親子・父娘対決と女性経営者の心理:大塚家具株主総会大での大塚勝久会長vs長女久美子社長の背景
父息子の対決から、今は父娘の対決へ。後継者となる女性が増える中、どんな問題が起きているのでしょうか。
■大塚家具株主総会は、社長(娘)久美子氏が勝利
経営権を巡って争われた株主総会は、大塚久美子社長が61%の賛成を得て、勝利しました。
■親子の対決:母と子、父と息子、父と娘
日本では、親子関係の問題というと、母子関係が問題になることが多いでしょう。家庭における母親の存在感が大きいからです。芸能界でも、スポーツでも、母親が子どもを育て守り続けた話はいろいろあります。また、息子も娘も、子どもを縛る母親と対決し、いかに母親から卒業するかが、有名人でも一般人でも、よく話題になります。
ところが、欧米ではこれが父子問題になります。特に父と息子です。たとえば、名作映画「エデンの東」は、父と息子の物語です。ディズニーアニメでも、父と息子問題がテーマになったりします。
たとえば、『チキン・リトル』(2005)では、強い父のもとで悩む小さな息子が描かれています。息子は何とかがんばって父親に認めてもらおうとするのですが、なかなか上手く生きません。ディズニーは、エデンの東とは違って、ハッピーエンドですが。
■父と娘
母は息子をとてもかわいがり、父は娘をかわいがり、恋人をつれてきたりすると、不愉快になったりします(ちなみに、日本では嫁姑問題が昔からのテーマですが、アメリカでは娘婿と義理の父、婿舅問題がテーマになったりします)。
というわけで、普通なら息子と父は対立しても、娘は父親からかわいがられる存在、あるいは娘は父親を支える存在です(「巨人の星」の星飛雄馬は父の星一徹と対立し、娘の星明子は2人を支えるように)。
ところが、近年はとても優秀でリーダーシップを発揮する女性達が続々と登場しています。学校でも、女子生徒が生徒会長や応援団長になるのは、珍しくありません(男子がちょっと頼りないのかもしれません)。
今回の大塚家具の社長大塚久美子氏も、とても優秀です。やる気もあります。社長を任されます。ところが、こうして実力を発揮しようとすると、父と息子が対立するように、父と娘が対立するのでしょう。
■女性経営者の特徴と父娘対決
学校では女性のリーダーが珍しくなくなったとはいえ、大人の社会では女性リーダーはまだ少数派です。帝国データバンクによると、女性社長は全体の7.4%です。ですかから、女性は男性以上に有能さとやる気を求められることも多いでしょう。
それでも、女性経営者は増えつつあります。「これまでは父から息子や娘婿への事業継承が多かったが、後継者不足などの理由から、娘が後を継ぐケースも珍しくなくなりました」(大塚家具:「お家騒動」を読む 根底に親子の心情もつれか:毎日新聞3月24日)
多くの女性経営者と縁談してきた、ビジネス雑誌の編集者から聞きました。女性社長、女性経営者は、有能な人が多い。そして、柔軟な人が多いと。
たとえば、男性経営者だと、我が社は、うちの店は、昔からこの方法でやってきた、この伝統を守ってきたということに固執する場合でも、女性は「つぶれたらしかたがない」と、柔軟な対応が取れることが多いそうです。今回の大塚家具の内紛も、このパターンでした。
一般的に女性の方が、周囲の状況を幅広く見ることができ、調整能力に優れている面があります(もちろん個人差は大きいですが)。その女性の特徴が、メンツにこだわらざるを得ない男性と比べて、しなやかな経営を可能にするのでしょう。
しかし、その編集者はこんなことも言っていました。女性経営者の中には厳しすぎる人もいると。
女性に対する一般的イメージは、やさしさでしょう。しかし、女性経営者として責任を果たさなければならないと強く思うとき、男性以上に大胆で厳しい社内改革をしようとすることがあるそうです。
このような行動が、劇的経営改善につながることもあれば、社内保守派との摩擦になることもあるのでしょう。そんなことが、今回の大塚家具でも起きたのかもしれません。
大金が動くクールなはずのビジネスの世界でも、その背景には、大きな心の問題、親子、家族の問題が存在しています。