妄想系女子の時代。『魔女の宅急便』に泣いた13歳の夏を歌いあげた名盤がすごい!
●妄想系個性派シンガーソングライター吉澤嘉代子、1stフルアルバム『箒星図鑑』が完成。
幼少期、魔女にさらわれたという悪夢がいつの日か憧れへと変わり、魔女修行をしていたという子供時代の吉澤嘉代子。そんな彼女もいつの日か大人になり、忘れかけていた“魔法”を取りもどすために書いたという楽曲、それがイントロから沸き起こる高揚感がたまらない大名曲「ストッキング」。1曲目から畳み掛けるように繰り広げられていく、現実と妄想世界を行き交う13編のストーリー。踏み入れれば必ずや彼女のセカイの虜となることでしょう。ここ数年の活動の集大成であり、ベスト盤といっても過言でない少女の欲望と願いを叶えた1stアルバム『箒星図鑑』。全人類激マストで必聴です!!! というワケで独占取材をしてきました。
●新録曲は少女時代というテーマでまとめたかった
アルバム完成おめでとうございます。妄想力全開で最高な1枚ですね。特に前半あらゆる攻め方で畳み掛ける感じが素晴らしいなと。最後まで一気に聴けちゃいます。リスナーが、アルバムの世界観に同化できる作品ってすごいことだなって思いました。
吉澤:「未成年の主張」など、いままで発表した曲も入っているんですけど、新録曲は少女時代というテーマでまとめたかったんです。1曲目の「ストッキング」は、わたしにとってとても大切な曲です。歌詞に「ほうき星かかって 綺麗でしょう」というフレーズがあるんですけど、わたしは子供の頃に魔女修行というのをやってまして。“ほうき”というのはひとつの魔女モチーフなんですね。サインも“ほうき”にしてたんですよ。なので“箒星”にはこのアルバムの主人公の女の子たちが「流れ星に願いをかける!」みたいな意味があります。
吉澤さんにとって、“ほうき”というのは人生のキーワードであって、魔女修行という原体験は創作の源になっていそうですね。
吉澤:家が工場をやっていたので、子供の頃に屋上で“ほうき”にのって飛ぶ練習をしていました。あと犬とウサギを飼っていたので、ペットとおしゃべりをするのを試みたりしていました(苦笑)。わたしにとって大切な時代ですね。もともと曲を書くとき、自分の少女時代に向けていることが多かったんです。いわゆるモラトリアムですね。
それが1曲目、名曲「ストッキング」にあらわれてますね。「金曜ロードショー なんとなく観てしまう 魔女の宅急便に泣いた13歳の夏には戻れないことを知る」、「もう分かっているよ わたしは特別じゃない」のフレーズとか、さらけだしている感じがすごい伝わってくるなと。すごくピュアですよね。言葉の選び方が絶妙。ちなみに、前作『変身少女』、『幻倶楽部』では楽曲物語にそれぞれ主人公がいて、いろんな設定的がユニークでしたが、今回の『箒星図鑑』というのは、吉澤さん自身のオリジナルの物語を強く感じました。
吉澤:そうですね。インディーズで出した『魔女図鑑』は自分のカタログになるような幅広い選曲のミニ・アルバムでした。『変身少女』ではラブリー・ポップスをテーマにしたザ・乙女な作品集で、より物語性に取り組んだ『幻倶楽部』が生まれて土台ができていたんですよね。「ストッキング」や「泣き虫ジュゴン」もなんですけど、いわゆるJ-POP的な曲をやっても、「ケケケ」など派手に攻めている楽曲があるから、他のシンガー・ソングライターとは違う意味で曲を受け取ってもらえるかなと思ったんです。アルバムでは、ラストに「23歳」という素の自分の気持ちを歌った曲もあって、魔法の夢から覚めるところまで続いていくストーリーになっています。
●これまで味わったことのない苦しみを感じました
「23歳」も最初は収録するつもりはなかった曲なんですよね? アルバムにこの曲が入ると雰囲気が変わりますよね。
吉澤:そうですね。一昨年の11月に初めてワンマン・ライブを開いたんですけど、お客さんに対して「最大限のおもてなしってなんだろう?」って考えたんです。それは「生身の自分を見せることなのかな」って作った曲が「23歳」でした。当時23歳だったので、その日の自分を切り取った歌。後から振り返れば古くなってしまう歌を作ろうと思ったんです。でも、この歌を歌っている限り、先に進めないんじゃないかなって思いもあって、ライブでは封印しようと思ってました。だけど聴きたいといってくれる人もいて、収録するなら今しかないかなって。
今回のアルバムは、吉澤さん自身の世界観がしっかりと確立されてますよね。まさにベスト盤みたいな力強さ。産みの苦しみというか、大変だったんじゃないですか?
吉澤:そうですね。これまで味わったことのない苦しみを感じました。12曲目の「雪」という曲は、最後の最後でレコーディングしました。これは「ゆき」という名前の友達に書いた曲なんです。2年位前からずっと作り続けてきた曲で、いつまでも完成しなくて……。『箒星図鑑』が、自分自身の少女時代をあらわすアルバムにするとしたら、その友達は欠かせない存在だったんです。納得していないものはどうしても出したくなかったので大変でしたね。
ドラマになる曲ですよね。プロットとしてここから広がる世界を見てみたいという思いにさせられたナンバーです。あとはやはり「ストッキング」が素晴らしかったです。
吉澤:大事な曲ですね。でも、アルバムのリード曲になるという確証もなかったので、なったらいいなと“箒星”という言葉をアルバムタイトルに入れました。「この曲が軸になっているんだよ」というのをわたしなりに込めていたんですね。
●今生きている場所から死ぬ=家出をするというテーマ
なるほどです。そして、2曲目が「逃飛行少女」。メロディアスにせつなさを醸し出すナンバー。印象的なテルミンはご自分で?
吉澤:はい、やってますね(笑)。レコーディング中に「わたしがやってみる!」ってなって。テルミンって面白いですね。全然ちゃんと操れてないので偶然性重視だったので何回もやり直しました。
音楽ってそもそも形が無いし、でも気持ちを操れるし、魔法っぽいところがあると思うんですけど、テルミンってまさに魔法みたいですよね。吉澤さんに合ってるような。
吉澤:あ、そうですね、魔法っぽいですよね。「逃飛行少女」はタイトルがまず出来ました。逃避と飛行でかけています。大学に入った当初、地方から一人暮らしをしている友達がけっこういたんですね。わたしのなかではカルチャーショックだでした。今思ったら福島とか山形とかそんな遠くもないんですけど、これまで埼玉や東京の友達しかいなかったので、言葉が少し違かったりするのが興味深くて。そんな思い出がモチーフになって生まれた曲です。
愛犬についても歌われてますよね?。
吉澤:そうなんです。これは家出をテーマにした歌なんですけど、自分の中では裏テーマがありまして、実は自殺をテーマに書いています。今生きている場所から死ぬ=家出をするというテーマがあって、そのときに「愛犬にごめんねを告げたら」という歌詞を書きました。……実は、レコーディングの前に子供の頃から飼っていた犬が死んだんです……。子供の頃、魔女修行を一緒にしていて、その子が死んだら私の中でなにかが死んじゃうんじゃないかなとずっと思っていました。ウィンディっていう名前だったんですけど、「逃飛行少女」はウィンディだったのかもしれないって思ったら歌えなくなっちゃって……。わたしにとっては友達はウィンディしかいない時期があったので、すごく大切な存在でした……。
とても大事な曲なんですね。そして3曲目はある種代表曲でもある「未成年の主張」。この楽曲は本当好きすぎて、名曲ポップスというか、もはやスタンダード感すらありますよね。この楽曲も吉澤さんにとって思い入れ強い曲なんじゃないかなと。どんな存在だったりするんですか?
吉澤:そうですね、この曲は。なんだろうな……。実は、なんの戦力にもならないと思っていたコマが意外と活躍してくれたなみたいな(苦笑)。
ははは(笑)。そもそもは遊び感覚で作られたそうですね?
吉澤:そうですね。この曲はパロディのつもりで書きました。まぁ、そういうタイトルのテレビ番組もあったりして、タイトルから書いたんですけど、大人が書いた台本はいらないとか、自分の気持ちをこめて、表向きではラブソングなんですけど、反発心みたいな自分のひねくれたものというのをスキマに挟んで書きました。好きっていってくださる方が多くてとても嬉しいですね。
そして4曲目には、前回のワンマン・ライブで初披露されてましたが、かなりぶっ飛んだヤンクロックな「ブルーベリーシガレット」。
吉澤:これはですね「今日は曲書きたいなぁ」と思ったときに、ブルーベリーシガレットという駄菓子があるんですけど、あれが好きで、とりあえずこれをテーマに書いてみようかなって思いまして。そしたら不良に憧れている女の子が浮かんできたんですね。
で、現状間にあってませんが、実はヤンキーソングに相応しく氣志團の綾小路翔さんがゲスト参加されるらしいですね。あれですね、TV音楽番組『musicるTV』でのご縁ですね?
吉澤:そうなんですよ! お願いさせていただいたら快諾して頂きまして、これからレコーディングし直します。なので、聴いてもらった翔さんがいないヴァージョンはレアですね(笑)。
●女の子だったら、みなさん思い当たるところがある曲
そして、5曲目「なかよしグルーヴ」も絶妙ですね。学校生活での、なかよし女子グループをテーマにした歌にグルーヴをかけるなんてすごいアイディア。
吉澤:けっこう前から「なかよしグルーヴ」という曲を絶対つくりたいと思ってたんですよ。女子仲良しグループの悪口のグルーヴってエネルギー強いんですよね。で、やっぱりグルーヴっていったらファンクかなと思って、ファンクだったらラップもいれようと思ったんです。歌詞も前からあったんですけど、それを歌詞にするのは悩んだんです。なんか当時を思い出すと苦しくなって書けなくなったりして……。ずっと寝かせていたテーマだったんですね。でも『箒星図鑑』には絶対に入れたかったんです。
女子グループの闇に踏み込んでいたり、すごいなと。SAXが不穏な雰囲気を煽るんですよね。
吉澤:今振り返ってみたらすごく滑稽なんですけど、学生時代って学校が社会のほぼすべてなんですよね。だから逃げ場がなくて、そこで生きていくしかないんですよね。自分がすごくおびえていたり、疑っている仲間とともに過ごす生活はとっても負担があって。このテーマの曲を絶対に自分で書かなきゃいけないと思ってました。
女の子だったら、みなさん思い当たるところがある曲ですよね。立場はどっちかはわからないけど。本当、女子のうわさ話ってグルーヴ感ありますよね。なにかに突き動かされちゃうみたいな。しかも、ラップまでされちゃって。
吉澤:人生初ラップでした。なんちゃってファンク感をどうするかなってときに思いついたんです。でも流行のゆるふわラップみたいにはしたくないなと思って。
●明るいメロディーに暗い歌詞をのせた曲を作りたかった
演出効果も絶大で、迫力ある感じに仕上がってますよね。そして6曲目「キルキルキルミ」。タイトルから可愛らしい曲なのかなと思いきや、自傷癖の本質に突っ込んでいて怖い曲だなと思ったり。ゆるやかな自傷っていう、よくこの視点に気がつきましたよね?
吉澤:高校生くらいのときに原型の歌詞を書いたんです。明るいメロディーに暗い歌詞をのせた曲を作りたかったんですね。ちょうど同じような失敗を何回もして、すごいネガティブな感情のときに自然と生まれた曲です。誰もが思いあたる瞬間ですよね。
そう、ちょっとしたストレスから誰もが緩やかな自傷をしているんですよね。お化粧を落とさないとか、着替えないとかね。なんかダメなときって、自分でさらに落とし穴を掘って落ちていく感じというか。あるあるっていう。
吉澤:この「なかよしグルーヴ」も「キルキルキルミ」も今年書いた曲なんですけど、レコーディングのときにレコーディング・メンバーの朝倉真司(パーカッション)さんから「大丈夫? 最近どうした?」って心配されちゃいました(苦笑)。
ははは(苦笑)。でも、重いテーマだけど、実はすごい身近だってことなんですよね。
吉澤:ちょっとしたことが実はゆるやかに日常生活でつながっているんじゃないかなと。
吉澤さんのセンサーって、そんな身近な生活に潜む気づきをキャッチアップできる能力があるんでしょうね。
吉澤:そうだったらいいですね(苦笑)。
そして、7曲目が「美少女」。吉澤さんは、曲を作ることで自分と向き合い、対象化して成長されているんですよね。あらためてこのメロディアスなポップチューンをアルバムにいれてみてどんな感じがしましたか?
吉澤:これまでの流れからすると「美少女」が普通の曲に感じますね(笑)。安定感があります。すごくきれいに書けた曲だって思っています。
そこからの8曲目「チョベリグ」ですもんね。これは僕の中でのタイトルは勝手に「そくてん」になっています(笑)。「そくてん そくてん くるくる くるくる」のフレーズが最高ですよね、ずっと頭の中に残ります。口ずさめる曲ってなんか最近では新鮮で素敵ですよね。この楽曲はライブでもすごい熱量高まりますし。
吉澤:ほんとライブでは「チョベリグ」に助けられています。歌い始めるとスイッチがボンって入ったような感じで自動的に動き出します。側転好きなんですよね、体操教室通ってましたから(笑)。チョベリグという言葉も幼稚園のころから使ってました(苦笑)。
そして9曲目「ケケケ」はダンサブルなディスコ・ポップ・ナンバー。この曲があることでライブで波がつくりやすくなったんじゃないですか? アルバムの中でも一段と目立つ曲ですよね。
吉澤:アルバムにいれることで輝きだす曲ですよね。幅を広げてくれるナンバーです。
10曲目「シーラカンス通り」。アコギのカッティングが怪しさをかもしだしていたり、サビでの熱量の高さがたまりません。あらためて収録してみていかがでしたか?
吉澤:この曲はすごく好きなんですよ。三島由紀夫『黒蜥蜴』の影響で作った曲ですね。
吉澤さんの妄想力全開な世界観を構築する上で、満足できた楽曲という感じですか?
吉澤:歌詞、言葉がいつもみていてうっとりしちゃいますね。自分で書いているんですけどとっても満足しています。
●自分が早く出し切りたいと思っていた少女時代という世界観
11曲目は壮大なバラード「泣き虫ジュゴン」。これはだいぶ前に作った曲なんですか?
吉澤:はい、17歳のときに書いた曲を、大人になってから当時の自分に向けて書き直した曲です。レコーディング当日まで歌詞を書き直してました。なのでドキュメンタリーみたいな印象です。はじめてレコーディングしたときは17歳の自分に向けて歌っていたんですけど、そこからもう成長してしまって今は違うところにいるんですね。なので、どこに向かって歌うべきかを悩みました。でも、ライブに来てくれるお客さんだったり、歌を聴いてくれている人に向けて歌おうと思ったときにすっと溶けて気持ちを込めて歌うことができました。お客さんにはとても支えてもらっているので、そのお返しが「泣き虫ジュゴン」でできたらなと思っています。
17歳のころに書いた、元の歌詞は残っているんですか?
吉澤:残ってますね。当時はバンドをやっていたのでバンド・バージョンがあります。絶対出したくはないんですけど、世の中で数人持っている人がいると思うので、本当に出さないでほしいと願ってます(苦笑)。
この曲は、忘れかけていた魔法を取り戻すというテーマにもつながりますよね。そして、12曲目にソウルメイトへ向けた「雪」があって、13曲目は素の自分を表現した「23歳」へ着地するという。「夢を叶えるためには 夢から覚めなくちゃ」というフレーズを、妄想系シンガーである吉澤嘉代子が歌うってすごいことだなと。1stアルバム『箒星図鑑』は、出し切った感があるんじゃないですか?
吉澤:そうですね。自分が早く出し切りたいと思っていた少女時代という世界観を出せて安心しています。これでようやく次に進めますね。
アルバム完成おめでとうございます、と心から祝福したいですね。MVもあらたに撮るんですか?
吉澤:「ストッキング」で作ります。魔女修行をしていた時の、再現みたいな感じです(笑)。お楽しみですね。『箒星図鑑』が完成したことで、「ストッキング」や「23歳」など、すべての曲が点と線で繋がったんですよ。流れ星が生まれたんですね。歌ってきて良かったなと思っています。
2015年1月14日@渋谷にて
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●リリース情報
吉澤嘉代子
1st ALBUM『箒星図鑑』
2015.3.4 release!!
CRCP-40399 ¥2,778+税
1. ストッキング
2. 逃飛行少女
3. 未成年の主張
4. ブルーベリーシガレット
5. なかよしグルーヴ
6. キルキルキルミ
7. 美少女
8. チョベリグ
9. ケケケ
10. シーラカンス通り
11. 泣き虫ジュゴン
12. 雪
13. 23歳
●配信情報
「ストッキング」先行配信中!
※iTunesで「箒星図鑑」アルバム予約特典として「未成年の主張 ~2014.11.27 Live@TSUTAYA O-EAST~」ライブ音源プレゼント
●ツアー情報
「吉澤嘉代子 箒星ツアー'15」
2015年5月9日(土) 岡山MO:GLA(開場17:30/開演18:00) 問)夢番地岡山086-231-3531
2015年5月10日(日) 福岡Gate’s7(開場17:30/開演18:00) 問)つくす092-771-9009
2015年5月12日(火) 名古屋CLUB QUATTRO(開場18:00/開演19:00) 問)ジェイルハウス052-936-6041
2015年5月15日(金) 大阪 UMEDA CLUB QUATTRO(開場18:00/開演19:00) 問)夢番地大阪06-6341-3525
2015年5月16日(土) 東京 赤坂BLITZ(開場17:00/開演18:00) 問)ネクストロード03-5712-5232
【料金】各会場同一 3,800-(全自由/Drink代別/整理番号順)
【一般発売日】2015年3月21日(土)
※『箒星図鑑』CD購入者チケット先行受付
期間:2015年3月4日(水)正午~2015年3月12日(木)18時迄
※FCスマフォサイト「ほうきの会」チケット優先受付
ただ今、無料会員登録受付中。
会員登録はhttps://fc.yoshizawakayoko.com
●イベント情報
<「箒星図鑑」発売記念イベント>
3月4日(水) 開始 19:30
タワーレコード渋谷店 1F店内イベントスペース
3月7日(土) 開始 14:00
タワーレコード秋葉原店 7F店内イベントスペース
3月15日(日) 開始 13:00
タワーレコード名古屋近鉄パッセ店 9Fイベントスペース
3月15日(日) 開始 17:00
HMV栄 イベントスペース
4月5日(日) 開始 17:00
dues新宿
4月5日(日) 開始 21:00
ヴィレッジヴァンガード下北沢店
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