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住みたい街ランキングNo.1(筆者独断)は静岡市。圧倒的な快適さと利便性

大宮冬洋フリーライター

東京から新幹線と在来線を乗り継いで2時間弱、名古屋からでも在来線の快速電車で40分。愛知県蒲郡市に住み始めて2年が過ぎた。

かつては繊維業で栄えた町だが、現在は8万人の人口が減少傾向にあり、駅前の商店街はさびれている。海辺の公園を散歩していると人間よりカモメのほうが圧倒的に多い。

しかし、探せばリーズナブルで美味しい飲食店が点在し、精力的な品ぞろえをしている食品スーパーもある。いまだに少人数の暴走族はいるけれど、全体的な治安は悪くないらしい。

気の合う同居人(結婚相手)と生活していけるお金を稼ぐ仕事さえ失わなければ、大都市から離れた場所で暮らすのもいいな、と思うようになった。

独身の20代ならば退屈を覚えていたかもしれない。自由にお金が使える社会人になったら、少なくとも5年間ぐらいは面白い人が無数にいて匿名性も高い大都会で遊びまくり働きまくりたいものだ。生活のリズムなんておかまいなしに。

しかし、30代になると心身が少し落ち着いてくる。規則正しい生活をしないと近い将来に体が壊れる予感がする。一人暮らしなら都会の狭いワンルームで十分だけれど、結婚して複数の人間で過ごすならばある程度の広さがある家に住みたい。家賃の安さ(賃貸物件がそもそも少ない)や街のゆとりと静かさ(空き地だらけで子どもは遊び放題、夜空の暗さはハンパない)だけで見るならば、大都市よりも地方都市のほうが暮らしやすいと感じる。

問題は仕事と遊びだ。ヒト・モノ・カネとチャンスが集積しているのはやはり大都市(特に東京)なので、これから働き盛りを迎える身としては都会に行かないわけにはいかない。友人と会いやすく、ハイレベルの多様な店が集まっているのもやはり都会。ときどきは遊びにも行きたい。

知り合いの美容師(愛知県豊橋市在住)は毎月のように東京に出かけている。東京で働いていた時代からの常連客の髪を切ったり、友だち夫婦の家に泊まらせてもらったりしながら、様々な情報を吸収して帰ってくる。でも、住むのは地元・豊橋がいいらしい。

ある知人(大企業の管理職)は静岡県熱海市に住んでおり、新幹線を使って都内の会社に通勤している。50分間ほどの新幹線内が読書や思索にちょうどいいという。

このような暮らし方をするには、自由度が高くて収入も悪くない仕事をしていることに加えて、家族や友人との良好な人間関係も必要になる。誰にでも真似できることではないけれど、すごく難易度の高い働き方・暮らし方でもないと実体験として感じている。

ただし、地方都市であればどこでもいい、というわけではない。自分の嗜好や仕事、人間関係を考慮して、快適さと利便性で満足できるところを選ぶ必要がある。

実家が東京にあり、友人知人仕事仲間の大半が東京圏に住んでいる僕の場合は、愛知県蒲郡市はギリギリのラインだったと思う。妻の実家と勤め先がある愛知県西尾市もいいところだけれど、JR東海道線が通っていない。車の運転が苦手な僕には難度が高い。

もしも自由に住む場所を選べるならば、駿府公園を擁する静岡駅周辺が狙い目だと僕は思う。最近、暇な週末があると静岡駅周辺で1泊して遊んでいるが、こんなに「ほどよい都会」は他に見たことがない。

住みたい都市としてよく挙げられる仙台や札幌は確かに素敵だが、僕には寒すぎる。静岡は気候も温暖で、農作物にも海の幸にも恵まれていて、富士山も驚くほど大きく見える。東京までは新幹線「こだま」で1時間で行ける(片道6千円かかるけど)。魅力的すぎる都会である福岡にはこの点で勝るのだ。江戸幕府にも目を光らせながら隠居したい徳川家康が選んだ土地としてうなずける。

繁華街は週末でも真っ直ぐ歩ける程度の人混みで、それでいて活気はあり、人々の表情は穏やかだ。百貨店なども一通り揃いつつも、魅力的な地元の店も少なくない。特に、ワイン関連の飲食店のレベルは高いと思う。

模型の「タミヤ」などの独特の文化が盛り上がっているが、気取りや排他的な印象はまったく受けない。他の土地から移り住んでも、すぐに受け入れてもらえそうな気がする。名古屋や大阪に漂う「濃厚さ」とは無縁のサラッとしたセンスが溢れているのだ。すべてがコンパクトな「中都会」なので悪く言えばもの足りない。でも、穏やかに暮らしたいなら最適な土地だと思う。唯一の心配事は東海地震ぐらいだろう。

東京への一極集中が進む今、東京と無縁で生きていくのは難しい。でも、この世界的な大都会との距離感は人によって違うはずだ。自分の置かれた状況を客観的に見つめ直してみれば、日常生活は地方都市で過ごすという選択肢が出てくるかもしれない。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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