前年同期から1.9%ポイント悪化…大学卒業予定者の就職内定率は72.9%(2024年10月1日時点)
物価高による景況感後退のものと思われる悪化
厚生労働省・文部科学省が先日発表した2024年度における大学などの卒業予定者の就職状況報告書によれば、2024年10月1日時点の大学卒業予定者の就職内定率(就職希望者に対する就職内定者の割合)は72.9%となり、昨年同時期と比べ1.9%ポイントの減少(悪化)が見られたことが明らかになった。
公表された調査結果によると、2024年10月1日時点で大学生の卒業者による就職率は72.9%となり、前年同期の74.8%と比べて1.9%ポイントのマイナスとなった。つまりそれだけ同じ時期における就職内定状況が悪化したことになる。
今回発表された10月1日時点における就職率74.8%は労働市場や景況感を反映する形で、前年同時期と比べて悪化を見せている。ロシアによるウクライナへの侵略戦争で生じている世界的な物価高による景況感の後退は、大学などの卒業予定者に対する就職内定率にも影響を与えているようだ。
就職内定率が悪化した原因についてリリースでは一切言及されていないが、ほぼ間違いなくロシアによるウクライナへの侵略戦争で生じている世界的な物価高で生じている景況感の後退によるものだろう。さらに詳しくは、現状よりもむしろ今後の景況感に関し、悲観的な思いを抱いている企業が増えていることが予想される。今後の景況感の見通しが暗ければ、雇用の消極化を考える企業は多くなる。労働市場は景況感の先行き指数とも呼ばれるゆえんである。
高等専門学校は専門技術に特化し、企業側もその技術を頼りに求人を行うため、内定を出しやすい、囲い込みやすいのが、高就職(内定)率の主要因。企業側の「即戦力優遇主義」が多分に反映され、他の学校種類と比べて高い就職(内定)率が出る。今回もその実情が反映された結果が出ている。前年同期比での減少幅も0.4%ポイントでしかない。
国公立と私立大学、男女別で確認すると
今回発表された就職率のうち大学(国公立・私立の合計、個別)にスポットライトを当て、男女別にその動向を確認したのが次のグラフ。
今グラフで対象とした区分において前年同時期比では、国公立大の女子以外はすべての属性でマイナスが出ており、そのマイナス幅も男性より女性の方が小さなものとなっている。現時点では女性の方が労働市場では恵まれているのかもしれない。
中期的な就職(内定)率推移から就職戦線の実情を確認
厚生労働省が定期的に発表している今件就職(内定)率において、過去のデータを逐次抽出し、(金融危機ぼっ発直前からの動向を推し量るため)その動向をグラフ化したのが次の図。リーマンショック後は下げ続け、2011年3月卒分を底とし、それ以降は少しずつ回復基調にあったことが容易に把握できる。それゆえに、2015年における解禁日の大幅後ろ倒しに伴い就活学生側に混乱が生じ、(その2年前の同時期の値64.3%と比べればまだ上だが、)内定率の改善状況が一時的に足踏み状態となってしまったのは残念でならない。
今回対象となった10月1日時点の結果は2011年3月卒を底として、ほぼ順調に上昇しつつあった。しかし2019年3月卒で頭打ち的な状態となり、2021年3月卒では新型コロナウイルス流行の影響を受け、大きな落ち込みを見せてしまう。新型コロナウイルスの流行が大学生の就職活動にどこまで悪影響を与えているのか、よく分かる動きとなっている。今回の2025年3月卒では前年よりいくぶん値を落とし、4年連続の前年同期比プラスにはならなかった。
大学生などの就職(内定)率は、その時の経済状態や企業の景気判断、とりわけその時点の景況感ではなく、今後の見通し的なものと深い関係にある。現在景気がよくても、今後の見通しに不安があれば、わざわざ人材を増やしてリスクを底上げする酔狂さを持つ企業はさほど多くない。逆に企業の先行きが明るければ、それを見越して事業拡大を図るため、人材の追加確保に勤しむことになる。
つまり学生諸子の就職率を底上げし、安定化させるには、(非常に大雑把な話ではあるが)景気回復こそが一番の対策となる。それとともに安易な、大人側の一方的な思惑で人生設計を揺るがすような変更を容易に行うことなく、十分な思慮の上での決定が求められよう。
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