巣鴨地蔵通り商店街 閉店した老舗町中華とチェーン系町中華を見て思うこと
JR巣鴨駅から徒歩5分、「おばあちゃんの原宿」といわれる巣鴨地蔵通り商店街がある。
旧中山道である巣鴨地蔵通りは、江戸中期から現在まで商業や信仰の場として栄えてきた。約760mの商店街に200もの店が軒を連ねる。「とげぬき地蔵尊高岩寺」の「洗い観音」が有名で、体の悪いところを磨くと病や怪我がよくなると言われており、お年寄りを中心に人気スポットとなっている。
そんな巣鴨地蔵通り商店街で90年以上続く老舗が、このコロナ騒動の中ひっそりと幕を下ろした。
「すがも園」である。
「伊勢屋」「みずの」とともに“巣鴨三大塩大福”と呼ばれ、食べ歩きやお土産の定番として人気のお店だった。
店の奥はイートインスペースになっていて、いわゆる“町中華”的な場所になっていた。
チャーハンやタンメン、野菜炒めなど、昔から変わらぬ味で、何を食べても本当に美味しく、観光客から地元客まで賑わう憩いの場だった。東京の数ある町中華の中でもピカイチの美味しさで、塩大福だけでなく、町中華界でも知る人ぞ知る名店だった。
筆者が「すがも園」閉店のニュースを知ったのは5月末。6月15日で閉店ということで、最後に一度足を運びたかったが、コロナ騒動で動けず、叶わなかった。テレビでも閉店のニュースが流れ、SNSではたくさんのファンが嘆いた。
商店街を支えてきた老舗が閉店する一方で、新たにチェーン店が台頭してきている。
今年2月には「すがも園」の隣に「中華そば 神寄」がオープンしている。
一見老舗のラーメン店に見えるが、こちらは「日高屋」を経営する株式会社ハイデイ日高の新ブランドである。
中華そばが500円と、「日高屋」に比べると高めな価格設定ではあるが、「すがも園」の570円よりは安い。
チャーハン、餃子、唐揚げなど町中華メニューも充実させ、生ビール中ジョッキも300円と低価格だ。
煮干しをきかせたスープには懐かしさを感じ、確かに美味しく、客の入りも上々だ。
店の真隣で大手チェーンに価格勝負を迫られ、「すがも園」は厳しい戦いだっただろう。
こういったチェーン系の“作られた町中華”が各地に広がりつつある。
レトロでノスタルジックなラーメンや町中華メニューには一定のニーズがあり、ここ数年の町中華の再ブームで、一つのトレンドが出来上がりつつある。基本的に味作りがシンプルなので、チェーンが参入しやすいのも理由だろう。
日々新たなラーメンが誕生している一方、原点回帰的にシンプルなラーメンに注目が集まる動きも出てきており、大手チェーンの町中華戦略は今後も続くだろう。
外に行列ができる「中華そば 神寄」の隣で、ひっそりと幕を下ろした「すがも園」。これには一抹の寂しさを感じずにはいられない。
チェーン系の台頭を否定はしないが、長く街を守ってきた老舗を称えながら、業界全体で発展していきたいものである。
※掲載写真はすべて筆者による撮影