泥酔して登校する高校生ルスにノルウェー首相が説教、ビール片手に王室ご一家の前に登場!
ノルウェーでは4月後半から憲法記念日の5月17日までの期間、赤いつなぎやオーバーオール(ひもずぼん)を履いた高校生が至る所に出没する。ルス(RUSS)と呼ばれる彼らは、高校の最終学年にあたり、卒業目前を祝い、大騒ぎをすることが公に認められている特殊な存在だ。
「あまりにもクレイジーだ」と、国内外のメディアでも報道されることがある。
二日酔いで登校する高校生が急増
高校生ルスが大量のビールを飲んでいることは、もはやノルウェーでは常識ではあるが、この飲酒環境に異変が起きている。二日酔いで授業に出席する人が例年に比べて増加しているのだ。
「ルス委員会」の広報で自身も高校生であるヨルスタ氏は、VG紙に対してこう語る。
“欠席日数限界の決まり”といのは、現政権がルールを厳しくした、生徒が最高何日まで授業を欠席できるかを定めたもの。日本と比較するとノルウェーの高校は「ゆとり教育」の傾向が強い。厳しめの右派政権が定めたルールは生徒から猛反発を浴び、国会前では高校生によるデモさえ起きていた。
ルスの「バス」や「ワゴン車」というのは、保護者が金銭的に援助している高校生たちの乗り物だ。特に大都市の裕福なルスにとって、「かっこいい」ステイタスになっている。
泥酔して登校する高校生の原因は、自分たちというよりも、政治家が決めた規則だ(つまり、“二日酔いで勉強しても意味がないから、休ませてくれ”)。このルス委員会の態度に、すぐさま反応したのが、国民をまとめるお母さん的存在であるアーナ・ソールバルグ首相(保守党)だ。
お母さん役の首相が、甘ったれた(?)ルスに喝!
14日、首相は自身の公式Facebookページで、高校生たちに小言を言う。
ノルウェーでは、「何をやっても許される」ルスの文化が浸透しているため、がみがみとうるさく言う親は少ない。自立する子どもを尊重して、ルスに対しては大人は何事も「言いにくい」雰囲気もうまれている(自分たちも若かりし頃にルスを楽しんだし)。
「うるさいお母さん」役をあえて買って出た首相のコメントには約4000もの「いいね!」がつき、多くのメディアが報道した。
王室ご一家の前にビール片手で登場する、「最強のルス」
高校生がルスでいられる期間は、憲法記念日をお祝いする5月17日が最終日。首都オスロでは、王室ご一家が国民に向かって王宮から手を振り続けていた。主役である子どもたちのパレードの最後を飾るのは、ルスのパレード。
この日も一部のルスたちは、ビール缶を片手にお酒を飲みながら行進していた。前夜には各地で最後の宴会が開催されていたため、多くの高校生は二日酔いの状態で王室ご一家の前に現れる。「ルス紐」の定番ルールである、「四つん這いで前進する」を王宮前で実行しながら堂々と登場した。
王室ご一家の前に泥酔した高校生が大量に出現することが公に受け入れられ、国営放送局によってその光景が生放送され、泥酔した高校生を笑顔で見守る国王。このような国はノルウェーだけかもしれない。
Photo&Text: Asaki Abumi