もうコンサルは要らない!?「パワフル副業者」の脅威
■「パワフル副業者」とは?
働き方改革の影響なのか。私たちと同業のコンサルタントたちが、苦境に立たされるかもしれない。本業の年収よりも、副業で稼ぐ「パワフル副業者」が、その脅威の存在だ。実際に、私の周囲にも、その存在は見とめられる。
「いつもアドバイスをしてくれるWEBコンサルティング会社との契約を打ち切った」
ある大企業のマーケティング担当部長から、そう言われた。
「コンサルタントを切った?」
「単にアドバイスしてくれるだけなら、もう必要ない」
「しかし御社だけでは、WEBマーケティングはムリでしょう? そのような人財がいない」
コロナ禍においても利益が出る経営体質に変革する。そのためにコスト構造を抜本的に見直す。――このように社長が宣言したそうだ。だから投資対効果が見えにくいマーケティング部は、格好の標的になったのだという。展示会といったセールスイベントも広告媒体も全面的に見直しし、効果指標がわかりやすいWEB戦略へと軸足を移した。
にもかかわらず、これまで5年以上も付き合いのあるWEBコンサルティング会社と縁を切った。理由は、専門のWEBコンサルタントよりも、もっと役に立つ人物が身近にいたからだ。
その人物とは、今年からマーケティング部に出入りしているWEBデザイナーだ。31歳。情報システム部の係長から紹介され、簡単な仕事を手伝ってもらったら、その仕事のクオリティの高さに驚かされたという。実際に手を動かし、一緒に「モノづくり」もするから、現場で起きている問題もすぐにキャッチアップしてくれる。その場で改善案を提案し、企画が承認されたらスピーディに制作し、納品まで一括してやってくれる。さらに効果測定までし、また別の問題提起までするそうだ。
口先だけのコンサルタントより、よほどいい。だからコンサルティング会社に代わって、WEBマーケティング全般を支援してもらうようになったという。
このWEBデザイナーとは、どんな人物か。コンサルタントでもなければ、フリーランスでもない。なんと中堅の印刷会社に勤めている普通の会社員であった。会社に副業を認められ、余裕のある時間を使って、5~6社のWEBマーケティングの支援をしている、つまり副業者なのである。
このような副業者を「パワフル副業者」と呼び、昨今急増しているという。
■なぜコンサルタントより価値が高いのか?
私はコンサルタントという仕事をはじめて、もう17年目になる。
その間、多くの「コンサルタントと呼ばれる人」たちを見てきた。尊敬できるコンサルタントもいれば、コンサルタントとは名乗ってほしくない人も大勢いた。
クライアント企業の問題解決に繋がる仕事をしているコンサルタントがどれぐらいいるのか、正直なところ私自身もよくわからない。
近年、異常なほど増えている「コーチ」と呼ばれる人たちにしてもそうだ。正しくクライアントの行動変容を促すコーチングができる人は、一体どれぐらいいるのだろうか。きわめて曖昧だ。
だから、コンサルタントやコーチ、カウンセラーと呼ばれる人に対し、色眼鏡で見る人が多いのである。
それなりの報酬を支払っているのにもかかわらず、効果が曖昧な、このようなコンサルタントのような職種に比べ、副業者はリーズナブルだ。報酬がリーズナブルであるだけではない。「コンサルタント」のように権威性が感じられないため、気楽に連絡できるし、効果が出るまで相談できる。
それに相手がフリーランスなら気を遣うが、副業者だから「本業」が他にある。
「仕事をあげないと、これからこの人どうするんだろう」
と心配することもない。
■「パワフル副業者」の実態
企業の現場に入ってコンサルティングをしていると、このような「パワフル副業者」と出会うことがある。2~3人と言葉を交わしたことがあるが、だいたい皆同じことを言う。
このようなハイパフォーマーな副業者たちの特徴は、独立志向が低いこと。実力はあっても「本業」が好きだ。「会社愛」もある。それにフリーランスで働くことのメリット・デメリットも熟知している。だから会社を辞めるつもりがない。
副業であれば、会社で発揮できないスキルを使い、お金を得られながら経験を積むことができる。自分の新たな可能性を発見できたり、お客様に「ありがとう」と感謝される喜びを知ることもできる。ある意味、理想的な働き方であろう。
残念なのは、このような「パワフル副業者」とは、誰かの紹介でしか出会えないことだ。企業は、偶然に頼るしかない。
みずから営業やマーケティングをして、副業する先を探すような、そんな「パワフル副業者」はいない。もちろん副業紹介サービスに登録するような者もいない。引く手あまただからだ。
ライオンのように、副業をあっせんする大手企業も現れた。副業を取り巻く環境はどんどん変化している。
まるでIT企業がフィンテックで金融業に乗り出して成功したかのように、ハイパフォーマーな副業者たちは、コンサルタントの領分を侵すことだろう。どんな業種、どんな職種も、これまでの慣習、やり方に依存していたら、新たな勢力によって苦境に立たされるのは間違いないのだ。それはコンサルタントであっても同じことである。