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南スーダン「子ども兵士」210人を武装勢力から解放:ロボット兵士は子ども兵士の代わりになるか

佐藤仁学術研究員・著述家
武装勢力から解放された男の子の兵士たち (C) UNICEF

今年に入って806人の子どもが解放

 2018年5月17日、南スーダンの武装勢力は、210人の子どもたちを解放したことをユニセフ(国連児童基金)が明らかにした。解放された女の子3人を含む210人の子どもたちの多くは、反体制派のスーダン人民解放運動反対派(SPLA-IO)からで、国民救済戦線(NSF)は8人を解放した。2018年に入ってから、南スーダンで子どもの解放の式典を行うのは3回目。解放式典は2月と4月にも南部のヤンビオにおいて実施され、それぞれ348人と248人が解放され、解放された子どもの合計数は806人となった。

武装勢力から解放され、支援物資を受け取った子どもたち(C) UNICEF
武装勢力から解放され、支援物資を受け取った子どもたち(C) UNICEF
武装勢力から解放された子どもたち(C) UNICEF
武装勢力から解放された子どもたち(C) UNICEF

まだ約2万人の子ども兵士が徴用

 それでもまだ解放されていないで子ども兵士として軍事活用されている子どもはいる。 現在も約19000人の子どもたちが、南スーダンの武装勢力や武装グループに徴兵されたまま。ユニセフでは、今後数カ月で1000人の子どもの解放の実現を期待している。解放式典では、子どもたちは正式に武器を引渡し、軍服を脱ぎ、民間人の服を受け取った。彼らは健康診断を受けた後にユニセフなどが提供する社会復帰プログラムでカウンセリングや心理社会的ケア、職業訓練、教育の支援を受ける。さらに家族の3か月分の食糧支援も受ける。

 ユニセフ・南スーダン事務所代表のマヒンボ・ムドエ氏は「子どもたちが解放され、家族のもとに帰れる度に、大きな希望となる。彼らの未来と国の未来への希望。私たちは武装勢力に徴用・徴兵されている子どもが一人もいなくなるまで、このような式典を数多く開いていけることを希望している」と語っている。

ロボット兵士は子ども兵士の代わりになるか

 最近での国際社会における紛争と安全保障の議論動向は、人工知能が発展することによって自律型ロボット兵器が登場し、人間の判断なしにロボットが人間を殺すことが懸念される「キラーロボット」に集中している。特に自律型ロボット兵器の暴走で、人間がロボットに殺害されるという新たな問題が登場し、危惧されている。

 一方で、ロボット兵士が戦場に導入されることによって、人間の兵士が戦争で命を落としたり、退役軍人が社会復帰できないことが社会課題になっており、ロボット兵士の登場でそのようなことがなくなることも期待されている。ロボット同士が戦場で戦うことによる、人間同士の殺し合いは減少される「新しい戦争」が登場しようとしている。ロボット同士の戦いが、どのような戦争形態になり、国際関係をどう変えるのかは現時点では不明だが、兵士側の人間の安全保障の観点は大きく変わる。

 根本的な問題は戦争や紛争の存在と子どもが兵士になることによって、家族を養っているという貧困問題だ。そのため、ロボット兵士が登場しても、お金のために戦争に行く子どもは減少しないかもしれない。さらに子どもの兵士の方がロボット兵士よりも導入と運用コストが安く、人間しか出来ないことも出来ることから子どもの兵士が使われることは続くかもしれない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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