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オークスは同オーナーの紅白対決第2ラウンドになるのか⁈ 両陣営に話を聞いた

平松さとしライター、フォトグラファー、リポーター、解説者
左がソダシで右がアカイトリノムスメ。いずれもオークスでは有力馬になりそうだ

 今週末、牝馬クラシックの第2弾、オークス(GⅠ)が行われる。舞台となるのは東京競馬場の芝2400メートル。皐月賞→日本ダービーが2000メートルから2400メートルに延長されるのに対し、牝馬のみの桜花賞→オークスは1600メートルから2400メートル。一気に距離が延びるため、時として全く異なる結果に終わる事がある。さて、今年はどうなるか、同じオーナーが所有する“紅白”2頭の有力馬陣営に話を聞いた。

18年の勝ち馬アーモンドアイなど、オークスは数々の名牝を産んだレースだ
18年の勝ち馬アーモンドアイなど、オークスは数々の名牝を産んだレースだ

挑む立場の”紅”

 まずは“紅”のアカイトリノムスメ。

 「お父さんがディープインパクトでお母さんがアパパネ。どちらも3冠馬でオーナーも同じカネコさん(金子真人ホールディングス)。オーナーのパッションを凄く感じます」

 今回から新たにコンビを組むC・ルメール騎手はそう語る。一方、管理する国枝栄調教師は次のように言う。

 「ブラックホークやアパパネでもとてもお世話になったけど、金子オーナーの愛馬に向ける情熱は凄いです」

アカイトリノムスメの母は3冠牝馬のアパパネだ
アカイトリノムスメの母は3冠牝馬のアパパネだ

 1週前追い切りとなる12日には、新パートナーが美浦まで駆けつけて騎乗した。

 「素晴らしい血統馬だけあって、能力を感じました。乗りやすいし、コンディションも良さそうでした」

 同馬はデビュー戦こそ7着に敗れたがその後、未勝利戦からクイーンC(GⅢ)までを3連勝。桜花賞では4着に敗れたが勝ち馬とは1馬身ほどの差で、逆に5着馬には3馬身の差をつけた。リーディングジョッキーはそのあたりを強調する。

 「桜花賞ではソダシに負けたけど、それほど大きく離されたわけではありません。その前には東京競馬場で重賞を勝っているし、スタミナがある感じなので距離が2400メートルに変わるのも良さそうです」

1週前追い切りでアカイトリノムスメに跨ったルメール(本人提供写真)
1週前追い切りでアカイトリノムスメに跨ったルメール(本人提供写真)

 距離に関しては指揮官も次のように言う。

 「折り合えるし、ディープらしいところがあるので、母よりも距離に対する心配はなさそうです」

 更に状態そのものについては次のように続けた。

 「中間はよく飼い葉を食べているので、前走より増えて出せそうです。450キロ以上はあると思います。東京は3回使って全部、勝っているし、調教に乗ったクリストフも『乗りやすい』と言っていたので好勝負が出来ると信じています」

クイーンCを勝った時のパドックでのアカイトリノムスメ。左後ろが国枝調教師
クイーンCを勝った時のパドックでのアカイトリノムスメ。左後ろが国枝調教師

迎え撃つ”白”

 一方、胸を貸す立場になりそうなのが“白”毛馬のソダシ。こちらも金子オーナーの馬だ。コンビを組む吉田隼人騎手は言う。

 「僕は金子オーナーのフォゲッタブルで菊花賞をハナ差負け(09年)したけど、今回のソダシも乗せていただきハナ差勝ち(昨秋、阪神ジュベナイルフィリーズ)出来ました。これからも少しずつ恩返ししていきたいです」

 同馬を育てた須貝尚介調教師も感謝で一杯だと語る。

 「オーナーから送られてきた管理馬のリストをみたらソダシが入っていました。白毛をやらせていただけるという事だけでもありがたかったですが、こんなにも素晴らしい馬だったので、本当に感謝しかありません」

阪神JFを勝った際のソダシ。鞍上は吉田騎手で向かって左が須貝調教師
阪神JFを勝った際のソダシ。鞍上は吉田騎手で向かって左が須貝調教師

 デビュー以来、実戦に跨り続ける鞍上は言う。

 「デビュー前の調教で乗った時から高いポテンシャルを感じました。ただ、血統的にダートかと思ったのですが、蓋を開けてみたら芝でも強かったです」

 ルメールも騎乗していた母のブチコ、そしてその兄姉のホワイトベッセルやユキチャンらは皆、ダートで実績を残した馬。それだけにジョッキーがそう感じたのも頷ける。

ソダシの母はルメールも乗っていたブチコ。ダートで活躍した馬だった
ソダシの母はルメールも乗っていたブチコ。ダートで活躍した馬だった

 しかし、調教師の柔らかい頭が日本競馬の歴史を変える。芝でデビュー勝ちを飾るとその後、重賞を連勝。デビュー4戦目では阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)を制して世界初の白毛のGⅠ馬になると、前走の桜花賞(GⅠ)も優勝。デビューからここまで2つのGⅠを含む5戦5勝で樫の女王を目指す。血統にとらわれず芝を選択するという大ファインプレーをした指揮官は言う。

 「デビュー前から血統で(ダートに)決めつけるような事はしたくなくて、芝で調教をしたら良い動きをしてくれました。それで芝でおろしたらポンポンと勝ってくれました」

 血統的なモノを言えば、ゲートにも心配材料があった。母はゲートで突進して除外になったり、それが元で引退に追い込まれたりと、ゲートに不安のある馬だったのだ。ソダシの場合、レースだけを見ていると抜群のゲートセンスの良さを思わせるスタートを切れるが、鞍上のパートナーは意外な真相を語る。

 「決してゲートが得意なわけではありません。音を嫌がるので早目に出るという感じです」

 これだけを聞くとまだ不安が残る感じもするが、これに関して須貝師は言う。

 「ゲートに関してはデビュー前から終始一貫して慎重には慎重を期して対処しています。『もう大丈夫だろう』と気を抜いた事はありません」

 そういった姿勢がともすると表出しそうな悪癖を抑えているのだろう。

 再び吉田騎手の弁。

 「他にもキツめにハミを取るなど、オークスへ向けて考えなくてはいけない点は沢山あります。そういう意味で決して楽ではないけど、スタミナはあるし、実績を見ても分かるように能力的には充分なので、良い結果になるように頑張ります」

 果たして“黒、青袖、黄鋸歯形”の勝負服2頭の直接対決になるのか、それとも他の服色の馬達が台頭するのか。若い牝馬達の戦いに注目しよう。

牝馬クラシック第1弾の桜花賞ではソダシ(黒帽)が1着でアカイトリノムスメ(赤帽)は4着。果たしてオークスではこの差がどう変わるのか?(写真;アフロ/日刊スポーツ)
牝馬クラシック第1弾の桜花賞ではソダシ(黒帽)が1着でアカイトリノムスメ(赤帽)は4着。果たしてオークスではこの差がどう変わるのか?(写真;アフロ/日刊スポーツ)

(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)

ライター、フォトグラファー、リポーター、解説者

競馬専門紙を経て現在はフリー。国内の競馬場やトレセンは勿論、海外の取材も精力的に行ない、98年に日本馬として初めて海外GⅠを制したシーキングザパールを始め、ほとんどの日本馬の海外GⅠ勝利に立ち会う。 武豊、C・ルメール、藤沢和雄ら多くの関係者とも懇意にしており、テレビでのリポートや解説の他、雑誌や新聞はNumber、共同通信、日本経済新聞、月刊優駿、スポーツニッポン、東京スポーツ、週刊競馬ブック等多くに寄稿。 テレビは「平松さとしの海外挑戦こぼれ話」他、著書も「栄光のジョッキー列伝」「凱旋門賞に挑んだ日本の名馬たち」「世界を制した日本の名馬たち」他多数。

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