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ポルノ女優に口止め料を払ったことを知っていた!? トランプ大統領、“爆弾発言”で墓穴を掘る

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
モーニングショーに電話で生出演したトランプ氏の爆弾発言が話題を呼んでいる。

 トランプ大統領が、毎朝「フォックス&フレンズ」というモーニングショーを見ていることは有名な話。

 先日も、このモーニングショーのホストが「大統領がシリアを攻撃すると決断したら、その話題の方がコミー氏の本よりも大きな話題になると思いませんか?」と問いかけていたのを見て、シリア攻撃に踏み切ったのではないかと言われたほどだ(トランプ大統領のシリア攻撃 背後にはモーニングショーの存在があったのか? )。

 それだけ、トランプ大統領と「フォックス&フレンズ」は切っても切れない関係がある。

 トランプ氏は26日、その「フォックス&フレンズ」に電話で生出演し、30分間に及ぶマシンガントークを繰り広げた。最後は、司会者が「時間が来ているんですが…」と焦りを見せるほどだった。メディアに批判されまくり、言いたいことが鬱積していたのだろう。

 26日というタイミングで出演したのは、メラニア夫人の誕生日だったからでもある。トランプ氏は多忙なため、誕生カードと花しか贈れなかったという。そのふがいなさを埋めるため、トランプ氏はモーニングショーで、メラニア夫人に“ハッピー・バースデー”を伝えたのだ。

コーエン氏はダニエルズの件の代理人

 この電話出演で、トランプ氏は耳を疑うような“爆弾発言”をし、みなを驚かせた。

「コーエン氏はクレージーなダニエルズとの交渉で、私の代理人を務めていたよ」

とあたかもダニエルズ氏の一件を認めるような発言をしたのである。トランプ氏の顧問弁護士を務めるマイケル・コーエン氏(“トランプ氏のかわりに銃弾を受ける”という“狂犬”弁護士、マイケル・コーエン氏とは何者なのか?)が、トランプ氏と性的関係を持ったと主張しているポルノ女優ストーミー・ダニエルズ氏に口止め料を払って秘密保持契約を結んだことについては、トランプ氏は一貫して“知らぬ存ぜぬ”と主張してきた。

 つい先日、エアフォース1の中で、記者たちから、ダニエルズ氏への支払いの件を問い詰められた時も、トランプ氏は支払いのことについても、なぜコーエン氏が支払ったかについても、コーエン氏がどこからそのお金を得たかについても、「知らない」と強く否定したばかりだ。

 

 なぜ、このような“爆弾発言”をしてしまったのか? 発言をふりかえると、会話の成り行きでそんなふうになってしまったのかもしれない。この”爆弾発言”に先立ち、トランプ氏はコーエン氏がFBIに家宅捜査された件について「コーエン氏はビジネスマンで、私は彼のビジネスとは全然関係ない」とコーエン氏との関わりをひたすら否定したのだが、トークショーの司会者から「コーエン氏は大統領の法律業務の何%を担当しているんですか?」ときかれて、「コーエン氏が担っていたのは私の法律業務全体のほんのごく一部に過ぎない」と吐露。そんな会話の流れが、今回の思わぬ“爆弾発言”に繋がってしまったようだ。コーエン氏との関わりを否定するあまり、“ボロ”が出てしまったのか。

天国からの贈り物

 トランプ氏の“爆弾発言”を聞いて大喜びしたのは、秘密保持契約の無効化を求める訴訟を起こしているダニエルズ氏の弁護士アベナッティ氏だ。彼は以前から「トランプ氏は、ダニエルズ氏に払った口止め料のことは知っているはずだ」と訴えていたからだ。トランプ氏の発言を聞いて「トランプ氏がこれまで主張してきたことは真っ赤な嘘であることが証明された」とツィートし、テレビのインタビューでは、

「コーエン氏は支払いはすべて自分でしたことであり、トランプ氏は支払いについても秘密保持契約についても知らないと主張してきました。だから、今回のトランプ氏の発言をきいて、夢かと思いましたよ」、「(トランプ氏にとって)非常に不利になる告白だ。(私たちにとっては)天国からの贈り物だ」と話している。

 アベナッティ氏はこのトランプ氏の告白を訴訟に使うという。

制御不能なヨチヨチ歩きの幼児

 一方、トランプ氏の弁護士たちは頭を抱えてしまったに違いない。この“爆弾発言”以外にも、トランプ氏は連邦検察官に目をつけられる発言をしてしまったからだ。それは、「コーエン氏が担っていたのは私の法律業務全体のほんのごく一部に過ぎない」という先の発言だ。

 この発言は、トランプ氏の弁護士たちが「コーエン氏宅で押収された書類は、検察が謁見できないような“弁護士依頼人間の秘匿特権”に守られているものが多数ある」と主張してきたことと矛盾する、まるで秘匿特権に守られている書類はごくわずかしかないと言っているようなものだからだ。

 連邦検察官はさっそくその発言に目をつけ、「トランプ大統領は、今朝、ケーブルテレビで、“コーエン氏が担っていたのは私の法律業務全体のほんのごく一部に過ぎない”といった。押収したものは秘匿特権に守られている書類を多く含んでいないだろう」と記した書類を連邦裁判所に提出したという。

 状況を気にせず言いたい放題のトランプ氏について、元連邦検察官が政治系オンラインメディア「ポリティコ」でしたコメントが言い得て妙だ。

「トランプ氏の弁護士たちにとっては、交通量の多い場所で遊んでいるヨチヨチ歩きの幼児を見ているようなものです。完全に制御不能なクライアントを持ってしまった」

 “制御不能なヨチヨチ歩きの幼児”は、“爆弾発言”で墓穴を掘ったのか? 

 今回の電話出演の終わり、司会者から「これまでの自分の仕事をどう評価するか」と聞かれたトランプ氏は、自信満々に、A +と“過大評価”してこう言った。

「インチキな疑いがかけられる中、これまで誰もしたことがない仕事をしたからね」

 インチキな疑いなのかどうかは、これから証明されることになるだろう。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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