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主な新興国/米国経済ニュース(7月5日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

中国核電、ルーマニアのチェルナヴォダ原発3、4号機建設で協議へ

ルーマニアのビクトル・ポンタ首相はこのほど、中国の原子力発電大手、中国核電(中国核能電力)が今月中にルーマニアの首都ブカレストを訪問し、ルーマニア政府との間で、同国のチェルナヴォダ原発の3号機と4号機の建設プロジェクトへの参加問題について協議することを明らかにした。地元通信社のメディアファックスなど伝えた。

同首相は、同プロジェクトへの投資を進めるため、中国核電に対し過半数の権益の獲得を認める方針。現在の出資構成は政府が全体の84.65%を占め、残りはイタリア電力大手エネルが9.15%、鉄鋼大手アルセロール・ミタルのルーマニア法人が6.2%を保有している。この2基の原子炉の建設費用は40億ユーロ(約5200億円)。現在は、同発電所の1号機と2号機が1996年と2007年からそれぞれ稼働しており、国内の電力供給の20%をまかなっている。

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ロシア代金決済大手キウィ、ナスダック市場で株価が急回復

今年5月に米ナスダック店頭市場に新規上場したロシア代金支払い決済サービス最大手キウィの株価が今週に入って23.86ドルの高値を付け、初取引で値を下げて以来、39%高にまで急回復している。モスクワ・タイムズ(電子版)が3日に伝えた。

同社は5月のIPO(新規株式公開)で、発行済み株式の24%に相当する1250万株を1株当たり17ドル(約1700円)で売り出し、2億1500万ドル(約215億円)の資金を調達したが、初取引から1カ月で株価は15.62ドル(5月29日終値)の安値まで下落した。しかし、6月4日に1‐3月期決算が発表され、最終利益が前年比3倍増となったことから株価が持ち直している。

米大手証券JPモルガンは1年以内に目標株価の24ドルに達すると予想している。また、ロシア投資銀行大手ルネッサンス・キャピタルのアナリストは今後数年以内にバーチャル・クレジットカードなど電子財布の新サービスの投入で株価が上昇し、年率56%高の高い伸びが期待されるとしている。

3日時点の株価は前日比1.12%安の22.91ドルとなっている。

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インドネシア中銀、次回7月会合で再利上げの構え

インドネシア中央銀行(BI)は今月11日に開かれる次回金融政策決定会合で、インフレの加速を阻止するため、政策金利である翌日物BI金利を前回6月会合に続いて2カ月連続となる利上げを実施する構えだ。ジャカルタ・ポスト(電子版)が4日に伝えた。

これは中銀のアグス・マルトワルドヨ総裁が2日夕に、声明文を出し、「中銀は次回の会合で、最近の燃料価格の引き上げによるインフレ率の上昇を食い止めるため、予防的措置を講じる」と述べたもの。

政策金利は昨年3月に5.75%に据え置かれて以来、今年5月まで15カ月連続で据え置かれていたが、6月13日の理事会で、中銀は政策金利を0.25%ポイント引き上げて6%としている。

エコノミストは、中銀はインフレ悪化を食い止めるため、今後数カ月は利上げを続けると見ている。インドネシア中央統計局(BPS)が今週、発表した6月の消費者物価指数(CPI)は3カ月ぶりの高水準となる前年比5.9%上昇となった。また、世銀は2日に発表した、インドネシアのインフレ見通しで、6月末の燃料補助金の廃止に伴う燃料価格の上昇によって、インフレ上昇圧力が高まるとし、今年のインフレ率は前回予想時の5.5%上昇から7.2%上昇へ、来年についても前回予想時の5.2%上昇から6.7%上昇へと、いずれも下方修正(悪化)している。

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ベトナム国営繊維・アパレル最大手ビナテックス、IPOを9月に前倒しへ

ベトナム産業貿易省(MOIT)のホー・ティー・キム・トォア次官は、今週初めの会見で、国営繊維・アパレル最大手ビナテックスの新規株式公開(IPO)を当初予定の今年10‐12月期から9月に前倒しで実施する方針を明らかにした。地元金融情報サイト、ストックスプラス(電子版)が3日に伝えた。

同次官はすでに5月までに、ビナテックスの時価総額について試算額をまとめており、現在はベトナム国家会計検査院の最終承認待ちの段階としている。ビナテックスは発行済み株式の20-30%を売却する計画だが、同社のファム・グエン・ハン副CEO(最高経営責任者)はIPOを通じて提携パートナーを模索したいとしている。

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米ボーイング、4‐6月期民間航空機の引き渡し機数13%増―15年ぶり高水準

航空・宇宙大手ボーイングは3日、今年4‐6月期の民間用航空機の引き渡し機数が前年同期比13%増の169機となり、四半期ベースでは1998年以来15年ぶりの高水準となったことを明らかにした。この結果、1‐6月期の引き渡しは合計で306機となった。

大幅増となったのは、ボーイング737型機の生産増と、今年1月にリチウムイオン蓄電池に不具合が発生し、3カ月半にわたって生産が停止していたボーイングの次世代中型旅客機「ボーイング787ドリームライナー」の生産が4月末から再開されたことが寄与したためだ。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、同社では787型機の生産の遅れを取り戻すために、4‐6月期中に月産35機から38機に引き上げ、2014年には42機に拡大する計画。また、年末までに60機以上を引き渡していくとしている。

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米チェサピーク、同業大手エキスコに油・ガス鉱区の一部を1千億円で売却へ

米2位の天然ガス生産大手チェサピーク・エナジーは3日、テキサス州とルイジアナ州にある石油・ガス鉱区の一部を10億ドル(約1000億円)で、同業大手のエキスコ・リソーシズ傘下のエキスコ・オペレーティング・カンパニーに売却することを明らかにした。

売却するのはテキサス州南部にあるイーグル・フォード・シェールオイル鉱区とルイジアナ州北部にあるヘインズビル・シェールガス鉱区。今回の2鉱区の資産売却を含めて、チェサピークは今年だけで36億ドル(約3600億円)の資金を調達することが可能となり、今年の運転資金の不足分35億ドル(約3500億円)を穴埋めすることが可能になる。

ただ、同社は長期債務の減額と資金流動性を潤沢にするため、年末にかけて、さらに資産売却を行うとしている。同社は最近の天然ガス価格の低下でバランスシートが悪化しているため、資産売却を進めるとともに採算性が高い石油生産にシフトしている。

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ムーディーズ、ブラジル石油・ガス大手OGXを格下げ―流動性懸念で

米信用格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスは3日、ブラジルの大富豪エイキ・バチスタ氏が率いるEBXグループ傘下の石油・ガス生産会社OGXペトロレオのコーポレート・ファミリー・レーティング(CFR、グループ全体の長期格付け)を「B2」から「Caa2」に引き下げた。また、格付けに対する見通し(アウトルック)も格付けを引き下げ方向で見直すことになる「ネガティブ」とした。

ムーディーズのグレッチェン・フレンチ副社長は、今回の格下げについて、「今回のOGXの格下げは、同社の将来の石油生産とキャッシュフローの見通しが弱く、その結果、同社の無担保優先債に対する資産カバレッジが低下すると判断したもの」と述べている。

また、アウトルックの引き下げも、「2014年までOGXの資金調達能力(liquidity profile)が低く抑えられるため」としている。「Caa2」は流動性不足に対する格付けで、ムーディーズでは「今後12‐18カ月間は、同社の流動性はタイトとなる可能性があり、運転資金と債務返済のために必要となる資金調達で新たな方法を模索する必要がある」としている。

これより先、米英大手信用格付け会社フィッチ・レーティングスも先月、OGXの格付けを「CCC」に引き下げている。

英紙デイリー・テレグラフの2日付電子版によると、OGXの株価は1日に一気に過去最高の30ペンス下落し、1日で約3億ドル(約300億円)の株式価値を失っており、米エネルギー調査会社IHSヘロルドのアナリストは、「OGXは破たん寸前の状況にあり債務の再構築の必要性に直面している。破産法の適用を申請して債務の返済ができなくなる可能性がある」と警告している。

OGXは1日、リオデジャネイロ州カンポス堆積盆沖にある3鉱区(トゥバラウン・ティグレとトゥバラウン・ガトー、トゥバラウン・アレイア)は、いずれも現在の掘削技術では経済的に採算が取れる可能性はないとして開発を断念したことを明らかにしている。

また、カンポ・デ・トゥバラウン・アズル鉱区で現在、原油を生産している3つの油井も日量1万‐1万2000バレルの生産量にとどまっており、目標の4万バレルに達しないとして、2004年中に生産を中止する方針も明らかにした。この発表を受けて、同社の株価は1日の取引で、前日比29.11%安の0.56レアルにまで急落したが、その後も値を下げ、3日時点で前日比13%安の0.39レアルとなっている。 (了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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