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「高齢世帯ほどお金持ち」は当然か、多方面から確認をしてみる

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 世代間格差の実情を金銭面でチェック

中堅層で増える負債、定年退職で増える貯蓄

経済面での格差は世代間格差とも結び付けられ、語られることが多い。その実情を内閣府が2016年5月付で発表した「高齢社会白書」の公開値などから確認していく。

一般的には歳を経ている人ほど働いている(いた)累計時間は長くなり、貯蓄する機会も多くなる。世帯主の年齢で区切った上で、各世代ごとの貯蓄額を見ても、貯蓄は世代が上になるほど増えていくのは道理。

↑ 世帯主の年齢階級別1世帯当たりの貯蓄・負債、年間収入、持家率(高齢社会白書(2016年版))(二人以上世帯)
↑ 世帯主の年齢階級別1世帯当たりの貯蓄・負債、年間収入、持家率(高齢社会白書(2016年版))(二人以上世帯)

20代以降40代にかけて負債が増えるのは、住宅ローンの負担によるもの。同じタイミングで増えている「持家率」も、それを裏付けている。50代に入ればローン完済組が増えるために全体平均としての負債額は減り、さらに年収も増えるため、金銭的なプレッシャーは減少する。

60代になれば退職組が増えるために年収は減るものの、退職金などの上乗せで貯蓄額は急激に増加する。持ち家率も9割を超え、家賃による家計への負担も極少化される。単純な貯蓄額の差異に加え、持家率の高さが、高齢層の金銭的余裕の裏付けとなる。

高齢層は高貯蓄層が多い

全般的には高齢世帯ほど金銭的に余裕があるように見える。しかし実際には全体平均としての値。内情を確認すると多種多様な世帯が存在し、貯蓄が100万円に満たない世帯もあれば、4000万円を超す世帯もある。そこで二人以上世帯のうち「全世帯」、そして「世帯主65歳以上に限定した世帯母体」(=原則的に定年退職後の世帯主がいる世帯)それぞれで、貯蓄の現在高分布を記して確認したのが次のグラフ。

↑ 貯蓄現在高階級別世帯分布(高齢社会白書(2016年版))(二人以上世帯)
↑ 貯蓄現在高階級別世帯分布(高齢社会白書(2016年版))(二人以上世帯)
↑ 貯蓄現在高階級別世帯分布(高齢社会白書(2016年版))(二人以上世帯)(面グラフ)
↑ 貯蓄現在高階級別世帯分布(高齢社会白書(2016年版))(二人以上世帯)(面グラフ)

やはりひと目で、高齢世帯を母体とする分布において「4000万円以上」世帯の比率が高いのが確認できる。これは退職金による上乗せによるところが大きい。面グラフにすると、高齢世帯母体で貯蓄額が多い世帯が、全体よりも多い傾向にあることがはっきりとわかる。具体的には900万円以上で「全世帯」と「65歳以上世帯」の値の大小が逆転し、2000万円を超えた時点で差が一段と大きくなる。

高齢層は貯蓄を切り崩して生活する

高齢層の方が平均的な貯蓄額だけでなく、高額貯蓄層の率が高い。これは前述の通り「経年蓄積」によるものであり、同時に年金だけでは不足する生活費のための切り崩し用の蓄財に他ならない。

また公的年金や恩給を需給している高齢者世帯では、その多くで収入源が公的年金のみとなっている。そのため、事前の備えが前提となる世帯も多い。貯金などの切り崩しは収入では無い。

↑ 高齢者世帯の家計収支(収入面、2015年)
↑ 高齢者世帯の家計収支(収入面、2015年)
↑ 高齢者世帯における公的年金・恩給の総所得に占める割合別・世帯数の構成割合(高齢社会白書(2016年版))
↑ 高齢者世帯における公的年金・恩給の総所得に占める割合別・世帯数の構成割合(高齢社会白書(2016年版))

一方で、若年層の貯蓄が少なく、金銭的に余裕が無いのもまた事実。特に40代まではローンもかさみ、(持ち家率が少ないため)家賃負担も大きい。その上可処分所得の漸減などもあり、40代までは貯蓄性向が高まりつつあるとの調査結果も別調査で見い出すことが出来る。

↑ 将来に備えるか、毎日の生活を充実させて楽しむか(世代別)(2015年)
↑ 将来に備えるか、毎日の生活を充実させて楽しむか(世代別)(2015年)

お金周りに関する(特に消費関連)アプローチにおいては、各世代の事情への現状の確認と、それに基づいた十分な配慮が求められる。各世代のお財布事情、将来に向けた金銭感覚は「数十年前」と「現在」では大きく異なることに留意しなければ、大きな空振りに終わることは容易に想像できよう。無い袖は振れないものである。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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