の適切な緊張が自然と生じています。

恒常緊張とは?

恒常緊張とは、常に緊張しているという意味で、本来緊張が必要のない状況にも関わらず、不要の力が入ってる状態を指しています。慣れていない初めての動作をする時には、いくぶん人は緊張するものです。

慣れてくると、その緊張がゆるんでくるのですが、それでも、ゆるみきることがない緊張が残ります。このような習慣化した緊張は、身体のあちこちの部分や関節にどんどん蓄積され、習慣化し、慢性化し、本来スムーズに動ける運動を妨げたりします。

私たちが気づくことができずに厄介になる緊張は、この恒常緊張になります。

場面緊張とは?

場面緊張とは、普段特に緊張するわけではないのに、人前で発表するとか、試験や面接を受けるとき、あるいはスポーツの競技や、ピアノの発表会など、特別な場面での緊張が過剰になることを指します。この時、それぞれしなければならないことはすでによく習熟しているのですが、それが発揮できない状況になります。

こうなってしまうと、準備の段階でも緊張が過剰になってしまい、いざ本番が始まっても動きが自分のしたい意図から逸れてしまい、何がしたかったのかよくわからないような動作になり、せっかくの発表や表現が、混乱のまま終わってしまうこともあります。

このように置かれた状況によって左右される緊張を、場面緊張と呼びます。

イメージ緊張とは?

明日のテストのことを考えて、夜の寝る前に、そのテストを想像してしまい落ち着けなくなってしまうような受験生。競技の前に、その競技の場面を思い出すことによって緊張感が高くなってしまうような選手。

このように、これから実際にすることを予期して、頭の中でその場面をイメージしただけで緊張してしまうことを、イメージ緊張と呼びます。このイメージ緊張は、実際の場面の緊張よりも高くなることがあります。

頭の中でイメージして緊張する経験はみなさんもあるのではないでしょうか?人はたんにイメージすることだけで、いとも簡単に緊張を作り出すことができてしまいます。

実のところ…緊張は環境からではなく、自分で作り出される

このように、緊張と一言でいっていても、4つの異なる緊張があることがお分かりいただけると思います。私たちは、日常生活上で上手くいくように緊張感を高めながら、その課題や仕事を乗り越えています。乗り越えるために、自然と緊張していくものなのです。

ですが、その緊張をうまくコントロールできない場合、4つのどの緊張においても失敗を誘発してしまいます。このようにストレスは外部からやってくるのではなく、自分自身で作ってしまい、それに悩んだり、脅かされたりするものなのです。

こころではなく身体が緊張している

私たちは普段から緊張しているのですが、「こころ」が緊張するというようなイメージでとらえています。特別「今日は緊張した!」と意識した時は、普段以上に緊張感が高かったことを意味していると思います。そして、この緊張感の高まりは、自分の「身体」がストレスによって緊張したということを意味しています。この緊張感は、あくまで自分の「身体」なのです。ここで注意したいのが、「こころ」ではない点です。こころそのものが緊張するのではなく、私たちは外界の影響によって、自分自身の「肉体が緊張を強いられている」ことを理解することが大切です。

4つの緊張感のおかげ

私たちがストレスの状況に置かれると、体が緊張することによって問題を乗り越えようとしてくれているのです。もし身体が緊張しなければ、その問題を乗り越えることはできないでしょう。

ここで重要なのは、その緊張感を「適切に必要なだけの緊張感」として感じて、その問題に取り組めるかどうかということです。本来、緊張は味方なのです。その緊張を味方にする方法は、緊張が高すぎても良くないし、低すぎてもよくないということを知ることです。

この4つの緊張感をそれぞれ意識することによって、適切な身体の緊張感を、無意識にではなく「意識的に」もっていくことができるようになります。私たちは、意識するだけで、コントロールが可能になります。緊張感を味方にして、ストレスを乗り越えられるようになるのです。つまり、緊張感と仲良しになることが大切なのです。

記事を最後までお読みいただきありがとうございました。

赤田太郎の仕事に役立つ心理学では、社会のおける心理学的な解説そして仕事に役立つ心理学をお届けします。よろしければ フォローをよろしくお願いします。

また次の記事でお会いしましょう!

常葉大学(静岡県)准教授 博士(教育学)公認心理師臨床心理士

常葉大学(浜松)健康プロデュース学部心身マネジメント学科/常葉大学大学院健康科学研究科臨床心理学専攻 准教授。立命館大学/武庫川女子大学・大学院非常勤講師。働く人と家庭のメンタルヘルス・ストレス・トラウマが専門。働くみなさんにこころの健康の大切さを伝えるために、誰でもわかりやすい心理学をYouTube・Instagramで発信しています。

赤田太郎の仕事に役立つ心理学の最近の記事