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ダウンタウンがサンパチマイクを前にして見せた奇跡の30分間、『伝説の一日』の漫才が泣けた理由

田辺ユウキ芸能ライター
ダウンタウンの松本人志(左)と浜田雅功(右)/写真提供:吉本興業

岡村隆史のサプライズ発表、波乱の初日が明けて…

2日間にわたって開催された吉本興業創業110周年特別公演『伝説の一日』が4月3日、大盛況で閉幕した。

4月2日の初日には喜劇『さんまの駐在さん』の冒頭で出演者の岡村隆史(ナインティナイン)が「子どもが生まれた」と電撃発表。共演の明石家さんま、今田耕司らを驚かせた。

初日にして最大のサプライズが投下され、「これ以上のことはないだろう」と思われていた『伝説の一日』。だが、2日目にそれは起きた。ダウンタウンが漫才を披露したのだ。しかも、なんばグランド花月(NGK)の舞台上で、サンパチマイクを前にして。

岡村隆史(左)、明石家さんま(中央)、今田耕司(右)/写真提供:吉本興業
岡村隆史(左)、明石家さんま(中央)、今田耕司(右)/写真提供:吉本興業

ダウンタウン、代表作「クイズ」の最新バージョンを披露

ダウンタウンが見せたネタは、代表作のひとつ「クイズ」だ。もともとは松本人志が、浜田雅功に向けて「太郎くんが花屋さんへ花を買いに行きました。どうでしょう?」など不条理なクイズをぶつけていくものだった。

だが今回の最新バージョンは、まず浜田から松本に「東京タワーの高さは?」と質問。そして浜田が「正解は333メートル」と告げると、松本は「そんなにはない。以前、東京タワーの近くに住んでいて毎日見ていたから分かる」と目分量を根拠に反論。

続いて富士山の高さが話題になり、前問に続いて出題者・浜田が「3776メートル」と解答を示すと、松本は「あれはガチや。新幹線で遠巻きに見るけど、ガチや」と力説。クイズの体裁を成していないことに、浜田は「この人は何を話しているんだろう」と言いたげな表情で客席を見渡した。

「伝説補正」ではない、ダウンタウンの奇跡の30分漫才

そのほか「野球はツーアウトやから」と言い間違える松本に、浜田が「野球はツーアウトからやから、やろ?」と訂正すれば、「『から』が多いわ、それは」と理不尽な主張で返す。

漫才全編にわたって松本の日本語の言葉遊びが躍り、彼の聞き分けのないボケを浜田がすべて拾い上げて絶妙の間合いでツッコミをいれていく。浜田らしい「ツッコミで笑いをふくらませる」という凄みも光っていた。しかもその漫才が打ち合わせなしでおこなわれたというのだから、圧巻である。

レジェンド、カリスマと称されるダウンタウン。だが「伝説補正」で笑えたのではなく、純粋に漫才として抜群におもしろかった。SNSなどでは「感動した」との声が相次いだが、それは伝説を懐かしむ涙ではなく、ダウンタウンが現在進行形の漫才コンビとして私たちを笑わせてくれたことに感動できたのだ。

30分間に及んだダウンタウンの漫才は奇跡のような時間だった。

サンパチマイクを前にしていたからこそ、「言葉」にできた

ダウンタウンの漫才は30分間に及んだ/写真提供:吉本興業
ダウンタウンの漫才は30分間に及んだ/写真提供:吉本興業

しかしそれ以上に胸が熱くなったのは、漫才のなかで松本が「俺の父親が他界したときに号泣したのは誰でしょう」というクイズを出したときだろう。「(A)浜田雅功、(B)マサトシ・ハマーダ」と2択を用意された浜田は、照れ臭そうに「俺」と一言。

さらに松本は「ウグイスの鳴き声は?」の問題の答えのひとつとして、「おっちゃん、おっちゃん、ありがとうな」と泣き真似をしてみせた。これも松本の父親が亡くなったときの浜田の様子だったようで、お互いが目を合わせて笑っていた。

そのやりとりは観覧者も確かに笑えた。だがそれ以上にこのくだりは、漫才を通じて松本から浜田に感謝を告げているように感じられた。

長年の付き合いとあって、面と向かってそんなことはなかなか言えないはず。しかし、サンパチマイクを前にしていたからこそ、松本は「言葉」にできたのではないだろうか。多くの漫才師たちが、サンパチマイクからなかなか離れられない理由がそこにあったように思えた。

劇場やオンラインで観覧した人たちは、「ダウンタウンの奇跡の30分漫才」の余韻に浸っていた。『伝説の一日』は、お笑いファンにとって「幸福な一日」でもあった。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga. jp、リアルサウンド、SPICE、ぴあ、大阪芸大公式、集英社オンライン、gooランキング、KEPオンライン、みよか、マガジンサミット、TOKYO TREND NEWS、お笑いファンほか多数。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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