【いい温泉宿の見つけ方】本物の温泉好きが「川沿いにある温泉」を選ぶ理由
これまで訪れたことのある温泉街を思い浮かべてほしい。
「温泉街に高い確率である自然物」と聞いて思いつくものは何だろうか?
答えはひとつではないが、「川」もそのひとつだろう。
温泉街は川の流れに沿って形成されているケースが実に多い。
とくに歴史の古い温泉街は、川の流域から温泉が湧き出していることが少なくない。
登別温泉
花巻南温泉郷
四万温泉
箱根湯本温泉
湯河原温泉
下呂温泉
湯の峰温泉
山中温泉
湯原温泉
三朝温泉
湯平温泉
黒川温泉
このように数え上げればきりがない。
実は、温泉は川の近くから湧出しやすい。
というのも、川の流れが地層を浸食することによって泉脈(温泉の通り道)が地上に露出し、そこから湯が噴き出すケースが多いからだ。そのため、多くの源泉は自然の力で湧き出す「自噴」である。
今はボーリング技術の発達によって、市街地でも地中深くまで掘って温泉を汲み上げることができる。しかし、昔は温泉といえば、自然の力によって湧き出した湯を指していた。
だから、地球の力によって自噴する温泉は、「天地の恵みを与えてもらっている」という気分になる。湯につかっていると、自然に包まれているような安心感がある。
一方で、数千メートルも深い場所から汲み上げてくる温泉は、「天地の恵みを奪っている」ような気がしてならない。
また、自噴している温泉とボーリングで汲み上げた温泉とでは、泉質の奥深さが異なる。ボーリングで地中深くから汲み上げる湯には、海水のような塩辛さが特徴の塩化物強塩泉が多い傾向がある。
古代に地中深くに閉じ込められた海水由来だと想像できる。実際、東京の市街地にあるスーパー銭湯などの温泉施設には、塩辛い湯が多い。このような塩化物泉は体がよく温まるという特徴もあるが、泉質的にはワンパターンの傾向がある。
一方、自噴する湯は、時間をかけて地中深くから湧き上がり、その過程でさまざまな成分を取り込んで地上に出てくる。だから、その土地によって泉質が異なり、そのバリエーションも豊かである。
もちろん温泉そのものに優劣はない。が、筆者は自噴している湯に浸かっているほうが、心穏やかに湯浴みを楽しめるのだ。
今度の温泉旅行は、「川のある温泉」を目印に行き先を検討してみてはいかがだろうか。