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地区最下位・勝率3割台のパイレーツは、なぜ筒香嘉智を獲得したのか?パイレーツ番記者に聞いてみた

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
パイレーツに加入した筒香嘉智(右)(撮影:三尾圭)

 ナショナル・リーグ中地区で最下位に沈み、地区首位のミルウォーキー・ブリュワーズから30ゲーム差も離されているピッツバーグ・パイレーツ。

 チームは再建を進めており、来季以降の躍進を進めて若手選手の育成を強化しているパイレーツは、なぜ今年30歳の誕生日を迎える筒香嘉智を獲得したのだろうか?

 「マイナーリーグで打撃に成長が見られたので、彼に興味を持ち、ピッツバーグでチャンスを与えることを決めた」と獲得理由を説明するのはパイレーツのデレク・シェルトン監督。

 もう少し深い理由を知りたくて、チームのことを良く知りながらも、チーム状況を客観的にも分析できるパイレーツの番記者に話を聞いてみた。

 直撃したのは、ピッツバーグの地元紙「ピッツバーグ・ポストガゼット」でパイレーツの番記者を務め、遠征にも帯同して取材を続けるジェイソン・マッケイ記者。

筒香嘉智から話を聞くジェイソン・マッケイ記者(右奥)(写真:三尾圭)
筒香嘉智から話を聞くジェイソン・マッケイ記者(右奥)(写真:三尾圭)

 「筒香を獲得したのは、得点力不足を少しでも補えればという願いからだよ」と分かりやすく説明してくれたマッケイ記者。

 パイレーツのチーム総得点はメジャー最下位。8月は2勝13敗と大きく負け越しているパイレーツにとって得点力不足は最大の弱点であり、そこを補える可能性がある安く獲得できるスラッガーとして、筒香の獲得に動いたと言う。

 「筒香は日本で素晴らしい成績を残したと聞いている。メジャーでの1年半では結果を出すことはできなかったけど、だからと言って彼に打撃能力がないと決めつけるのは早過ぎる。マイナーでも良い成績を残しているのだから、彼には才能があるのは間違いない」

 スモールマーケット・チームのパイレーツは、今季のチーム総年俸もメジャー最下位で、補強予算に余裕がない。

 メジャー最低賃金で獲得できた筒香は、「ローリスク・ハイリターン」が望める選手であり、低予算チームのパイレーツにとって見逃すことができない存在だった。

 「パイレーツは過去にも他球団をお払い箱になった選手を再生してきた実績がある。例えば、(外野手の)ベン・ギャメルが良い例だ。彼は今年5月に(クリーブランド・)インディアンスをクビになったのをパイレーツが拾ったが、パイレーツ移籍後は調子を取り戻して、自己最高とも言えるシーズンを過ごしている」

 パイレーツはメジャーのチームの中でもデータを効率的に使うチームとして知られており、現在では全チームが取り入れている守備シフトを本格的に使ったのもパイレーツが最初だった。

 パイレーツの特徴は、ただ単に膨大なデータを使うのではなく、そのデータを使うことで、どのような効果が期待できるのかを、分かりやすく選手に説明できるコミュニケーション能力の高さにある。

 筒香のような理論派の選手にとって、パイレーツは非常に適したチームであり、コーチ陣や分析陣と議論を交わすことによって、自らの打撃技術をさらに向上させることが期待できる。

 ドジャースを『クビ』になって、マイナーリーグへ降格させられたときには、「筒香はメジャーで通用しない」との烙印を押され、日本球界復帰説も流れたが、マイナーで結果を出した筒香は、再びメジャーの舞台に戻ってきた。

 最適の環境であるパイレーツでの残り1ヶ月半で結果を出すことができれば、来季以降もメジャーリーガーとしてアメリカでプレーを続ける道が開かれる。今季の残り試合は来季以降を見据えた戦いをするパイレーツ同様に、筒香もまたメジャーリーガーとしての将来を賭けた1ヶ月半となる。

筒香嘉智がシーズン残り1ヶ月半で結果を残せば、来季以降もメジャーでプレーを続ける道が開かれる(写真:三尾圭)
筒香嘉智がシーズン残り1ヶ月半で結果を残せば、来季以降もメジャーでプレーを続ける道が開かれる(写真:三尾圭)

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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