『やすらぎの郷』イケメン俳優投入。シノのモデルはあのひとか
帯ドラマ劇場『やすらぎの郷』(テレビ朝日 月〜金 ひる12時30分 再放送 BS朝日 朝7時40分〜)
第12週 58回 6月21日(水)放送より。
脚本:倉本聰 演出:唐木希浩
野際陽子追悼回は続く。
井深凉子(野際凉子)が濃野佐志美名義で書いた小説「散れない桜」を、国営ドラマが目をつけ、来年の終戦記念日にドラマ化する話が進んでいるという。
その小説は、凉子が、姫(八千草薫)の戦時中の体験を元にしており、公にするには問題があり封印したはずだった。
当事者の姫が思い出しくない出来事を蒸し返すことを懸念する菊村栄(石坂浩二)に、凉子は、たとえ、原作者がドラマ化を拒否しても、小説に書かれた、事実(終戦前、出撃する特攻隊の少年たちと秘密のお食事をとったこと)を史実として使うのではないかと言い、「あの頃、そういうことがあったという事実だけは史実として後世に残したいじゃない」とも言う。
辛く苦しく思い出したくないイヤな体験や、不都合な真実が、歴史の中で風化していく。実際に体験した人が亡くなるにつれ、真実も消えていく。それでいいのか。これはジャーナリズムとは何かに関する問題である。
シビアな問題をさらりと会話の中に忍ばせながら、閑話休題。
56、57話に続き、58話も、老女のヌードの話が挟まれる。
ハダカで海を泳ぐのはいいものだとすすめる凉子に、「老けたアダムとイブ」なんていやだと渋い顔をする菊村。
すかさず、凉子は「老いたる楽園のアダムとイブ ちょっといいな」と小説のネタ探しに余念がない。ここで描かれる井深凉子は、生きることに貪欲である。
海にハダカで入ってる(と台詞で語られる)場面が、また登場し、野際の「気持ちいい〜」という声のサービスシーン(?)まであった。
野際陽子が亡くなった今だと、亡くなった方を明るく送るというふうにもとれるが、生まれたままの姿で海に入っていくというのは、命の源に帰っていくような、深遠な儀式めいたことにも思えた。
数日後、「散らない桜」のドラマ化にあたり、姫(八千草薫)に取材をしに、特攻隊員役のシノ(向井理)が、国営ドラマに伴われて〈やすらぎの郷〉に来るという情報が、理事長(名高達郎)からもたらされた。
それを聞いた姫は大喜びで、美容院を予約するとはしゃぐ。
住人から従業員まで、老いも若きも、女性たちは、「シノ〜」と舞い上がりまくる。
常にクールなみどり(草刈民代)までも。
理事長に反対されたにもかかわらず強引に、この話をすすめたのはみどりだった。
「会いたかったんだもん」と言い、「隙だらけの乙女になっていた」と菊村に指摘される顔は、いつものみどりとまるで違う。
そこまで愛される俳優シノこと四宮道弘(向井理)。
「28歳のイケメンで、演技派でもある俳優だ」
「老若男女に幅広い人気をもち、清潔感があれば気品も備えている好感度ナンバーワンの若手成長株」
シノ(四宮)という名前から、二宮和也を思い浮かべるという声がSNSでは飛び交った。二宮は、倉本聰のドラマ『優しい時間』(05年)、『拝啓、父上様』(07年)に出演していた。倉本は二宮を高く評価しているようで、彼の自然な芝居や清潔感についても言及したこともある。
また、シノ役の向井理も、倉本聰の『歸國」という終戦記念ドラマに重要な役で出演しているのと、朝ドラ『ゲゲゲの女房』(10年)に出演したとき、”老若男女に幅広い人気をもち、清潔感があれば気品も備えている好感度ナンバーワンの若手成長株”という台詞にぴったりな存在視されていた。
こうやって、いろいろ、モデル探しを視聴者がすることは制作側は織り込み済みであろう。
老いや死がドラマに重くのしかかってきたところに、若きイケメン俳優を投入してくる手際が鮮やかだ。