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2連覇の直前、マット・ギタウがサントリーのプレッシャーに喜んでいた。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
身長178センチ、体重85キロ。サイズこそ大きくはないが、際立つ存在感。(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

 大物が頑張りたいと思える雰囲気がある。それが強さの源か。

 昨季まで2季連続で15人制ラグビーの国内タイトルを総なめしているサントリーにあって、オーストラリア代表103キャップ(代表戦出場数)のマット・ギタウは「グラウンド内外でハードワークするサントリーというクラブに、本当に誇りを持っています」と強調する。

 今回、本稿で振り返るのは、昨年1月12日の東京・サントリークラブハウス内で残した談話。パナソニックとの日本選手権決勝(兼トップリーグ順位決定トーナメント第2節。場所は東京・秩父宮ラグビー場)を翌日に控え、当時来日1シーズン目だったギタウがチームの充実ぶりなどを語っていた。

 特に途中加入のショーン・マクマーン選手にまつわる談話は、ジョークを交えつつ同部の強さの肝を伝えている。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(質問全て当方。編集箇所あり)

――開幕当初はインサイドセンターでプレーしていましたが、シーズン終盤は司令塔のスタンドオフによく入ります。意識の違いは。

「スタンドオフだとよりボールタッチが多く、より試合に関わってゆくことができます。その分、責任も重くなります。ただポジションはどこでも、ベンチであっても(問題ない)。自分はサントリーに来て、本当に楽しんでラグビーができている」

――ご自身のスキルについても伺います。相手の防御を自分の目の前に引きつけ、真横のスペースにパス。プレッシャーがかかるなかでもこの基本動作を続けられる理由を教えていただけますか。

「練習のおかげです。ノンメンバーの選手から、練習でいいプレッシャーをかけられています。できるだけ試合の状況に近い状態でトレーニングしたいのですが、先程申し上げた通り、環境がいいためにそれができます。それぞれが、試合のメンバーに選ばれなくてもチームのためにすべきことを考えています。それによって、いいトレーニングができています」

――オーストラリア、フランスのクラブでもプレー経験があるギタウさんから見て、サントリーのよさはどんなところにありますか。

「クラブが素晴らしいうえ、家族にとってもいい経験ができています。子どもも現地の学校に通っています。他の日本のチームがどんな状況なのかはわかりませが、私たちは皆、グラウンド内外でハードワークするサントリーというクラブに本当に誇りを持っています」

――ライバルチームの選手によれば、「来日間もないショーン・マクマーン選手がすぐにチームになじんだあたりにサントリーの組織力が見える」とのことです。

「チームのことを考えてやるという気持ちを、全員が持っている。それが(マクマーンにも)伝わったんじゃないでしょうか。改めて、素晴らしい環境にいさせてもらっています」

――もしマクマーン選手のように合流したての選手と一緒にプレーする場合、それを踏まえて試合を運ぶ。

「できるだけ彼には声をかけ合います。(笑って)まぁ、彼のオーストラリア英語は僕しか理解できないでしょうから! そういった意味では、私が彼を手助けしていると言っていいかもしれません!」

――チームを第一に考えられる選手は、どこの国でも求められるのですね。

「間違いありません。どのスポーツをするうえでも、その点にフォーカスすべきです。それにしても日本について、本当に悪いことが思いつかない。想像以上に素晴らしい。楽しんでラグビーをさせていただいています」

 それぞれがチームを機能させるための最善手を打つ。ただ戦術をなぞるのではなく、その場に立った選手同士の判断で組織的にスペースを攻略してゆく。沢木敬介監督率いるこのチームの、それが理念である。ギタウがマクマーンとの連携について語った「チームのことを考えてやるという気持ちを、全員が持っている」の真意も、きっとそこにある。自らのスキルについて聞かれて練習時の「プレッシャー」に感謝するのも、自然な流れかもしれなかった。

 大物を連れてくれば勝てるのではなく、大物に周囲と絶妙なハーモニーを奏でさせることで勝てる。8月31日開幕の今季の国内トップリーグでも、それがトレンドとなろう。サントリーは9月1日、愛知・豊田スタジアムでトヨタ自動車と開幕節をおこなう。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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